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SNSで承認欲求を満たしてしまっては、もったいない

SNS発信やイベント登壇に要注意

経営者がSNSで「資金調達しました!」「オフィスが広くなりました!」「メンバーが増えました!」と発信しているのをたまに見かけます。

僕はこの行為は、ちょっと危険だなと思う時があります。

というのも、事業がうまくいっていればいいのですが、うまくいっていない場合でも、そうやってオープンにすることで周りからは「おめでとうございます」「すごいですね」と言ってもらえる。

すると、それだけで承認欲求が満たされてしまうからです。「あれ? うちの会社、すごいんじゃない?」という勘違いが始まってしまいます。

たしかに社外に発信することで、社員たちは自分たちの存在意義や現在地を確認できます。社内への効果は確かにあるでしょう。

でも、それによって事業がうまくいくかどうかはまた別の問題。そこを理解しておく必要があると思うのです。

イベントへの参加や登壇も同じです。

売上も利益もまだまだなのに「会社経営とは」みたいに偉そうに語ってしまうと「自分はスゴいんだ」という錯覚に陥ってしまう。なんとなく仕事している感も得られる。でも、それで事業が伸びるわけではないのです。

「脚光を浴びてるからイケてる」みたいな気分になるのですが、それで事業が伸びるとは限らない。というか、それとこれとはまったく関係のないことです。

イベントに出たりすると、たしかに人脈は作れるかもしれません。業界の大物や偉い人とつながりができるかもしれません。もちろんそれがまったく意味がないとは言いませんが「この人とつながっているから自分はスゴいんだ」と思ってしまう。

それによって承認欲求が満たされてしまうことが怖いのです。

承認欲求は「事業の成長」で満たすべき

人間にとって「承認欲求を得たい」というのは強い欲求です。

承認欲求は行動原理になるほどのパワーを持っている。承認欲求があるから力強く行動していけるわけです。

だからそれほどの強い欲求をSNSの発信やイベント登壇などで満たしてしまってはもったいないのです。マグマのように強大なエネルギーだからこそ、そういう余計なところに使ってしまうのはもったいない。

では、経営者の承認欲求は何で満たすべきなのかーー?

それは「事業の成長」とか「ユーザー貢献」です。

事業をいいものにしていく。ユーザーに貢献する。その方向に「承認欲求を得たい」というパワーが向かうほうがいい。

SNSやイベント登壇する暇があるなら、事業やプロダクトに向き合うことのほうがよっぽど重要だと思うのです。

「ステルス運営」のすすめ

おかげさまでマイベストはある程度うまくいっていますが、その要因のひとつに「ステルス運営」をしてきたことがあると思っています。

今でこそ、こうしてTwitterやnoteで発信をしていますが、2016年に起業してからつい最近まではステルス運営、つまり情報をオープンにせずに、水面下でビジネスを進めてきました。

ステルス運営をすると、イベント登壇やSNS発信、資金調達のプレスリリースなどができないので、そういった類のことでは承認欲求を満たせなくなります。するとサービスを成長させることでしか承認欲求を満たせず、自分の全てのパワーを事業に集中できるようになります。

振り返ってみると、これは僕個人としても良かったことでした。

SNSをやっていると自分が発信していなくても他の会社や経営者のことが気になってしまいます。すると「これでいいのかな?」と迷ったり、本質的ではないことに時間を使ってしまう恐れも出てきます。

僕は起業してから1年は、Twitterすら本当に見ていませんでした。1年で1回も見ていないと思います。ネットワーキングもせず、イベントにも行かず、社外の人とはほぼ誰とも会っていなかった。だから本質的なことに時間を使えていました。

特に僕の事業だと、初期的にマーケティング手段として検索を抑えることがとても重要だったのですが、Twitterをやっていると「アルゴリズムがこう変わったからSEO対策はこうしたほうがいいらしい」といった話が、そこかしこらから聞こえてきます。SEOの最新情報を追うことも大切かもしれませんが、それを見て一喜一憂したり、小手先のSEO対策をしているだけでは時間が無駄になってしまいます。

僕が信じていたのは「ユーザーにとっていいものを作っていれば、Googleが検索上位に表示してくれるはずだ」ということ。だから短期的な上がり下がりやアルゴリズムは気にせず、ユーザーにとってよいものを作るという一点に集中できていた。

そういった環境にできたのは、ステルス運営の大きなメリットでした。

惑わされるくらいなら、Twitterは削除せよ

どんな業種でも、開発の段階などは余計な雑音をシャットアウトすることは大切かもしれません。特に何か言われるとすぐにフラフラしてしまうような人はシャットアウトしてやったほうがいい。

Twitterなんかを眺めていると、それこそ有象無象の情報が流れてきます。しかも、その人が夢中になるようにタイムラインが最適化されているので、ネタ画像や面白い動画なんかもガンガン流れてくる。これではなかなか集中できません。

僕の場合はつねに「やるべきことに集中しよう」というマインドでいるようにしています。

もちろん、すべての情報をシャットアウトする必要はないと思います。AIやWeb3など、最新のテクノロジーの情報をおさえることも大切ですし、ニュースなどの良質な情報を得る必要はあるでしょう。

ただTwitterだと、どうしても関係ない情報も流れてくる。そういった意図せず流れてくる情報に、自分の注意を持ってかれてしまうような人は、思い切ってTwitterを削除するところから始めてみてもいいのかもしれません。

スタートアップにはカルト的な熱狂が必要

ステルス運営をしたことで、組織にも良い影響がありました。

いい意味で「カルト的」になっていくのです。

外界との接続を遮断すると、組織はカルト的になっていきます。するとなんともいえない熱のようなものが組織に生まれてきます。

「最高のスタートアップとは、ある真実を狂信するカルトのようなものだ」というのは、ペイパルを創業した起業家・投資家であるピーター・ティールが著書『ZERO to ONE』で語っていたことでもあります。

ステルスのほうがカルト的な熱狂は作りやすい。少なくとも反骨心的な熱狂は作りやすいでしょう。

もし自分たちの会社や事業のことを世の中の人が知っていれば、それだけで自己肯定感は高まります。でも、そこで満足してしまう危険性も出てくる。

一方ステルスだと、世の中の人はみんな自分たちのことを知らないわけです。みんなが知らなければ、事業が伸びていても自己肯定感が大きく上がりすぎることはありません。

するとどうなるかというと「俺たちはすげえことをやってるんだ」「それを知らない世の中のほうがおかしい」みたいなマインドになっていくんです。

そのマインドによってカルト的になり、事業の推進力に変わっていきます。

ステルス運営は精神的には大変です。誰からも承認されなくても、粛々と事業をすすめる必要があるからです。これをやり通すには、本当に信念があって、ブレない心が必要です。

そこを僕らは反骨精神で乗り越えていました。「いつか見てろよ」みたいな気持ちです。今は誰にも知られていない会社かもしれないが、いつか世界をひっくり返すようなプロダクトを作ってやる。他の人がサービス作りとは関係のないところで承認欲求を満たしている間に、俺はサービス作りをどんどん前に進めてやると思って粛々とやっていました。

「採用に不利」問題をどうするか?

ステルス運営で困ることもないわけではありません。

たとえば採用です。

世の中に会社の名前が知られていないので、中途採用にとても苦戦し、初期はリファラル採用がメインになりました。

一方で新卒採用に関しては、最近はベンチャー志望の学生が増えてきていて(そういう学生にとっては会社の知名度はあまり関係ないのです)優秀なメンバーが採用できていたので、新卒採用のほうを強化していきました。

また、最近は業務委託による就労形態も一般的になってきています。業務委託であればステルス運営でも採用しやすく、エンジニアやデザイナーなどの職種も、業務委託であれば気軽にジョインしてくれました。またクラウドソーシングなども活用することで、人的リソースの確保も以前よりも遥かに簡単にクイックに行えます。

たしかにステルス運営をする上で、採用はいちばんのボトルネックではあるのですが(こうして僕が発信を強化しているのも採用が目的です)、その部分もリファラルや新卒、業務委託の採用といった解決策はあります。

世の中的には「採用こそ命」「組織作りこそ本丸」という風潮もありますが、そもそも組織というのは「事業に最適化」されるべきだと思っています。

つまり「組織があって事業がある」わけではなくて「事業があって組織がある」。そこの順番を間違えてはいけないと思うのです。組織を作ったうえで、その組織が事業を作るわけではなく、作りたい事業がまずあって、それに対して最適な組織を作ればいいだけ。

もちろん経営者の考え方にはいろいろあっていいのですが、採用や組織作りだけに注力してすごく楽しそうな会社ができたとしても、事業が伸びていなければ持続的に経営を続けることはできなくなってしまいます。

何を優先すべきか考えよ

大切なのは目的やビジネスモデルに応じて「ステルス」と「オープン」を使い分けることです。

例えば新規事業であれば、ステルスでやってみてうまくいったあとにオープンにするほうが、ビジネスモデルを盗まれるリスクも減っていいかもしれません。一方で、PRが重要な事業であれば、ある程度オープンにする必要があるかもしれません。いずれにせよ「目的」を考えて発信をしないと、承認欲求に飲まれてしまいます。

考えるべきは「いま、何の優先順位が高いのか?」です。

プロダクトにフォーカスすべき時はプロダクトにフォーカスしたほうがいい。人に会って知見を増やすことが重要なフェーズだと思うなら人に会えばいい。

時間は思ったよりも有限です。「何となく」の優先順位でやっていると、無駄な時間を過ごしてしまいます。明確に優先順位を決めてから、動く。

なんでイベントに出るのか? なぜSNSをやっているのか? それは承認欲求を満たすためではないだろうか? と常にチェックしておかないと余計な時間を使ってしまいます。

「いいサービスを作りたい」という欲求

ステルスでやっている当時は「もっと注目されたい」といった感覚はありませんでした。

一般的に事業が伸びていると、まわりに言いたくなってしまうのが人間の性というものかもしれませんが、当時僕のなかにずっとあったのは「焦燥感」でした。どんなに業績が伸びていても、あったのは「焦燥感」だけ

事業がある程度伸びた昨年くらいに、今度は「プロダクト系人材の中途採用が最も重要なファクターだ」と判断したので、僕もSNSを本格的に始めて、ステルス解除して浮上しました。すると「すごいですね」とか「伸びてますね」と言ってもらえることも増えました。

たしかにちょっと承認欲求が満たされる感じもわかってしまったのですが(笑)、それでも「いいサービスを作りたい」という欲求のほうが勝っています。

今後もアプリ開発や海外展開など、まだまだやるべきことは山積しています。僕がいるこの業界は栄枯盛衰の世界。これからも一瞬の承認欲求に負けず、気を緩めず粛々と事業を進めていきます。

最後に。現在、採用強化中です! 一緒に最高のサービスを作りましょう!!

今はステルスではないので、Twitterのフォローお願いします!


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