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7 帰郷


親危篤と連絡があり、男は十数年ぶりに帰郷した。両親とは長らく疎遠になっていた。駅から実家までは歩いて三十分の道のりだった。田圃の間の道を抜けていくのだ。

炎天下を歩いていると、道端で何匹もの蛙が干からびて死んでいるのが目についた。幼い頃に毎年見ていた光景だった。故郷は昔と少しも変わっていなかった。

うだるような暑さだった。畑の脇にはもぐらの死骸が転がっていた。雀の死骸もちらほら見かけた。道路では牛蛙が車に轢かれて潰れており、小川の岸には骨になりかけた猫の死骸があった。

どこもかしこも死だらけだった。男はふいに立ち止まると、踵を返して駅に戻っていった。

〈了〉

いただいたサポートは子供の療育費に充てさせていただきます。あとチェス盤も欲しいので、余裕ができたらそれも買いたいです。