"プロ"になる最後の20点。
中学2年生の夏。池袋にある某音楽大学の練習室にて。
ベートーヴェンのソナタ悲愴第一楽章を、
黄色いドレスを派手に着飾った小太りの女の前で、僕は得意げに弾いた。
その女は化粧が濃く、ファンデーションによって首と顔の色が明らかに違くて、ただの化け物に見えた。
弾きながら、ワンピースに出てくるアルビダに似ている、と思い、まさに悲愴な演出に力が入った。
僕が弾き終わると、女はわかりやすくため息をついた。
「君が器用なのはわかる。
まるで天才のように見える。
ちゃんと習っ