今年もやってる「我が社の一冊 2019」と、「売れてない」をどうやって「売って欲しい」とか「売れてます」とかにつなげていくかの話
年末になると自分の使っている https://honno.info/ というドメインにぶら下がる形で「我が社の一冊」というのをやっています。自前のドメインでやるようになったのは2016年からです。こういうの、始めるのはそこそこ簡単なんですが、告知が大変なんですよね、なので、2017年からはnoteでも、どれぐらいアクセスにつながっているかどうかはともかく、開催の告知を行っています。
我が社の一冊という企画自体の由来や狙いなどは過去のnote( 「我が社の一冊 2018」はじめました。 , 選ばれる本、選ばれない本 )にまとめてあります。今年も例年と同様に開催の告知なんですが、今回は「今年の我が社の一冊に参加した弊社の本の狙い≒『売れてない』をどうやって『売って欲しい』とか『売れてます』につなげるか」に関連して少しだけ思うところを書こうと思います。
今年の2月、岩田書院による「在庫半減計画」が一部で話題になりました( 在庫半減計画(1)、 在庫半減計画(2)、 在庫半減計画(3)、 在庫半減計画(4) ※リンク先では4月になっていますが、実際には2月にまず話題になり、その後、Webで公開されたのが4月という流れです)。リンク先をざっくり要約すると「予想を超えて膨らんでしまった在庫を処分したいと考え、著者に廃棄処分の前にできれば買い上げをとの旨を連絡した → 結果的に在庫が大幅に圧縮できた」という内容です。
この話自体は「よかったよかった」という話なのですが、これ、もう少し単純にまとめると、「困った → 助けて!」の流れですよね。
似たような話で思い出すのは、Twitterなどでたまに見かける「発注しすぎで困っています → 助けて!」のアレです。出版業界では過去に書店で「売れると思って仕入れたけど売れなかった本のフェア」とか、図書館で「貸し出し実績の無い本の陳列」などが話題となったことがあります。発注しすぎとか在庫抱えすぎとか売れないとか読まれないとか、そういうネガティブな情報でも、出し方やタイミングによっては話題作りという意味でポジティブな方向に持っていけるのかも知れません。
とはいえ、ネガティブな情報の扱いには慎重さが必要です。上述の岩田書院の例でも「噂になること必至」と書かれていますが、「経営危機」的な方向で噂が広まると、下手するとそのせいで本当に経営が傾くといったマイナスの影響を受けかねません。
こうしたネガティブな情報をプラスに変えた例として思い出すのは、もう10年以上前の話ではありますが、本の雑誌社による経営危機の発表(2008年)です。2008年12月発売の本の雑誌2009年1月号の紙面で浜本茂社長によって発表された内容は、かなり切羽詰まったものでした。とりあえず、こちらのブログをリンクしておきます。
「本の雑誌」(本の雑誌社)の経営危機について - 愛・蔵太の気になるメモ(homines id quod volunt credunt)
「会社の危機を読者に訴えるとは随分と思い切った話だな(真似できないな)」と自分は思いましたが、その後、本の雑誌社は危機を脱したようなので、かなり効果があった模様です。
もうひとつ、書店が経営危機を訴え応援を求めた例も挙げておきます。2018年7月の勝木書店本店店長によるツイートです。
https://twitter.com/B4Tf90j4WRknuz6/status/1016279579395149826
直接的に「買ってくれ」ということではなく、「(作家の先生に)お店を盛り上げるために一肌脱いではいただけませんか」というものでしたが、沢山のサイン色紙を集めたうえに、地元でも話題になったようで、やはり、かなり効果的だったようです。
不良在庫化し断裁(廃棄処分)になりそうだった一冊がSNSで拡散、廃棄どころか増刷につながったという事例も今年の1月にありました。彩流社の写真集『戦後はまだ・・・』です。
https://www.facebook.com/munesuke.yamamoto/posts/2343490518994542
これは本当に一気に動いたようです。すごい。
ネガティブな意味合いで実売部数を公表したことによる騒動も今年はありました。
【追記】幻冬舎・見城社長「実売数晒し」で謝罪 作家ら一斉反発→「本来書くべきことではなかったと反省」
売れている商品や会社が盛り上がりさらなる購入につながるのは当たり前の話で、ランキングや「流行り物の紹介」などは、そうした考えが前提にあると思います。それと比べて「売れてない」とか「儲かってない」とかを全面に押し出すのはやはり難しいです。もちろん、出すこと自体はSNSでもブログでも本当に手軽で簡単になってはいるのですが、ネガティブな情報を出すことで関係者と発生する諸々を考えると、なかなか踏ん切りがつかないところだろうと思います。
なので、自分も、今年の一冊で、「苦戦してる」と書くのには葛藤がありました。ただ、立ち上がりが苦しくても諦めたわけではないという思いはあります。今回「我が社の一冊 2019」に出した一冊について言えば、時期的に来春に小さめのピークを作れるかもしれないという期待もないわけではありません。なので、今回は思い切って「苦戦してるけどこれからまだまだ頑張ります」という押し出し方をしてみました。どれほど効果があるかはわかりませんが。
それにしても、今年も沢山の書店や出版社が経営危機で姿を消しました。倒れちゃってから「助けて」というより、倒れる前に「助けて」と言えたら状況は違ったのでしょうか。
厳しかった一年を終えようとする今、そんなことを思っています。
「我が社の一冊 2019」はまだまだ参加社募集中です。出版社が自ら推す今年の一冊なので、理由はなんでもけっこうです。来年以降も売り続けたい本、あると思います。ぜひ、ご参加ください(参加は無料です)。
参加書籍登録フォームその1
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