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生産性向上に欠かせない「現状把握」のすすめ <製造業編>

ここでは、以前に生産性向上のためにあげた3つの要素の内、2つ目の「製造工程を見える化して、ボトルネック工程等を徹底的に改善する」情報を発信したいと思います。

1. なぜ「工程を見える化して、ボトルネックを把握する」ことが必要なの?

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、基本的な部分を先ず押さえておきたいと思います。ざっくり言うと、製造工程は「入口」と「出口」から成ります。「入口」からは材料や加工部品の元となるモノが投入されます。「出口」では製造工程で加工された材料が完成品として準備され、出荷待ち状態になったものを意味します。「入口」~「出口」まで一定のサイクルで製造ができたとすれば、常時「出口」からは一定間隔で完成品が出てきます。正に理想的な生産現場です。安定した生産体制は受注変動や「売り方」に合わせた計画が立てられますので非常に強い製造現場だといえます。しかし、実際の製造工程ではなかなか上手くいかないものです。「入口」~「出口」までの間のプロセスで様々なイレギュラーが発生しているからです。
だから「入口」~「出口」間にある様々な工程を分解し、それぞれの工程タクト時間を見える化(数値化)して「どこに遅れている原因があるか」を明確に理解する事が必要なのです。「測定無くして改善なし」です。

2. ボトルネック工程って何?

製造工程の工程タクト時間をそれぞれ見える化(数値化)して、その中で最も長い時間がかかっている工程は「ボトルネック工程」となります。つまりその製造ラインで足を引っ張っている工程という事になります。このボトルネック工程のタクト時間を短縮しない限り、ライン全体の生産能力は上がりません。なぜだか分かりますか?
例えば「入口」~「出口」の中に5つの工程があったとします。すべて同一のタクトタイム(例えば60s)であればこの製造ラインの生産能力は「60s×5」で300s(5分)、つまり5分間隔で「出口」に完成品がくるという事になります。しかし、もしこの工程の中に1カ所だけ75sのタクトを要する工程があったとすると、この製造ラインの生産能力は375s(6.25分)という事になり、先ほどの同一ケースと比べて25%も能力が悪いという事になります。
だから製造工程においては極力タクトタイムを同一にするという考え方が大切なのです。
計算式には加工工程の他に「運搬」「仕掛」等も含まれます、実際の改善にはレイアウトや仕掛状況等も調査して進める必要があります。最近は運搬工程の効率化も多く相談を受けますが、いかに人手を介さず効率よくモノを移動させるか、という点も問題視されていますね。この辺りの話は長くなりますので割愛しますが、調査をする際に重要なのは「点(部分)でなく面(全体)を視る」という事です。

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3. では、どうやって改善していけば・・・

これまで見えていなかったものが「見える化」でき、発見できた!これは一つの改善に向けた一歩です。では、これからどうやって改善していけばよいのかという点をお伝えします。人出作業と生産機械の両パターンで意見を述べたいと思います。

3-1. ボトルネック工程が生産機械である場合

生産機械のタクトタイム改善が図れない場合、それがその機械の本来の能力です。この際に重要なのは、その機械の改善ではなく前後工程のタクトタイムをこのボトルネックタイムに合わせる(=遅らせる)という事です。一見生産性が落ちる印象を持たれがちですが、生産性は変わりません。むしろ前後の生産機械の生産能力を落とすことで負荷が軽減され保守性が上がったり省エネルギーになり電気料金が下がる可能性が高いです。「ボトルネック工程=悪」ではなく「ボトルネック工程=正常値?」という観点で捉えていきましょう。
もう一つのケースとしては、生産機械そのものは問題なくても、品種切替に伴う「作業段取時間」がボトルネックに大きく影響しているケースもあります。オペレータのスキルによって作業時間が変わっている状況があれば、それは改善すべきです。具体的には、段取操作時の作業マニュアルを整えて誰がやっても「同じ操作で同じ時間」になるようにしましょう。必ずしも最速作業者に合わせる必要はありません。ライングループの中で「標準的な作業時間を決めてそれを守る」ことを意識してください。これだけでもかなり変わってきます。

3-2. ボトルネック工程が人出作業の場合

人の問題は難しいですね。その日のモチベーションや体調等も影響してきますしね。
一言で解決策を言いますと、「だれがやっても同じ時間でできる仕組みを作る」事です。その為には標準作業時間を決める必要があります。標準作業時間を決めるには、作業員それぞれの作業時間を測定し現状把握することから始まります。測定したそれぞれの時間から適正な値を設定します。ただし、現状の作業にはムダがないという点が前提となります。作業における工具の手元化や作業の簡素化ができていなければ先ずは現状の改善を行い、その中で標準時間を算定してください。3S活動ができている企業であればこの辺り問題ないと思います。

3-3. 現状のライン構成ではどうしても改善できない時

現状の環境を調査し改善を試みても、どうしても上手くいかない事もあるかと思います。そんな時私だったら「レイアウト変更」を試みると思います。
・工程間の距離を縮める
・セル化/一部セル化
・工程分割(1つの工程を2つに分ける)

今回は製造ライン全体を俯瞰し「見える化」する、その中でボトルネックとなる工程は適正であるかどうか、改善をどのように行えばとよいか、という点を主に書きました。
このプロセスは自動化/ロボット化等を行う上で非常に重要な取り組みとなります。ご参考頂ければと思います。
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