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【読んだ本】 人間中心設計入門 HCDライブラリー 第0巻/山崎和彦 他

この本を一言で言うと...

「UXデザイン」や「デザイン思考」のベースにある『HCD(人間中心設計)』という考え方について学べる本。

読むべき人は...

① UXデザインやデザイン思考については知っているけど、人間中心設計のことはよく知らない人

② 人間中心設計・UXデザイン・デザイン思考・ユーザビリティなどの概念を整理して学びたい人

読んで学んだことは...

①「ユーザビリティ」「ユーザエクスペリエンス」「デザイン思考」、これら3つのベースには人を中心に捉えたHCD(人間中心設計)という考え方がある。

HCD… ①利用者の特性や利用実態を的確に把握し、②開発関係者が共有できる要求事項の下、③設計と ④ユーザビリティ評価の連動により、より有効で使いやすい、満足度の高い商品やサービスを提供するための一連の活動プロセスのこと。
ユーザビリティ… 製品やサービスの「使いやすさ/使いにくさ」をはかる尺度。
ユーザエクスペリエンス… 使いやすさだけでなく、ユーザー体験を総合的に捉えること。
デザイン思考… 人間中心設計を基本にした創造的なデザインアプローチを多様な分野で活用すること。

②「HCDサイクル」とは以下の4つの活動を反復的に繰り返すこと。

1. 利用状況の把握と明示
2. ユーザーの要求事項の明確化
3. ユーザーの要求事項を満足させる設計による解決策の作成
4. 要求事項に対する設計の評価

③ ユーザーの多様性には以下の3つがある。

1. 特性の多様性… 年齢・性別・障害・身体特性・人種と民族、知識、技能など。例えば、コンビニのATMを開発する場合に、お年寄り、車椅子を使っている人、視覚障害のある人、外国人、コンピューター操作が不得意な人などへの対応を考慮すること。
2. 志向性に関する多様性… 文化、宗教、嗜好、価値態度など。例えば、コンビニのATMを開発する場合に、対象とする地域の文化、宗教的に考慮すべき言葉や色使い、対象ユーザーがどのような嗜好や価値観を持っているかなどを考慮すること。
3. 状況や環境に関する多様性… 精神状態、一時的状態、経済状態、物理的環境、社会的環境など。例えば、コンビニのATMを開発する場合に、コンビニに来た人の精神状態(例:早くしたい、安全に使いたい)、一時的状態(例:荷物で片手がふさがっている)、物理的環境(例:狭い、すぐに後ろの人がいる)、社会的環境(例:コンビニというやや公共的な環境)などについて考慮すること。

④ ユーザビリティの国際規格(ISO9241-11)の定義

ユーザビリティの定義は「ある製品が、指定された利用者によって、指定された利用の状況下で、指定された目的を達成するために用いられる際の、有効さ、公立および利用者の満足度の度合」。

有効さ…
ユーザーが指定された目標達成する上での正確さ、完全性のこと。例えばコピー機で、白黒の両面印刷で12枚コピーしたい場合に、それができるかどうかのこと。
効率… ユーザーが目標を達成する際に、正確さと完全性に費やした資源のこと。例えば、コピー機でA3サイズで100枚を5分間でコピーしたい場合に、希望した時間内にできるかどうかのこと。
満足度… 製品を使用する際の、不快感のなさ、および肯定的な態度です。例えばコピー機で、なんとなくこのコピー機だったらまた使いたいと思うこと。

読んで思ったことは...

「技術」や「デザイン」を中心に据えて製品・サービスを設計するのではなく、「利用者」を中心にして設計を行うのが「人間中心設計」。

製品・サービスのつくり手は「当然、私は利用者のことを第一に考えて設計している。そんなの当たり前だ。」と考えるところだと思うけど「人間中心設計」はもう少し奥が深い。

というのも「人間中心設計」は『利用者の身体的特性とか考慮してる?』とか『利用者の文化の違いとか考慮してる?』とか『利用者の精神状態とかも考慮してる?』とか、多くの作り手がなかなか踏み込めていない領域まで要求してくる。

だからこそ「人間中心設計」は、より多くの人がそれを実践できるように、設計・開発プロセス(HCDサイクル)が定められている。

このHCDサイクルの肝は
① 利用者の利用状況をあらゆる側面(ユーザーの特性・タスク・環境など)から詳細に調査・把握すること
② 反復的にプロセスを回すことで、真に利用者の欲求を満たすものを探し出すこと
に集約されるのではないかと思う。

この2点はある意味で、利用者のための製品・サービスづくりにおける「哲学」のようなものである。

そして「UXデザイン」や「デザイン思考」にはこの哲学が脈々と受け継がれているものなのだと解釈した。流行の「UXデザイン」や「デザイン思考」についての学びを深めていく上で、この源流の哲学を理解しておくことはとても重要だと感じる。


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