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3月のババ抜き

息子 9歳
娘 5歳

ある夜、3人でトランプをした。娘も分かるババ抜き。
1回戦、息子の負け。
2回戦、またしても負ける息子。
「負け」がこの世で一番嫌いなものである息子は、泣きの一回を申し出て、私と娘はその熱意に引きつつ承諾。(断ったら余計にうるさいからね。。)

終盤になり徐々に減っていく互いのカード。最初ババを持っていたのは娘だったけど、「これ、引いたらいいことあるよ」という可愛い誘導にヤラれ、私が全力でババを引く。
だいぶ大人なもんで、ポーカーフェイスを守り切る私。そして息子が私のカードを引く番。

私はババを自分から見て一番左にセットした。なぜならそこは引かれやすい位置だから。そして見事にババを引く息子。
こうなると笑いが止まらない私。悔しすぎて惨めすぎて泣き笑いの息子。

しかしこれは我が家的にマズイ状況なのだ。息子大魔神の怒りをかってしまったのだから。何としてでも妹にババを擦りつけたい兄は、ババ以外のカードを隠し、ババ1枚のみを妹の目の前に突き出した…全力のズルである。私はその単純な作戦に呆れつつ、静かに成り行きを見守った。
すると娘は素直に差し出された1枚のカードを引いたのだ。そして彼女は小さな小さなため息をついたのだった。

この子分かっていたんだ…!
齢5歳にして、兄の茶番に付き合ってる…!
私はこの事実に感動してしまった。常日頃、娘に対して「この子は人生何周目なのかな?」と思うほど、落ち着いている娘。家を一歩出れば、人見知りと場所見知りでなかなか私の元を離れたがらないのだけれど。

娘だって勝負事は負けたくない派である。カードゲームで負けたら泣いて暴れたりもする。その娘が、今、我欲を封じて負けにいった…脅威の精神力…!
(こぼれ話: 娘はただ単に眠くなってきたので、戦いを終わらせたかったらしい…だとしてもだよ)

一方、息子はといえば、最低なことをしている自覚があるのかないのか、泣いている。面倒の極まりである。バツが悪いのだろう…と放っておいた。

そしてもう1ターンし、私があがり、息子もあがった。最後まで娘の元にはババが残ったのだった。

スンとした表情の娘は「最初に勝ち負けなしって言ったもん」とポツリ。確かに!2回負けて取り乱した兄の横で、勝ち負けにするからこんなことになるんだと言いたげな娘は、先程の勝ち負けなし案を出していたのだった。またしても一枚上手。立派だよ、娘。きっと悔しかっただろうに。

その後も何故か執拗に「ズルした!」←どの口が言ってる?「ママが悪い!」←とんだとばっちりだぜ!と本当の本当にうんざりする言い草をつけていた息子のことはまた今度。

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