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アナと雪の女王と脳内マップ

どっちがどっちでも良いけど、その作品における正・未来の方向を定義することは必要かな、とは思います。物語中でそれまでの流れが逆転する、というのは確かに感情に作用するので。あと観念的な地図としても有効。

右利きと太陽が世界の→進行を決めた【右に進むか、左に進むか②】

前回、最後の方にこういうこと書いたんですが、「観念的な地図」て何よ?というのが今回の内容。「観念的な地図」というのが言葉として良いかどうか微妙なのですが、言い換えると脳内マップ
他の言葉が思いつかないのでとりあえず脳内マップで進めます(^^

観客はキャラクターの移動などによって
・こっちには〇〇がある
・あっちには△△がある
と、脳内でぼんやり認知している、という話。

例えば『アナと雪の女王』なら
・右側(上手側)にエルサとアナが生まれ育った城がある
・左側(下手側)にエルサが作った氷の城がある
みたいな。

エルサは衆目の前で魔法を使ってしまったことにより、アレンデール城を後にして左へ左へと移動し、行きついたノースマウンテンで氷の城を作ります。
見る人は無意識下で「左の方」に氷の城を認知します。
実際の地図では北かもしれませんが、二次元のスクリーンでは北とか南とかは直感的には分かりません。
直感的に認知するのは「上(高)・下(低)・左・右」ぐらいの大まかな方向だけだと思います。

エルサを探しに出たアナも、左へ左へと移動。
途中でクリストフやオラフと出会って以降もずっと左へと移動していきます。

高いところにある氷の城

その後、氷の城でエルサに拒絶されたアナとクリストフ(とオラフとスヴェン)はトロール達と会ったあと、アレンデール城への帰路につきますが、行きとは逆に右へと移動します。

とにかくシンプルなので、小さな子供でも直感的に「来た道を帰った」と理解できるのではないでしょうか。

低いところにあるアレンデール
アレンデールと氷の城の関係は「左と右」だけでなく、
「上と下」も利用していて分かりやすい。


この脳内マップの作法は『シンデレラ』(1950年)の頃から変わりません。
シンデレラが暮らす屋敷からは、左側にお城が見えます。
お城に向かうかぼちゃの馬車は左へ移動。
夜中の12時にお城から去るときは右へ移動しています。
映画のラストで、めでたく結ばれたシンデレラと王子の馬車は、屋敷がある右ではなくへと走っていきます。新しい人生(※)に向かった感じがしますよね。
※『シンデレラ』では下手側が「正・未来」であることにも注目


アナ雪における「正」の方向

『シンデレラ』とは逆で『アナと雪の女王』での「正・未来」はどちらかというと右(上手)側になるでしょう。
アレンデール城から逃げるように去るエルサは「負」の感情と共に左(下手)へと向かいます。面白いのは「Let it Go」も徹底して「負」の向きであること。エルサは自己を肯定し解放する喜びを歌いますが、その内容に反して、配置演出的には作品中の左(下手)端、負の方向に進んでいます。

氷の城が出来上がり、朝陽に身を晒すところのみ「正」の右(上手)方向、アレンデール城の方向に進んでいきます。しかし歌のラストで自信を取り戻したかのような強気な表情を見せた後、「少しも寒くないわ」と再び朝陽に背を向け、扉を閉ざす。

この、方向を使った配置演出は、強気な表情のエルサとは裏腹の無意識や、本質的な解決に至ってないことを語っている気がします。
エルサの「正」と物語の「正」を単純に一方向に合致させず、サブテキストを配置で演出した映像ならではのシーン、といったところですかね。


もう一つ。映画の最後の方で、アナは凍り付く直前、下手側から助けに来るクリストフと、上手側でハンスに殺されそうになっているエルサとで、束の間の葛藤しますが、エルサがいる上手側に走り「真実の愛」を証明しました。

このことからも、アナ雪では右(上手)側に「正・未来」を定義していると考えられます。

たぶんね。



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