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ポメプー 前編

コロナ禍により追加された習慣の一つにペットショップへの立ち寄りがある。
私は、生体に値段をつける行為・悲惨なバックヤードの現実・売れ残りっ仔の未来を理由にペットショップが苦手だ。世の中にはブリーダーの繁殖放棄や飼い主の高齢化による入院や死別のための飼育放棄によって犠牲となる保護犬猫だって溢れている状態だ。
なのに。仔犬や仔猫を一目見たく立ち寄ってしまう。

そんな中、娘と何の気なしに立ち寄ったペットショップでポメプー(ポメラニアンxトイプードルのMIX♂)に出会った。
トリミングされていない毛はボサボサ。その奥にかろうじてつぶらな、だけどキラキラした黒目を確認できた。
ショーケースに並べられている他の仔犬よりも圧倒的に大きく、ヨチヨチ感はゼロ。そしてもはやショーケースにはおらず、白い柵(DIY的なごく簡易的なもの)の中で黒いダックス(気弱そう)とトイプードル(リーダーっぽい)と元気にわちゃわちゃしていた。
見る専門の娘が珍しく抱っこしてみたいと言うので店員にお願いすると「どの子ですか?」と尋ねてきて、娘はポメプーを指名。すると店員は意外とでも言いたげな声色で「へぇ〜この子…」。
間近で見たら、目は涙焼け(両目)あり、お尻付近は伸びっぱなしの毛に排泄物あり。それでも元気なのは伝わってきた。抱っこすると心臓は力強くドクドクと鼓動し、目を合わせればペロペロとこちらの顔を舐めたがる。愛嬌抜群。全く吠えないので、声帯がついているか心配したほど。
店員の説明によれば、この仔は生後6ヶ月で、元値は880,000円!全国展開しているそのペットショップの中でもトップのお店にいたらしい。こんな田舎まで移動を繰り返し、しかも1/10の値段になってしまっていたことが私の心をえぐった。

その日の夜、ポメプーを引き取るかの家族会議を開いた。
突然のことに夫は反対し、更に「俺は普段家にいないからお世話しない」宣言までした。。すかさず娘が「土日ずっと家にいてゲームしてるじゃん!」と言ってくれた。ナイス、娘。
息子は散々猫ネコ言っていたのに「飼おう!飼える!やったー」と大はしゃぎ。

私は実家で柴犬♂を室内飼いしていたので、犬のお世話には不安はない。
私が多感な時期に我が家にやってきた柴犬♂(母犬モモx父犬オラのすけ=メイのすけと命名)は私のかけがえのない相棒だった。嬉しいこと、悲しかったこと、悔しかったこと、全部傍で聞いてくれた。ただそれだけで思春期によりコントロールできないホルモンが爆発している私の心は凪いだ。
犬は人間の心をよく感じとることができる。私が泣くと、膝に顎をのっけてその温もりで癒してくれたし、私が怒っているときは「わかった、わかった。落ち着けって」とでも言うようにフスン〜とため息をついた。
だから。これから益々成長していく我が子らにとっても、犬や猫と共に過ごす時間があるといいとは思っている。

沢山のことを考えながらもポメプーが頭から離れない。夢にまで出た。
ここで売れ残ったら次はどこに行くんだろう?そこでも売れなかったら?
店員の態度や言い方も引っかかった。「お買い得感」の強調や、「お試しお泊まり」そして「押しつけ感」。「ネットで検索して値段の安い順で買っていく人もいますよ〜」とのこと。
そもそも「お試しお泊まり」って何なの?我が家に連れてきたら飼いたくなるだろうし、例えデメリットを見つけたとしても、やっぱやめときます〜なんてそんな残酷なこと言えない…ってのを分かってて勧めてるのでは???
「皆さん散歩を心配するんですけど、小型犬は楽で最低週一で大丈夫です」って言うけど、お外出たがる仔だったらどーするん???ペットショップの無責任な態度に怒りが湧いた。

(続く)


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