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潮騒

死にたいと思った。


仕事も、趣味も、人間関係も、


全部うまくいかなくて、


自分の無力さに打ちひしがれるしかなかった。


何もできず、ただただ浪費する日々…


同じことを繰り返し、いつも何かに追われていた。


生きる希望なんて、どこにもなかった。


どうすれば誰にも迷惑をかけないで死ぬことができるのか、


そんなことばかりを考えていた。


僕はただここで佇むしかなくて、それでも皆んなは先に行ってしまって、


「待って」って言おうとしたら、


明日がもうすぐそこに来ていた。


心身ともに冷え切っていた。


人の温もりが欲しかった。寄り添ってくれる人が欲しかった。


なのに一番信用していた人すらも僕を置いていった。


本当にひとりぼっちになってしまった…


僕はこの時本当の哀しさを知った。


哀しい時、本当に涙は出なかった。


深夜2時、バイト終わり。


もうどうにでも良くなって、海に行った。


海で溺死して、どこかに打ち上げられれば、


誰にも迷惑をかけないで死ねると思った。


その日は家に帰らずにロードバイクで直行した。


道路には人どころか、車すらなくて、


どうにでもなれと道路の真ん中を突っ走った。


夏の暑さとは裏腹に、夜の風は冷たかった。


なんにもないぼくにはそれが心地よかった。


いっそこのまま風になって消えれたら、どれだけ楽だったろうか…


みんなどうやって生きてるんだろう…


行き交う人込みに溶け込む毎日、


僕じゃなくても経済は回る。


代わりなんていくらでもいる世の中、


ぼくは生き辛くて仕方がないのに…


皆んな上手に生きているんだなぁ。


波打ち際に座って、蹲っていた。


いつか眠りについて、海の底へ落ちればいい。


そしたら、楽に逝ける…


あぁ、ここで終わるんだ…


考え込む脳内を、荒波の音は阻んだ。


波と波とがぶつかる。響いて止まらない。


その向こうでは粒の細かい砂とぶつかり合ってさらに大きな音を立てている!


気にすればするほど、声は大きくなっていく。


僕は耐えきれなくなって、海に叫んでいた!


うるさい!!!





潮騒は僕のことなんて気にも留めなかった。





僕はムシャクシャしてしまって、


コンビニで買ったビールを呷るしかなくなってしまった。


缶には輝く一番星。


「丸くなるな。星になれ。」


どいつもこいつもうるせぇなぁ!なれるモンならなってンだよ!


苛立ちで呷りも早くなる。










飲み干す頃には、夜が明けていた…










それから僕は、度々海に行くようになった。


それだけで、生きている気がしたから…

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