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ポメプー 後編

翌々日、今度は息子も連れてペットショップを訪れた。
こないだとは別の店員だったが、全く同じ説明を受けた。元値・散歩回数・お試しお泊まり…デジャブ???
極めつけは「我が家も小型犬飼ってます」と言ってズボンの後ろポッケから取り出したスマホの画面を見せられるところまで同じ。
娘がメガネ屋で「ねぇ、お店の人みーんなメガネかけてるね」と正直にその違和感を教えてくれた日のことを思い出した。
恐らく待ち受け画面を見せるところまでがワンセットのマニュアルなのだろう。先日の店員もこの時の店員も2歳か3歳の子どもがいると言っていたけれど、それすら怪しい。。私は母親歴10年以上なので分かる。子どもを待ち受けにしないわけがない。ペットがいるとしたら子どもと犬の2ショットだろう。愛妻家なら3ショット。なので。ビジネス待ち受け確定。子どもや妻の顔を晒さないためのプライバシー保護かもしれないけれど。
そんなことをぼんやり考えていると、店員の話は例のお試しお泊まりへと移っていた。とにかくゴリ押し。「この仔今日イケます!」と。いやいやこっちの都合はお構いなしなんかい、と心の中でツッコミつつ「夫に相談してからにします」と伝えると、再び後ろポッケからスマホを取り出し、「いやぁ〜この土日にこの仔を見にくるお客様がいるっぽいですね〜」とのこと。キタキタキターーーー!!!焦らせる戦法。もしそれが本当だとしたら、そして家族が決まったらどんなにかいいだろう。
のれんに腕押しの如く適当にやり過ごしていると、一人のご婦人に話しかけられた。

ご夫婦で来店したらしい。推定70代。
偶然にも一昨日も来店しているという。ポメプーをチラっと見て「飼うの?」と聞かれたので「検討中なんです」と返すと、「うちもなの。先住犬が2匹続けて亡くなってね…今毎日が寂しくて。でも私達も歳だから何かあったらと思うと…ね」と。ペットショップや保護団体によっては70代以上には引き渡さないところもあると聞いている。
私がそのことを伝えようとしたら、すかさず店員が割り込んできて「そんなの大丈夫ですよ!こないだ78歳の方も買われていきましたよ!ペットがいると生活にハリも出ますよ!!!」と力説。それも一理あるけども。。
奥の椅子に座っている旦那様はトイプードル(リーダー)を膝に抱っこしたまま目を瞑って動かない…大丈夫…か…???

これ以上の長居はポメプーも疲れるだろう(息子と娘が交互に抱っこを繰り返していた)と帰ろうとすると、店員がでかでかとQRコードがプリントされたチラシを持ってきた。「明日お泊まりするとしたら何時に来れますか?準備とかあるんで」と言うので、「まだお泊まりは確定していないけど…もし!もしお願いするとしたら15時くらいかな」と返答すると、SNSでお友達追加して来店前に一言ください、とのこと。へーい、と適当な返事をして店を離れるとすぐさまSNSの通知。
開くと先ほどのペットショップからで「今日はありがとうございました」と書かれており、思わずキャバクラかよ!とツッコんだ。

帰宅後、一連の話を夫にして家族会議、再び。
レベル10が飼いたい気持ちMAXだとしたら、今レベルいくつ?という問いに、娘は10、息子は9、お世話しない宣言をしていた夫は意外にも7とのこと。さて私は…?

翌日仕事中にSNSの通知。開くとペットショップからで「今日はどうされますか?」と。時計を見ると14時30分。答えが出ないまま預かったら私は情で飼ってしまう。それでもきっと飼える。飼うことによって得られるものはきっと大きい。だけど…。。。
結局「今回は見送りたいと思います」と返信すると、すんなり受け入れてくれた。
買う気のなさは伝わったらしい。
ポメプーのことを思うと気持ちがずーーーーんと重たくなりながらも家事をしていると再びペットショップからSNSの通知。

「以前お話しもさせてもらいましたが、小型犬ならそこまでお世話の手がかからないので、お泊まりしてみて考えてもらってもいいのかなとは思います。旦那様も話だけされるのと、可愛いワンちゃんが実際目の前にいるのとでは全然違うかと思うので」
もううんざりだった。
あんた何言うてるの?
誰かに押しつけるくらいなら売らなきゃいい。命を何だと思ってるのか。怒りと悔しさと絶望。例え一匹救ったとて、全国には売れ残った仔犬仔猫は毎日毎日出てくる。私一人ではみんなを救うことはできない。圧倒的無力感。
返信する気もおきず既読スルーのまま幾日も過ぎていった。

これは私の中でペットショップへの不信感が強まる出来事だった。絶対に忘れたくない、なんとも言えない感情が私の体から湧き起こった出来事になった。

どうか可愛いの感情だけで、ペットショップから犬や猫を買う人がいなくなりますように。

どうかあのポメプーに生涯大事にしてくれる家族が見つかりますように。

果たして私は正しい決断ができたのだろうか。。。


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