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目が合って、頷く

ふと、目が合った。
そしたら、そしたら。

5年前、彼と知り合ったとき、優しい人だと思った。
表情もテンションも淡白なのに、そういう雰囲気を一瞬で感じ取った。
しっかりと目を見て話す。私の話を聞いている。

交差点で手を繋ぎながら、横顔をじっと見つめてみた。
目が合った。目を見開いた。私は微笑んだ。
彼は無表情ではにかんでいる。
そして、頷く。

私の父は、勉強家で威圧感がある。
インテリなヤクザだと思っていた。
経済政治にはじまり、歴史で終わる。
人の話は聞いていないようにしか見えない。
がんこオヤジ。

父は、目が合うと、目を見開く。
照れくさそうに微笑む。
そして、頷く。

これまでは、何の違和感もなかった。
それが人と目が合ったときの儀式だと思っていたから。

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