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むぎめしの帰還

うちには二匹の猫がいる。
とろろと、むぎめし。

ねぎしが好きで、牛タンが好きで。
本当は東京駅の伊達の牛タン、極厚芯たん弁当が好きで。

この名前にしました。

とろろが先にうちの子に。
その当時付き合っていた彼は犬派だったけれど、同棲用の家具を買いに行って、ペットショップに寄って。

抱っこしたらもう飼う気持ちが揺るがなかった。
ケージを買って、一週間後に迎えに行った。

小さい時、おばあちゃんの家に猫がいた。
ミラという名前の、キジトラ柄の雑種。

子猫の時に軒下に捨てられていたらしい。

賢くて、素敵なお姉さんだった。

テーブルには乗らない、ベッドには上がらない。
おじいちゃんの膝がすきだった。

正確には覚えていないけれど、20歳をこえても元気だった。

わたしはミラが好きだったし、ミラのおかげで猫がずっと好きだ。

小さい頃から猫アレルギーなのは分かっていた。
猫を触ると目が痒いし、鼻水がとまらないし、舐められるとそこが赤くなる。

でも猫が好きだ。
だから、自分で稼げるようになったら猫を飼うと決めていた。

そしてとろろをお迎えした。

ペット禁止のアパートで、すぐにバレて、引っ越した。
違約金はちゃんと払った。
その時の彼とは半年続かなかった。

次の彼と付き合った。
彼は猫好きだった。

とろろのことも大事にしてくれた。

彼が洗濯を干そうとして、とろろがベランダに出てしまったことがあった。

当時11階に住んでいて、その瞬間心臓が止まるかと思った。

お店出るおもちゃで家の中に呼び寄せて、抱きしめて、何事もなかった。

何事もなかったけど、もしなにかあったら、わたしは彼を突き落としていただろう。
落とし前をつけさせていただろう。

そんな彼は猫好きだったので、もう一匹飼おうと言った。

わたしは乗り気ではなかった。
とろろは甘えん坊だし、協調性がない。
他の猫と仲良くできるはずがない。

何よりとろろをお姫様でいさせてあげたかった。

乗り気ではなかったけれど、譲渡会に行った。

ちいこい猫がたくさんいたけれど、その中でずっしりと、どっしりとした猫を見つけた。

それがむぎめし。
ひときわ体が大きくて、目が座っていて、微動だにしなかった。

落ち着いた子だし、男の子だし、この子ならと思った。

トライアルに来たむぎめしはとろろを威嚇して、とろろは生まれて初めて威嚇されて。
その日から威嚇を覚えた。

全く怖くない、ウーとかシャーとか言って。
なんだかんだ仲良くなった。

喧嘩もするけど、一緒に寝たり、なんだかんだ。

むぎめしは全然どっしりしていなかった。
とろろと比べると体は小さいし、臆病者で、よく鳴く。

今思うと、里親さんはむぎめしを早く手放したかったのだと思う。

何度も譲渡会に連れて行ったけれど、赤ん坊でもないから人気がない。
怖がりだから抱っこもできない。

持て余していたのだと思う。

今となっては抱っこもできる甘えん坊だけれど、そんなこともあった。

彼とはその後別れて、わたしが二匹とも引き取った。
むぎめしは引き取りたいと言ったが、酔って寝ゲロするような人に任せられない。

そんなむぎめしが、病気をした。

わたしの大殺界がうつったのだろうか。
尿管と膀胱に石ができたらしい。

トイレに何度も行っていたので念のため病院に連れて行って判明した。

即入院。
年末年始を病院で過ごすことになった。

毎日面会に行ったが、拗ねてしまったむぎめしは目も合わせてくれなかった。

尿路結石は普通手遅れになるまで見つけられないらしいが、たまたま膀胱にも石が出来たことで発見できた。

早期発見だったので手術も上手くいき、一週間で退院。
それが今日。

あんなに拗ねていたむぎめしは、家に帰ると全て忘れて甘えん坊を爆発させている。

とろろはカラーをつけたむぎめしを異星人扱いしてブチギレているが、そのうち慣れるだろう。

わたしも、猫も、踏んだり蹴ったりだった大殺界は終わった。

手術も年末にしてもらえたので、悪いものは全部去年に置いてきた。
ちゃんと保険に入っていたので、わたしの少ないお給料でもなんとかなった。

新しい年。
2023年。

今年は素晴らしい年にしたい。
楽しくて、優しくて、愛おしい一年にしたい。

猫とのんびり健康に生きたい。

そんな抱負を胸に、頑張りたいと思います。

おかえりむぎめし、ようやくみんな揃ったね。


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