甘納豆のビジョン

今日は朝から、雑誌の取材で当店に来て頂きました。

初めての雑誌。

初めて全国の方に知って頂けるのだと思うと、本当に嬉しい。
斗六屋史上初のこと。
先代達もきっと喜んでくれている。

メディアの方々は、こういう頑張ってるお店、人にスポットライトを当ててくださる、本当に素晴らしい仕事だと思う。
数あるお店の中から選んで頂き、ありがとうございます。

実は私が継ぐ決断をした数年前、メディア関係で非常に悔しい思いをした。

当時大学院2回生、抗議のFAXを匿名で送ったことを、今でも覚えている。

社会のことを何も知らず、そして無力だった。

必ず、良いことで全国に名前を出すと誓った。

それが来月実現する。

これまで、甘納豆も経営も経験0で家業に入り3年11カ月。

続けてきてよかった。

お話する中で、明確になってきたこと。

なぜ、イタリアにお店を出したいのか?

それは私に、家業という生き方の素晴らしさを教えてくれたのがイタリアだったから。

イタリアに恩がある。

あの経験がなかったら、私は前職をなかなか辞めれなかったかもしれない。

3代目が昨年に入院した。

もし家業に戻るのが1年遅ければ、様々な引き継ぎに必要な準備が間に合わず、お店を続けていけなかったかもしれない。

その恩を返したい。

どうやって?
それはもちろん、イタリアに教えてもらった素晴らしい家業を通して、うちの美味しい甘納豆で喜んでもらうこと。

また、天皇即位の晩餐会の裏側のドキュメンタリーを見て気づいたこと。

甘納豆は世界中の方に召し上がって頂けるお菓子であること。

なぜ?
様々な食の障壁(アレルギーや、宗教上の理由)にとらわれないお菓子だから。

アレルゲンフリーで、植物性。ヴィーガンの方でも召し上がって頂ける。

各国の来賓のコースリストには、一人一人食の制限、ヴィーガンやフカヒレがだめ、グルテンフリーなど、様々な要望が書かれていた。

それ用に、個別にメニューが組んであった。

全ての要望に対応するシェフたちも本当にすごいと思った。

しかしながら、同じものを一緒に食べれた方が、交流しやすいと思う。

晩餐会のスイーツは、丹波栗のモンブランに、ミルクジェラートと、中に抹茶のマカロン。

美味しいに決まってるが、ここにうちの甘納豆が乗っていたら!!!

甘納豆の品質を確かめるコンテストはあまりない。チョコやワインは世界コンテストがあるので、そこで認められれば分かりやすいが、甘納豆は日本固有のもので、世界へ向けての質の証明は難しい。

ならば、天皇の晩餐会に供された、となればどうだろう?日本を代表するにふさわしい菓子、と言っても過言ではないと思う。

私が生きている間に、おそらくもう一度天皇即位が行われるだろう。

そのときに、斗六屋の甘納豆が供されることをイメージして、品質を高めていきます。

これが私4代目で達成するべき、一つの目標であると思う。私が60歳になるまでのあと30年での、チャレンジである。

甘納豆の本来の名前は、淡雪(あわゆき)。

豆に仕上げの砂糖がかかった様を、淡く雪が降った景色に例えた菓名である。

私はストーリーが非常に好きだ。
なんとも日本人らしく、おくゆかしい名前だと思う。

今甘納豆というと、どちらかといえば駄菓子のような、カジュアルな菓子というイメージが和菓子の中でもあると思う。

それはそれで親しみがあってよいのだが、私はやはりそういう甘納豆ではなくて、淡雪を目指したい。

上菓子と遜色なく、茶道でも供されることが当たり前なステータス。

禅にも通ずる、自然のままを大切に、素材と砂糖という最もミニマムな、洗練された菓子の形であるとも思う。

甘納豆を広め、さらに地位を高めていくこと。

こらが私のしたいことであり、役割でもあるように感じる。

よりよいものを創るために、研究で学んだ常に疑問をもち、仮説を立て検証していく手法は、とても有効であると確信する。

昔より、うちの甘納豆は美味しくなっている。

“本物とは、日々の新たの積み重ね。”

裏千家家元の信じて、これからもほんまもんの甘納豆に向かって、前進を続ける。



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