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ピンとこないピント

5月の頭にチルトレンズを買ってもう一月半。

仕事ですら使う機会の少ないちょっと特殊なレンズを、日常のスナップに持ち込むことでなにか新しい発見があるのでは、と期待していた。

正直なところ、この40日ほどはチルトレンズによって撮られた写真の様に、被写界深度が浅くてフワッとした夢の中にいるような気分だった。

Bridge で開いたサムネイルが、よくわからない抽象画一歩手前のボンヤリとした写真…写真? だらけだ。

写真? と少し疑問形なのは、自分のなかでこれらが「写真」 なのかイマイチ曖昧だからだ。

センサー面からみて「奥行き」にしかピント面を合わせられない通常のレンズと違い、面を傾けることでその枷を外すことのできる「チルト(ティルト)」という機能。非常に面白くて、構図に対して「ここだけ見せたい」と「ここはボカシたい」を自分なりにある程度自由にできるので、良い言い方をすれば「表現の幅が広がる」のだ。

逆に考えれば、通常の「人間の眼」の機構を模した奥行きのみに深度を得られるレンズと違って「実際に見ることのできない世界」を作り出してしまう。 要は「あるべき世界を無視」できるわけで、これが画や立体物と違って「現実に存在する」ものを材料として表現する「写真」の表現としてどうなのか、と自分のなかで不安になってきたのだ。

がしかしだ、写真表現自体はそもそも多様で、多重露光が許されれば長秒露光もあり、照明を使う時点でリアルではなくなるし、なんなら日中シンクロなんて「違和感」が魅力でしかない。

そんななかで、ミニチュア風撮影などで頻繁に話題になり、定期的に作風に取り入れられるようなチルトレンズごときで遠慮することもないだろう、とは思っている。

自身のなかで拭えないこの不安? 不満? はなんなのだろうか。
まだまだスナップ用途として使いこなせていないだけかもしれない。

がしかしここ数日、久々に持ち出したGR でf8ぐらいに絞り、フルプレススナップ無限遠でバシバシ撮ってみたら楽しくて「これよ、これこれ」感が蘇ってきたのだ。

これはGR
「あ」と思った瞬間にピッと電源押してグッとボタン押せばサクッと「見た目どおり」に写る
これもGR
ひさびさ使ったら画質の良さにビビる

28mmという、割とパッと眼の前を観た時の意識に近い画角でサクサクと「現実世界」を切り取っていくGR、これがまあ、スナップとしては正しい形とも言える。

しかし、写真なんてそれぞれ。

世の中にも自分の中にも流行り廃りはもちろんある。

一旦チルトは置いて、冷静な写真に戻るべきかどうか、悩んでいるところだ。

いや、「好きにしろや」って話なんだろうけど…。

楽しいんだけどね。

以下、チルトで撮った写真です。

それでは、また。


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