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ケースで考える!自動化導入プロセス 〈金属加工業ABC社の場合/解説編〉

前回、ABC社/海老社長は外部環境の変化を捉え、自社の製造工程を自動化することを決意しました。
自動化の指示を受けた貴方はどのような手順で進めるべきでしょうか?ここで導入までの前プロセスとして以下の手順をアドバイスしたいと思います。

まずは経営者の考え・思いを認識する

 指示を受けた貴方は早速実行!といきたいところですが、本当にそれでよろしいでしょうか?先ずは、そもそも何故経営者は自動化に投資を考えているのかを貴方自身が良く理解しておく必要があります。
省人化によってこの工程の作業員がいなくなることが最終目的ではないはずです。この工程で削減される人はクビなのか、配置転換なのか、というように削減されることによって何が変わるのかを理解しないといけません。財務面でいうと、人件費(残業費等含む)削減を計画しているのか、人件費はそのままで売上拡大を狙っているのか、等です。こういった具合に経営サイドが何に課題を持って取り組んでいるのかをしっかりと把握しておきましょう。

投資予算を把握する

 投資の背景や目的を理解した後は、その投資の全体予算も把握しておきましょう。これは外注発注予算ではなく、投資全体の予算です。よく外注予算と勘違いされる方がいらっしゃいます。内製・外注委託の適用範囲にもよりますが、仮に一括外注任せだとしても、設備投資には外注費以外に様々な費用が加わってきます。
 例えば、自動化装置を導入するにあたっての一次側電源、エアー源の供給が必要です。現在の分電盤容量を確認し、空きがなければ増設の工事が伴います。ある程度小規模な装置でも20A程度は必要ではないかと思います。これ以外にもよくあるのが、テストワークです。装置の試運転やデバック時にはテストワークによる流動確認が必要です。このテストワークは業種によりますが、例えばお菓子だった場合、1000ケ程無償提供を求められるケースが大半です。このような場合、費用は全て自社持ちとなります。このような費用も事前に管理しておくと後々のトラブル防止にはなります。

計画を立てる

 予算管理ができたら次は導入までの全体スケジュールを作成しましょう。ここでは先ずは終了(本生産開始)までの大まかな流れを計画するという段階です。進める内に細かな管理が必要になってきますので、徐々にブラッシュUPしていくイメージです。
私だったら先ずは
・構想期間 ・テスト実証 ・見積積算 ・契約手続き ・開発製作 ・出荷前検査
・据付工事 ・試運転調整 ・立会検査(検収タイミング) ・本生産
という程度の項目を出し、ザクっと期間を設けます。
それぞれのプロセスでも詳細の点が出てきますが、詳細計画は別紙なりで細かくチェックできるリストをつくると便利だと思います。スケジュール管理は管理しやすい、共有しやすい方法がベターだと思います。大事なのは、期間を決めて運営するという事です。

構想図と予算把握

 いよいよ自動化に向けてカタチをつくる段階です。構想設計と聞くと、何となく「イメージ」に近い印象を受けるかもしれません。しかし、自動化において構想段階は非常に重要です。この構想が上手くできなければ後々完成する装置の出来栄えも良くありません。つまり、構想段階でしっかりと時間(予算含め)を取って仕様を高めることが重要です。
構想段階では主に「設備仕様」について考えます。対象ワークの品種数、サイクルタイム、ロボットの動作精度、排出機構や治具のバタつき等を数値化していきます。
 この際気を付けておかないといけないことは、既設装置との信号のやりとりです。既設装置とのインターロックを設けないと安全性が損なわれます。必ず既設装置の信号を確認し、新規導入する装置とのインターフェイスを構築するようにしてください。
 また、保守面も考慮しておくべきです。清掃の状況を確認し保守しやすいようなメカ機構にしておかないと、導入してからでは手遅れです。
もし、装置を外注さんに発注する場合はこう言った協議を重ねて、極力漏れがないように進めてください。装置メーカさんによっては自社の装置の事だけを考えているケースがあります。既設装置の仕様や保守メンテ性の条件は発注元から投げかける方が確実だと思います。
 そして仕様が整ったら構想図面に落とし込みましょう。構想段階では極力3DCADを使った方が良いと思います。なぜなら経営者へ説明する際、視認性が良い為です。
 普段図面を見ていない方は2Dだと理解しにくい部分がどうしてもあります。3Dでイメージを掴んでもらい、レイアウト等で問題ないかチェックしていただくようにしましょう。


テスト実証

 構想を練る中で、技術的に実現できるかどうかわからない、やってみないとわからないという部分は必ず発生します。こういったときは先延ばしせずに、予算を立てる前にテストを行うようにしましょう。ロボットメーカさんでも実験センターやラボを構えている会社が多いです。このような環境をお借りして課題をクリアにしていきましょう。
(出来るかどうか分からないがやってみた!というのではダメです。)

費用積算→製作開始へ

 構想と検証フェーズが完了したら、それらの仕様を基に図面化、費用積算を行います。システムの導入には追加は付き物です。ここで算出された費用に加えて予備費等も積算しておくと良いのではないでしょうか。
予算通りに行けばこの後は製作プロセスです。システムを外注に発注する際は取引条件(支払い条件)も明確にしておくと良いです。企業によっては分割検収等を要求してきますので、どの段階でいくら支払いが生じるか、確認しておきましょう。

ここからの流れというのはスケジュールの通りです。それぞれのプロセスで進捗を管理しながら進める必要があります。この手のプロジェクトは一人ではなく複数の人が絡んで行なう事が大半です。デイリーで進捗を管理し、決めたルート通りに進んでいるかチェックしましょう。
ここでは製作前のプロセスについてご説明しました。

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