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小さな勇気と好奇心〜親としての覚悟〜

近くの公園まで娘と散歩。

歩いていると、川で遊んでいる男の子たちがいて、興味を持った娘が近くに行きたいと言いだした。

はしゃぐ子どもたちを見て、娘は川に入りたそうにしている。最近は小さなすべり台も滑らないほどの慎重派の娘だったので、入りたがるのは少々意外だった。

さてどうするか。

娘はサンダルでスカートなのでそのまま入ることはできる。問題はまず間違いなく濡れることで、着替えはもちろんタオルもない。

さらに自分はお気に入りの靴で来ていた。2歳の娘をひとりで川に入れるわけにはいかないので当然自分も入らないといけない。となれば、靴を汚すことになるかもしれない。

他にも、もし転んで何かあったら?濡れて帰ったら妻に何か言われるかも?

悪い考えがめぐり、頭の中で面倒だなと思う。このまま公園を適当に散歩して帰れば濡れることも汚れることもないし、とやかく言われるリスクもない。

でも、と思う。

せっかく川に入りたいと自己主張してきた娘の勇気や好奇心を、親の怠慢で退けていいのか?
何かをやりたいという子供の気持ちを止めていいのか?

冷静になって目の前の川を見る。

川はとても浅い。これなら転んでも大きな怪我にはならないだろうし、一緒に入れば遠くへ行くこともない(そもそも親から離れて遠くに行くタイプの子ではない)。

仮に転んで全身濡れても家は近いから急いで帰ればいい。暑い日だから風邪を引くこともないだろう。服は洗えばいい。

自分の靴や服は、まあ、汚れたら仕方ない。諦めよう。

改めて冷静に考えると、ただ「後始末が面倒」なだけで、たいした問題がないことが分かった。
つまり、あとは親としての覚悟の問題。

覚悟は決まった。

靴を脱いで靴下も脱いで、娘と一緒に川に入る。想像より冷たいが、数分もすると暖かく感じられるようになった。

娘も最初はビビっていたようだが、徐々に慣れたのか、水をパシャパシャ飛ばして遊んでいる。

娘にかけられて自分のズボンはベタベタだ。だが覚悟は決まっているから気にならない。

ふっと気づいて顔をあげると、大きな雲と空が見える。散歩をしてるときは、あまりの暑さに空を見上げる気にならなかった。今は川のおかげで涼しくて、周りを見る余裕が生まれた。

青い空。透き通るような水とせせらぎ。暑さもなくなり、五感の全てが心地良い。娘の小さな勇気と自分の小さな勇気が合わさって生まれた小さな幸福を感じた。

15分ほど川で遊んで、家に帰った。

たかだか子供が川で遊びたいと言い、それをさせてあげただけ。何をそこまで、と思われるかもしれない。

ただ、子供に対して色んなリスクに思いを巡らせ、できるだけそれを排除しようとしてしまうのは、親の性なのだろうか。

その結果、子供の勇気や好奇心を踏みにじってはないだろうか。

ご飯をこぼされたら面倒だからと、つい手を出してしまってなかっただろうか。転んだら困るからと、つい「走るな」と口走ってなかっただろうか。

もちろん、すべてを認められるわけじゃない。でも、子供が出した勇気や好奇心にせめて気づいて、受け止めてあげられるようになりたい。

「面倒だから」という動機で子供に声をかけることのないようにしたい。

いつも歩く公園で大切なことに気づくことができた。

夜、寝るときに娘に川遊びは楽しかったか聞いてみた。すると、楽しかったと言ってくれた。

勇気を出してよかった。心から思った。

次はためらわなくてもいいように、サンダルを買いに行こうと決意した。

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