スパチョーク・サラチャート解体新書
ついに来た。半年待った。この瞬間。
スパチョーク・サラチャート選手の北海道コンサドーレ札幌への期限付き移籍加入。
タイの英雄チャナティップ・ソンクラシンが川崎フロンターレに移籍して半年、東南アジア戦略の要となる新たなタイの至宝が札幌にやってきた。
本稿では、スパチョーク・サラチャート(以下スパチョーク)が出場した数試合をチェックし、彼のプレースタイルに関する解説や考察を行っていく。
チェックした試合
今回チェックしたのは2020 AFFスズキカップ。
スパチョークが先発した2試合に目を通した。
また、ブリーラム・ユナイテッドのハイライトやプレー集も視聴した。次項からは、これらを参考にスパチョークのプレースタイルと起用法について考察していく。
プレースタイル
まず印象に残ったのはオン・ザ・ボールのプレーだ。
パスを受けた際のファーストチョイスはまずドリブル。細かいタッチよりもターンやルーレット、切り返しなどの少ないフェイントにスピードを織り交ぜたシンプルなドリブルが持ち味。利き足と同じ右サイドでは縦突破からのクロス、逆足の左サイドで切り返しなどで相手の逆を突いてコントロールシュートを放つなど、積極果敢にゴールに迫る。
味方とのパスワークによる中央侵入などもよく見せており、高い技術力と味方を使う・活かす能力を持っていることが窺える。時間はかかるかもしれないが、ショートパスを多用する札幌のサッカーにも適応出来るだろう。
しかし、ボールタッチとフィジカルには疑問符をつけざるを得ない。ボールタッチが大きいため、J1のようなスペースの狭いリーグでは本領を発揮しきれない可能性がある。また、アジアカップやハイライト、プレー集でも当たり負けするシーンが散見されており、J1の強度では簡単に潰されてしまうかもしれない。
オフ・ザ・ボールでは、基本的に積極的には動かない。タイ代表ではフォーメーションに関わらず、SBが大外、2列目の選手がハーフスペースに位置取りするのだが、スパチョークはサイドに流れたり下りてボールに引き出そうという動きがあまりない。トップ下や左シャドーに入るチャナティップの動きに合わせて動くことはあるが、それは空いたスペースを埋めるためのように見えた。ただ、相手ゴール前では積極的な動き出しを見せる。この2試合では、CB-SB間からポケットへの裏抜けを狙うシーンが何度も見受けられた。
守備に対する献身性も高い。相手に対して果敢にアプローチを仕掛け、自陣にもサボることなく戻ってくる。ただ、パスコースの切り方が甘いのは気になるところ。タイ代表の試合では、CBのパスコースを切り切れず、SBやボランチにパスを通されることが多かった。
札幌でどう使うか
ブリーラム・ユナイテッドではトップ下と右サイドでの起用が中心。日刊スポーツによると、札幌では「シャドー(1・5列目)やワイドでの起用が構想されている」とのこと。しかし、前述したフィジカル面の問題から、メインポジションはシャドーになるのではないかと私は考察している。基本的には青木や小柏、金子とポジションを争うことになるだろう。タッチの大きさが課題となりサイドに回る可能性もあるが、それは実際にプレーしてみないことには分からない。
最も期待したいのはゴールに向かうプレーだ。特に二列目から動き出しには期待したい。今季の札幌はFWに怪我人が多く、駒井を最前線に置いた0トップの布陣を引くことが多い。しかし、それにより前線の選手が下りてくる回数が増え、ゴール方向へのプレーが少なくなっている。スパチョークは下りる回数が少なく、ドリブルと二列目の飛び出しが得意な選手だ。ドリブル突破によるスペースメイクや選手間からゴール前のスペースへ飛び出す動きを見せてくれれば、札幌の攻撃を活性化させられるかもしれない。
懸念点になるのはインテンシティだ。今のミシャサッカーで最も重要となるインテンシティ。球際の強さや動きの連続性、思考の速さetc... その全てを高いレベルで求められる。タイと日本でも大きな差があるのに、札幌はJリーグの中でもトップクラスのインテンシティを誇る。守備に対する献身性は持っているものの、それでも札幌に適応するのは簡単ではないだろう。
おそらく、チャナティップのように一年目から結果を残すのは難しいと思う。当時よりも前線には実力者が揃っており、いくらタイの至宝といえどそこに割って入るのは簡単ではない。まずはサブ組からのスタートになるだろう。ただ、若手の実力者と怪我人が多い札幌。クオリティさえ示せれば、いつか必ず出番はやってくる。まずは今季、適応とクオリティの証明に全力を尽くしてほしい。スパチョークがチームにとって必要不可欠な選手になると期待して、今回は締めにしようと思う。
終わり
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