映画『湯道』│熱いお湯にじっくり浸かるみたいに
あらすじ
東京で建築家をしていたが、仕事がうまくいかずに実家の銭湯「まるきん温泉」に帰ってきた兄(生田斗真)と、兄が出て行ったあともずっとまるきん温泉を守ってきた弟(濱田岳)。兄は銭湯をつぶしてマンションにしようと計画するが、仕事を手伝ううちに銭湯とはなにかを考え、家族が何を考えて銭湯を営んできたのか知るようになり……。
感想
ふと見始めたらめちゃめちゃ豪華キャストで驚き
Amazonのプライムビデオで鑑賞。「あなたにおすすめ」みたいな欄に出てきたので、生田斗真(とても好き)主演だしじゃあ見てみるか~と流し始めた。
物語は、大きな事件が起こるような派手な展開はないものではないもののテンポ良く進む。まるきん温泉の外装・内装や、町のようすがレトロな感じで、こだわりを感じさせるカメラワークで映し出されるので、映像を楽しむという意味でも満足度が高い。
結構登場人物が多いのだが、実力派有名俳優だらけで新しい登場人物が出てくるたびにびっくりする。そのことが、映画として細かなシーンまでどっしりと安定させている感じがする。
銭湯と歌
実力派有名俳優だけではなく、実力派歌手が二人も出てくる。天童よしみとクリス・ハートである。
二人の歌は、
「よく響くお風呂で歌うのって、気持ちいい」
「銭湯でのびのび歌えたら気持ちよさそう」
という「お湯に浸かる」というだけではない銭湯・お風呂の魅力を訴えかけてくる。
確か三回くらい銭湯で歌うシーンが出てくるのだが、この曲を銭湯で熱めのお湯に浸りながらこんなに上手く歌えたら気持ちいいだろうな~と思わせられて、しかもそのシーンにマッチしている絶妙な選曲で面白い。というか当たり前なんだけど、天童よしみとクリス・ハートの歌がめちゃくちゃ上手い。しみる。
裏主人公・小日向文世のかわいさ
小日向さん演じる横山さんは、私の中ではこの映画の裏主人公なのかなという印象。この映画の案内人というか、全体をきゅっと束ねているキャラクターな気がする。優しくて人当たりの良い郵便局員で、もうすぐ定年を迎える男性である。「湯」の魅力に引き込まれていて、退職金で家のお風呂を檜風呂にしたいと考えているが、家族にはいい顔をされていない。奥さんと娘とは仲は悪くなさそうだけど、頭は上がっていなさそう。
実はいま大河ドラマ『真田丸』をNHKオンデマンドでちょこちょこ見ていたので、小日向さんを見ると明るくひょうきんなのに誰よりも頭が切れて、底が見えない恐ろしい秀吉が思い浮かぶ。一方で、この映画では「小日向文世(気の優しいお父さんver.)」。どんな役を演じてもぴったりと違和感なく「これは小日向さんが演じるべき役だ」と思わせられる。これが実力派であるということか……。
最後、ストーリー全体としてハッピーエンドだったけど、小日向さんのエンドが一番うれしかったな。エンドロールで、お風呂につかりながら歌っているところが大変かわいいです。
『湯道』は、○○なときに見たい映画
良い意味でストーリーはベタなので、最初から最後まで心乱されずに見れた。でも「湯道」や天童よしみたちの歌など独特な設定があるし、テンポ感の良い作品だった。銭湯や街並み、飲み屋などの昭和レトロ風(?)な映像にも癒される。疲れている休日、「ちょっと映画でも見ようかな」というときに見たい映画だ。熱いお湯にじっくりと浸かるみたいに、疲れをとってくれると思う。
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ちなみに、映画では角野卓三さんと窪田正孝さんが家元の役をしていた「湯道」は本当に存在するらしい。映画の企画・脚本の小山薫堂さんが初代家元。