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右利きと太陽が世界の→進行を決めた【右に進むか、左に進むか②】

かもしれないってハナシ。
あくまでワタシの想像です。異論は認めます(^^;

前回の記事↓

日本で「←(左)進行」未来なのは、漫画からさらに絵巻物にまで遡れるね、ということで自分的には腑に落ちましたが、じゃあなんで海外では「→(右)進行」が正・未来なのか。

アメコミや巻物が左から右に読むから。

……で終わりにするわけにもいかないので、もう少し話を膨らませてみる。


右利きと眼

今でこそ「→」方向の読み書きが当たり前のようになっていますが、昔のギリシア文字は「→←→←」と進行方向が交互に混在する牛耕式でした。

古代エジプトのヒエログリフは「→←」どころか「↓」読みも混在。

それが徐々に「→」にまとまっていったのは、右利きが多いから、という説があります。
右利きが「→」方向に書いていくと、書いた文字が手で隠れない、インクで汚れないので書きやすい、と。なるほど。

確かに左利きの人は横書きが書きづらそうに見えますもんね……

「←」書き文化圏の動画を見ると、けっこう手首を反らして文字が隠れないように書いてて、見てるだけで腱鞘炎になりそうです。


書写材料が金属・石など「刻み込む」ものが主だったころは一文字一文字しっかり打ってくから「別にどっちでも良いんじゃん?」だったのが、
紙とペンになって筆記速度が上がり連続して書くようになっていくと、先述の理由で書きやすい・書きにくいと感じるようになり、多数派の右利きが書きやすい「→」方向に合理化されていった、て感じでしょうか。
牛耕式「←→どっちもアリ」を経た後に、自分が書きやすい方向を好んで使ってたら世間的に右利きのほうが多かったので、いつの間にか「→」が主流になってた、とかかも(^^;

なんせ右利き左利きの割合は9:1らしいですからね。
自然と統一されていったのか、ルールとして誰かが決めたのかは知りませんが、右利き圧倒的有利ですよね。
世の中に左利きの用のハサミが少ないわけですよ。
駅のスイカだって右側でタッチだし。
左利きには厳しい世界ですね。

ブルータスが右利きかどうかは知りませんが
カエサルは左利き


さて、書字方向が「→」が多数派になれば、読み手の目はそれに慣れていく。ペンになって筆記速度が上がり、紙になって送受がしやすくなったことで、文字情報のやり取りは増える。結果「→」方向に文字を追うことにさらに習熟する。
戦前の右から左に読む文字、現代人には読みづらいですよね。眼球の動きがぎこちなくなるのか、上手に文字を追えません(^^;

理化学研究所, Public domain, via Wikimedia Commons

この、追いやすい・追いにくい、の違いが「→進行」「←進行」の正・負の印象に影響しているんじゃないだろうか、と推測。

そういえば上手・下手の演出論で、←→に同じ速度で物体を動かした場合、→に動くものはゆっくりに感じるが、←に動くものは速く感じる、というのがありますが、その正体はこれなのかも?
・「→」に動くものを追う眼の動作は書字方向と同じなので追い易い
  = ゆっくりに感じる。正常な流れに感じる。
・逆「←」に動くものは追い難い
  = 速く感じる。正常ではない流れ(逆流)に感じる。
ということなのでは。

というやつ。

この速度認識の差を本で読んだのは20年ぐらい前ですが、全然ピンとこなくて「フーン、そういうもんか」ぐらいだったんですが、20年たってもピンとこない(^^;
以前の記事で目線の高さの演出について書きましたが↓

高い低いの心理的な効果は確実にあると思えるものの(人間が上下非対称・重力・天地の概念)、左右の効果はかなり曖昧なものに感じていましたが、今回の記事を書いたことで、少しだけ腑に落ちたかな。

「←」書き文化圏の人にどう感じるか聞いてみたいですね。


再生・逆再生

さて、書字方向以外にも「→進行」に関係がありそうなものを見つけました。
多くの人が見たり聞いたりしてるであろうYoutubeやSpotifyなどメディア類再生のユーザーインターフェース(UI)です。

Youtubeの再生バー

PCに何かをさせた時の進行状況を表すプログレスバーも似てますね。

→に進むほど時間的な未来や進行度合いをあらわす

再生バーが一般的になったのなんて、たかだかここ10年20年程度のことだと思いますが、このUIの「→が再生」「←が逆再生」はラジカセとかウォークマンのボタンから来てると思います。

今でこそ「→が再生」ボタンが常識ですが、実は「←が再生」ボタンのものも存在していました。昔の書字方向が「←」「→」混在してたのと同じような状況がほんの数十年前にあったんですね。

Birmingham Museums Trust, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

おそらく「←が再生」ボタンが存在したのはテープの送り方向の関係だと思いますが、それが「→が再生」が多数派になり、今となっては常識になったのはなぜか。

「→が再生」「←が再生」が混在してる状況ではユーザーは混乱したのではないでしょうか。それを解消する為に「→←どっちが再生に感じるか会議」みたいなのがSONYで行われていたのかもしれませんw

経緯は分かりませんが、とにかく徐々に再生方向が統一・淘汰されていった。テープ衰退も要因としてあるでしょうが、おそらくここにも書字方向と同じように文化・慣習的な何かが作用してるのではと想像します。


なんとなくの正体

「なんとなく→が再生に感じるから」程度のことかもしれませんが、なぜそう感じて一方が生き残り、一方が淘汰されたのか。
その「なんとなく」の正体は何なのか。

ワタシの勝手な想像ですが、それは時計
あとネジっていうのもあるんですが、右利きが回しやすい方向=正ネジ方向、てことで先述の右利き論とかぶるので割愛。

時計は万国共通で右回りが正しい回転方向、時間が進む方向、未来の方向です。人の暮らしに密接かつ自然に溶け込んでいるので、無意識に右と左の印象に作用してる可能性はかなりあるんじゃないでしょうか。
「右回りと左回り、どっちが未来に感じる?」と問えば右回りに未来を感じる人のほうが多い気がする。調査したわけじゃないので、気がするだけですが。

ディズニーランドが入って左側が過去の世界右側が未来の世界になるように設計されてると聞きますが、もしそうならこの感覚に合わせての演出なんじゃないかと思います(混雑回避のためにそう設計されてる云々は副産物じゃないかと)

https://www.tokyodisneyresort.jp/tdl/map.html


話を時計に戻しますが、時計が右回りになったのは「北半球の日時計が右回り」だから。
北半球と南半球の人口の割合は9:1。ここでも9:1ですね。面白い。

エジプトのある北半球では、地面に立てたグノモンの作る影は右回りに移動します。時計の針が右回りになったのは日時計が北半球で発達したからだと考えられています。

https://museum.seiko.co.jp/knowledge/ElementalTimepieces01/
Tim Green from Bradford, CC BY 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/2.0>, via Wikimedia Commons

こうした文化や慣習に根差した感覚が「なんとなく→が未来」に影響を与えてるんじゃないだろうか、と思うわけです。
そして「なんとなく→が未来」が僅差で生き残り、CDプレーヤーやiPod、Youtubeなどを経て「→が未来」に現在進行形で定着していってるのでは。
同時期にはゲームの発展もありますしね。その相互作用もあっただろうと思います。


上手・下手論の複雑怪奇

こうしてみると「→進行」がであり未来という似たような二つの概念は、実は別々で無関係な要因(利き手・時計)からきているのかもしれない。正か負か、未来か過去かの二極のうちの、プラス側の概念が偶然重なってるから「正・未来」と一括りにしがちなだけで。
似たような感じで上手・下手論には複数要因があって(歌舞伎・漫画・右上位・左上位、などなど)それを右と左の二つに無理やり収めようとするもんだから複雑怪奇で飲み込みづらいハナシになるのかなぁと思いました。


で、結局、左右どっちを正・未来にすれば良いのか?
どの文化に立脚してるか、誰に向けて作ってるか次第で、どっちが正・未来でも良いんじゃない?というのが自分の結論です(^^
なので前回の記事のように「右と左、今回はどっちを正にする?」てことになるんですが……
結論がこれで良いのか?w
まいっか!想像だし!

まあ、日本の←進行で作られたアニメは世界中で既にたくさんの人に見られてるので、海外のお客さんもそこまで気にしてないだろうと思うんですよね。自分みたいなのがあーだこーだと言ってるだけで。

どっちがどっちでも良いけど、その作品における正・未来の方向を定義することは必要かな、とは思います。物語中でそれまでの流れが逆転する、というのは確かに感情に作用するので。あと観念的な地図としても有効。

↑『アナと雪の女王』では最初に居る城は上手側、氷の城は下手側。


ちなみに昔のディズニーアニメには「←進行」のものが意外と多かったです。(それもまた利き手に起因するんじゃないかと思ってたりします)


『シンデレラ』は左側にお城が配置されていて←進行。


『不思議の国のアリス』は右に右に冒険する→進行。


ひとまず右と左についてはこれで終わりにしようかなと思います。


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