見出し画像

2021年1月に読んだ本

バー・オクトパス

一番肝心なところなんだけど…誰かが最近のお気に入りって紹介していて少し読んでみたら面白かったので猫マンガと同じタイミングで入手。鳥獣戯画ではないけれど海の底に人間社会と同じような社会があって海の生き物たちが会社に勤めたりしている、そんな設定で海の底に無口な蛸のバーテンダーがマスターをしているバーがあってそこの常連であるOL人魚を中心とした作品。いろんなカクテルが出てきて〜八本の手でマスターが巧みに作る!〜その辺りも面白い。誰が推薦してくれてたんだろう...良いものに出会わせてくれてありがたいことです。

夜は猫といっしょ

これも猫の話。独特の描き方が何か良いなと。言ってしまえば猫あるあるなんだけどもこういう作品を出せるまでになる人って絵の上手さもさることながら良い切り取り方をするもんだなと改めて感心。猫の質感というか感触が伝わるような絵も上手くて良いしほんとにいろんな猫との暮らしがあるんだなと。非常に楽しませてもらいました。きゅるがって珍しい名前の由来も面白かった。

猫の菊ちゃん

そういえばコミックをあまり読まなくなって久しい。一昔前は漫画雑誌を週に三冊とか買っていたのだが、きりがないなと思って断捨離じゃないけどある時パタッとやめちゃって、で別に嫌いな訳ではないのだけれど。最近たまたま単行本をいくつか買ったのでこの際まとめて。Twitterでいくつかの漫画作家をフォローしていて、いつも無料で楽しませてもらっているのだから単行本くらい買うかという感じで。犬と猫どっちも、っていうのも好きなんだけど気がついたら沢山出てたので一作目のやつだけにさせてもらうかってことで1つ目がこれ。老夫婦と保護猫カフェから来た猫の日常を描いた作品。自分も昔、猫を飼っていたのだけどいろんな性格の猫がいていろんな暮らしがあるんだな、と当たり前のことに改めて気がついた。なんかほのぼのしていて良い作品です。菊ちゃんって名前もかわいい。

ホーム・ラン

好きな翻訳者が好んで訳しているので知った作家のうちの一人。ピュリツァー他いろんな賞を受賞しているのでかなりの大家なんだろうな。基本的には短編中心に活動しているようで本作も短編集。独特の世界を構築するのが上手い作家でSFと言ってもよいような作品だったり実験的な作品があったりする。この日本オリジナルの短編集〜本国版を二分冊にして作者の短編小説論を収録してある〜にも独特の世界観の作品が収められておりどれも楽しめる。特に圧巻はタイトル作でたったの4ページ、それも一文で。この辺り翻訳者もさすがで原作が一文だったので翻訳もそうしたのだろうけど想像するにけっこう大変な作業なのではないかな。出だしから独特の世界観に引き込む、という作品はこの作家にしては少なくてどちらかといいうと一見普通の小説に見える作品が多かった印象。もうすぐ出るという残り半分も楽しみ。

暗殺者の悔恨

邦訳が出るたびに手にとってしまう現時点世界最高峰のアクション小説の一つ。主人公は元米軍の特殊部隊出身でそんなものが実在するのかわからないけどもCIAの秘密部隊に所属していたのだが、あることがきっかけでCIAとCIAから通知を受けた世界中の諜報機関から命を狙われていた。現在はCIAとも関係が修復されフリーランスの暗殺者としてCIAを中心に暗殺の仕事を請負っている。世界中で命を狙われていた時から悪人しか殺さない、という信条を持っているのだがここが難しいところで要は検事と判事と死刑執行人を一人で兼ねてしまっているのだが...その辺りを気にしなければ十分スリリングで楽しめるシリーズ。本作ではボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争時の戦争犯罪人を暗殺する仕事をフリーで請け負うのだが、それも狙撃すれば済む話をわざわざ近くまで行ってなぜ殺されるのか、を本人に通知する、というやり方をとったために戦争犯罪人が関わっていた人身売買に巻き込まれ...という話。この手のシリーズで難しいのは主人公は死なないと読者にわかってしまっている上でいかにスリルを作るか、というところだと思うのだが本作でも作者の腕は見事にその辺をクリアしている。悪役の設定も巧く非常に面白かった。血腥いのが平気な人には強くお薦めします。

五・一五事件-海軍青年将校たちの「昭和維新」

日本人の殆どがこの事件の名前だけは知っていて、ではどういう事件で何があったのかは説明できないのでは、と思ったので。なんとなく漠然と、時の首相が軍人に殺された重大なテロ事件なのにその後に起こった二・二六事件と比べて処分も妙に軽かったような気がしていつかはちゃんと内容を追ってみようと思っていたので手にとってみた。冒頭、事件の概要が説明されているのだが...まぁ後知恵ではなんとでも言えるのだがかなり粗く正直なところかなりお粗末でこれでよく時の首相を殺せたものだと思ったほど。計画はグダグダだし移動手段は主にタクシーで旧式の手榴弾は不発だらけ...ちょっと恥ずかしくなったほどだ。しかしこの事件の本質はそこではなく、いわば社会の捨て石となって世の中に警鐘を鳴らしたいというところが目的で...そのようなテロは古今東西まれなのではないかと。つまり革命を起こし権力を奪取するという目的が皆無な、極めて日本的というか世界史的にも変わったテロ事件でそれ故にその処理もかなり特殊。結果として政党政治が終わってしまい軍が政治をも支配する道を開いてしまったという...。分かりやすく非常に興味深い内容でした。これはおすすめ。

死の講義

いつもはだいたい図書館で借りて読んでみて再読したいものを買うのだけれどこれは帯とネットでたまに記事を読んで面白いと思っている人のものだからいきなり買ってみた。いろんな宗教が死をどのように説明しているか、ということを中学生にも分かるように書いた本だというから。内容は大雑把に一神教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)、インド哲学系(ヒンドゥー、仏教)、中国系(儒教、道教)、日本オリジナル(日本の仏教、神道)となっていてそれぞれの宗教の基本的な考え方とそれに基づいて死をどのように説明しているか、ということを解説している。作者に言いたいことは...確かに書きかた、表現こそ分かりやすいけれども内容はやっぱり難しいよ、ということでこれをさらっと理解できる中学生とかほんとにいるのかなと...いるんだよね、でも。優秀な人っているから。しかし本書のテーマはやはり重要で、死んだらどうなるか自分で決める、だいたい本書にはそのバリエーションが網羅されているのでそこから選べばよい、そして「自分でどのように死ぬか決めてそのように生きると結果として自分が思ったように死ねる」と説く。現代は科学万能主義で比較表を作るが如くの相対主義が幅を利かせているが、万物、特に自分の死のようなことは科学や合理主義では割り切れない、そして人類の英知の結晶である宗教的な思索を抜きにはやはり納得が得られない、そういうことだろうな、と。簡単に人が死んだ昔と違って今は医学の進歩もあって死が身近になくそれ故にあまり考えが及ばなくなっているのでは、という危機意識から書かれた作品。とても興味深く考えさせられました。おすすめです。

地平線の相談

かなり前に出たものであることを読んでから知った。今をときめく人気者の星野源が細野晴臣にいろいろ相談を持ちかけて、というスタイルの本、何かの雑誌の連載らしい。日本のポップミュージックの重鎮である細野さんに、AVって見ます?とか質問できる星野源ってすごいな、と。内容はこんな感じで軽く進んで正直なところそんなに含蓄もないのだけど面白かったのは事実。星野源、殆ど聴いたことがない...それを言ったらYMO以外の細野さんもだが...なのでちょっと聴いてみようかしら、と思いました。

幻のアフリカ納豆を追え! : そして現れた<サピエンス納豆>

本年の読了一作目。前にたまたま手にとってみた同作者のソマリアの紀行文がやたらと面白かったので手にとってたみ本作はタイトルのとおり世界の納豆を食べ歩くというもので、自分も納豆というものは日本固有の食べものでは、と思っていたのですがアフリカとアジアの一部では納豆が日常的に食べられているのだとか。本作で取り上げられているのはナイジェリア、セネガル、大韓民国、ブルキナファソ。アフリカ系のものは大豆ではなく現地のパルキア豆を使うのが一般的だがブルキナファソにはバオバブの実やハイビスカスの種から作る納豆もある。そしてこれは懺悔しなければいけないのだけどアフリカの内陸部では人は手に入るものをしかたなく素朴な味付けで食べているんだろう、と勝手に決めつけていたのだけど彼の地ではかなり手の混んだ手法で納豆を作り、しかも多くのケースで出汁や調味料としていわば贅沢にそれを使っているということがわかった。むしろ納豆そのままをご飯にのっけて食べるのはほぼ日本人だけ、日本人も江戸時代までは出汁としてしか使っていなかったらしい、ということが分かり非常に興味深かった。お隣の韓国にもほぼ製法が同じの大豆納豆があるものの彼の国ではチゲの材料にしてしまうので日本の一般的な納豆との共通点が見えにくくなっている、など興味深い視点がいろいろと非常に面白かった。結果として今、アフリカ料理とチョングッチャンが凄く食べてみたいです。美味しいところご存知なら教えて下さい(笑)
これはすごい作品でした。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?