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「好奇心」の鍛え方


はじめに── なぜ今「好奇心」なのか?

最近、好奇心の強さが「強み」になる時代が到来しつつあると感じています。

SNSでもECサイトでも、ユーザーの好みに合わせて「あなたが好きなものはこれですよね?」「この記事がおすすめです」「こんな音楽、動画はいかがですか?」と当たり前のようにパーソナライズされかコンテンツを提案されますよね。

これは便利で満足度が高い一方で、いわゆる「フィルターバブル」のなかに閉じこもり、好奇心がもたらす「新しい発見」のようなものが少なくなっていくことになります。いちばん怖いのは、この状況に本人が気づきにくいことです。

ユーザーにとって好ましい情報ばかりが選択的に提示される「フィルターバブル」

共通の話題がないと、趣味嗜好の違いによって会話にズレが生まれ、コミュニケーションが噛み合わなくなる。これが会社のなかで起こってしまうと、離職率が高まるなど深刻な問題になりがちです。(実際、いまの私のYouTubeの画面は「ゴルフ」だらけです。だからといってビジネスに必要な情報を集める"生産性"や”タイパ”を追求しすぎると、それはそれでフィルターバブル化してしまう気がします)

今や検索エンジンだけではなく、ChatGPTをはじめとする生成AI技術の進化により、誰もが瞬時に80点くらいの答えを手にできるようになりました。だからこそ、思いもよらない組み合わせ、差別化されたアイデアを得るために「好奇心を鍛える」ことが必須に思います。

「好奇心を鍛える」ための3ステップ

どう「好奇心を鍛える」のか。

STEP 1:選り好みしない
STEP 2:知識をかじる
STEP 3:知ったかぶる

私が実践している方法はこの3つのSTEPです。それぞれ詳しく解説します。

STEP 1:選り好みしない

最初は、「選り好み」をしないことです。好奇心を横に広げるには、好きなものだけでなく、雑食になってさまざまな領域の「テーマ」や知見に触れるのがいちばんの近道です。

「選り好み」を避けるコツは、「テーマ」だけではなく、「人」に興味をもつこと。

私はまったく興味のないテーマであっても、お会いした方が楽しそうに話しているのを聞くと、「なぜ、そんなに好きになったのですか?」「どんなところがおもしろいんですか?」と質問します。その対象はなんであれ、その人の好奇心を持続させるパワーの源泉を知りたいと思うからです。

「人に興味をもつ」のが、とても大事

「なぜ、この人はこの分野に興味をもったのだろうか?」と、「人」から入って、その人の専門分野や「テーマ」に興味をもつことは、フィルターバブルから一歩抜け出すきっかけになるのです。

STEP 2:知識をかじる

さまざまな領域の「テーマ」や知見に触れるために、大切なポイントは100%の習得を目指さないことです。テーマの深掘りにはきりがないので、60〜70%くらいにしておくのがちょうどいいと思います。「知識をかじる」ぐらいだと、たくさんのテーマに触れることができます。

たとえば、リアルな書店に行って、平台や棚を眺める。背表紙、裏表紙を見て、さらにはまえがき、目次を読むだけでも、なんとなくテーマの全容が把握できます。本を購入するのは「これは!」と思ったものだけでいいぐらいです。(アマゾンのようなネット書店にはないリアルの良さですね)

ざっと読むだけでテーマが把握できる、リアル書店の良さ

「雑誌」は一覧性もあり全体を把握しやすいのでオススメです。30分や1時間という限られた時間内で編集されたテレビ番組なども、考え方によってはタイパのよい媒体といえます。最近だとYouTubeのビジネス系の動画も同じで、とにかくインプットの量を増やす際には相当に使えると感じます。

同じ効用は、会社の同僚、友人、家族との「雑談」でも得ることができます。たとえば、先日も家族と話していて、「あっ、中学生の間ではこんなことが流行っているのか」という気づきを得ましたし、以前noteで書いたZenlyの使い方はメンバーとの雑談で教えてもらった情報がもとになっています。

コロナ禍前は対面の会議や商談をすると、まずは雑談から入って、だんだんと本題に移っていくのは当たり前のことでしたが、コロナ禍が終わりを迎えても雑談がめっきり減ったと感じているのは私だけでしょうか。

ひと昔前であれば、学校に行けば「あの番組見た?」とか「ジャンプ読んだ?」といった会話が飛び交っていたり、職場では「今日の日経新聞の一面は…」といった会話が当たり前でした。もっともっと「雑談」する機会を増やしたほうがいいと思います。

アメリカのどの大学か忘れてしまいましたが、食堂の席は端から順番に使用するルールを設定しているという記事を読んだことがあります。そうすることで、見ず知らずの学生と挨拶したり、雑談する可能性が、「どこに座ってもいい」とするよりも格段に高まりそうです。その意味では、学校のクラス替え、職場の席替え・レイアウト変更、あるいはフリーアドレス化は雑談力を高めるチャンスなのかもしれません。

雑談で教えてもらったことを深掘りして質問してみたり、リアル書店に行って自分なりに調べてみることが、また新たな雑談につながる。これが「好奇心を鍛える」好循環を生むための最短コースだと私は思っています。

STEP 3:知ったかぶる

さらなる好循環を生むための推進力になるのが、「知ったかぶり」です。誤解のないようにお伝えすると、ここでの「知ったかぶり」は単に"浅い知識をひけらかす"という意味ではありません。きちんと「最近、こんな情報を入手したのですが……」と前置きや逃げ道をつくったうえで、「アウトプット」するイメージです。

「知ったかぶり」の効用はたくさんありますが、3つご紹介します。

1つ目は、アウトプットすることで、知識を定着させられる点です。知識は自分の中にストックするだけでなく、人に伝えることで一段と定着し、研ぎ澄まされていきます。何かを人に教えると、教わる人以上に教えている当人にとって勉強になるというのはよく言われることで、アウトプットには、自分がわかっていること、わかっていないことを可視化する効果があるのです。

2つ目は、「思いもしないリアクション」や「情報」をもらえる点です。サイロ化してしまっていると、「みんなこんなふうに思っているだろう」という感じで、自分と似た人たちの発想の範疇で考えがちですが、別のサイロにいる人たちはまったく違う知識や視点、情報をもっていたりします。新しいことを生み出すには「異なる視点」「異分野の情報」は欠かせない要素であり、やはり雑談は大切だと思うのです。

3つ目は、アウトプットすると、その分自分の中に空きができるため、新しい知識を入れやすくなる点です。新しい知識が入ってくると、再びアウトプットすることが可能になり、アウトプットすると思いもしないリアクションに遭遇し……という循環が生まれることになります。

まとめ ──2024年こそ、インプットとアウトプットを増やそう!

今回お伝えしたことをまとめると、「選り好みせずにとにかくインプット量を増やし、いろいろな人に会ってアウトプットしてみましょう!」ということです。

ここまでの話の抽象度を上げてみると、「会話がうまい人」が実践していることと共通しているような気もします。さらにいえば、「コミュニケーションって大事ですよね」ということです。リモートワークが定着して雑談が減った令和の時代だからこそ、意識的に「雑談」の数を増やすことで、「好奇心は鍛える」ことができるのではないでしょうか。

そうすれば、結果として新しい発想、イノベーションが生まれ、それが誰かの課題を解決することにつながり、世界が少しだけ豊かになっていく ──。そんなことを年末年始考えていました。

新年は気持ちが新たになり、フィルターバブルから抜け出す良い機会です。

2024年は、アメリカ、ロシア、台湾等で新しいリーダーを決める選挙があったり、パリ五輪があったり、コロナ禍で中止となっていたイベントが続々と復活するなど、自分のフィルターを一度リセットして、異分野の知識を吸収したり、新しい体験をするチャンスにあふれています。

2024年こそ、インプットとアウトプットを増やしましょう!


あとがき

デジタル地図の開発プラットフォームを提供するマップボックス・ジャパンCEOの高田徹です。ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

来年4周年を迎えるマップボックス・ジャパン。おかげさまで、これまでゲーム、自動車、物流、メディア、スポーツ、ドローン、旅行、不動産、店舗検索等々、さまざまな業界のお手伝いをすることができました。

しかし、同時に「地図」が果たす役割はこれだけではないはずだとも感じています。いまの自分たちの想像を超えるようなチャレンジをするには、メンバーがフィルターバブルの中にいいてはダメで、差別化されたアイデア、思いもよらない組み合わせ、突拍子もない戦略が必要になります。その意味で、今回の「好奇心を鍛える」というテーマをいちばん伝えたいのは、マップボックス・ジャパンのみなさんなのかもしれません。

2024年は、私だけでなく、マップボックス・ジャパンのメンバー全員が、いままで以上に好奇心をフル稼働させて、みなさんと「雑談」すべく、動き回りますので、どうぞ今年もよろしくお願いいたします!