ドア

「どこでもドア」がこの世界にあったら、VRが流行る理由

どこでも行けるようで、行けない

もしも「どこでもドア」がこの世にあったとしても、どこにも行けるようで行けなくなる。なぜならば、法律で海外間での使用に申請が必要になるなど、制限がかかるからだ。

誰でもどこにでも行けるとなったら、テロリストがトランプ大統領の寝室に現れることも可能になる。「どこでもドア」がこの世に誕生した瞬間に、即座に海外間の移動は空港を通すなど、使える場所が限定されるはずだ。しかし、テロリストは法律があったとして言うことを聞かないので、ドアの使用を物理的に制御できない場合は富裕層たちが私設軍隊を使って立てこもったり、自警団が結成されることになる。しかも、凶悪犯罪者たちも「どこでもドア」を通していくらでも犯罪ができるので、一定の割合において犯罪に合う確率が上がることになる。
荒廃した近未来が容易に想像できてしまうので、ここでは「特定の箇所にはどこでもドアを使えない」という物理的制限が有効になるものとして話を進める。
これにより、海外の渡航は空港などを経由して入国する必要があるし、個人のプライバシーを保護するために、プライベートなエリアへのドアの使用は双方の合意が必要なものとする。

巨大ハブスポットの出現と、社会的統制。格差の拡大

「どこでもドア」ができるということは、いつでも好きな場所にアクセスできるという観点で、現実社会がインターネット化するということだ。物理的な距離という制約が取れた社会では、巨大なハブスポットが出現する。例えば、Yahoo!Japanの月間IDログイン数は4,000万を突破している。日本人の3人に1人は月に1度、Yahoo!にアクセスしていることになる。
「どこでもドア」の出現により、移動距離および時間という物理的制約が取れた場合、インターネットと限りなく同じ構造になり、多くの人たちがアクセスする巨大ハブスポットができる。しかし、現実の社会において、インターネットと異なるのは収容人数に物理的な制約があるということだ。Yahoo!のサイトトップには、一気に100万人アクセスできるが、一気に100万人を収納できる施設はない。
これが公的機関であった場合、例えば市役所などであれば同時訪問数を抑えるための社会的統制が入る。市役所の手続きなどは3月4月は繁忙期となるため、時間単位の予約制などとなり入場が制限される。
しかし、ディズニーランドなどの営利的施設であった場合はそれは資本主義に基づいて「価格調整」が行われることになる。いつでも訪問できるパスのようなものが、驚くような価格帯が売りに出される。安価なチケットは抽選制になり、お金を持たない一般の人々は抽選制になる。
これにより富裕層は優先的に営利目的の娯楽施設を訪れることができるようになるが、一般の市民は体験機会を損失して格差が拡大する。

VRの流行が加速

どこにでも行けるドアがあるのに、誰でも行けるようになったがために、資本主義経済において貨幣を持たざるものは入場が制限される。アクセスできる手段はあっても、資本を持たざるものは疑似体験をすることになる。ゆえに現実に存在する観光地やスポットを疑似体験させるVRの流行が加速する。

施設の巨大化と移動手段の娯楽化

移動を必要としない状態になるので、移動が娯楽になる。車も移動手段ではなく嗜好品となる。点在して人々が暮らすよりも、ひとつのコミュニティに暮らす方が資源が最適化でき、かつ移動のために必要な道路や移動手段そのものが消滅するため、数万人が暮らすような巨大なコミュニティユニットが登場する。各コミュニティユニットの外は、いずれは荒廃したジャングルのような状態になるかもしれない。
前項にあった通り、娯楽施設も巨大なハブスポットとなるため、ショッピングモールなども巨大化する(そして入場は富裕層が優先になるかもしれない。)

交通機関の消滅と流通構造の変化。シェアリングエコノミーの加速

飛行機、電車、バス、タクシーなどの交通機関はほとんど消滅し、一部のみが移動手段を楽しむための娯楽として残る。小売りにおいても流通網が必要なくなるため、そこにかかっていた人件費やコストが下がり、商品価格が下落する。人と人が繋がることのコストが激減するため、シェアリングエコノミーが加速する。

会社はミーティングスペースのみに

仕事は自宅で作業し、打ち合わせの際にどこでもドアで集まれば良いため、会社はミーティングスペースのみになる。もしくは同部署メンバーが顔を突き合わせる必要があれば、グループメンバーが集える執務室単位で仕事を進めることになる。
ただし、会社という共同体の存在意義を確認するために、社員総会などは適宜ホール的な場所に集合して開かれる。従業員数が少ない会社については社屋をかまえる必要がないため、執務スペースもシェアリングが進む。

まとめ

・世界はよりインターネット的になり、人気のあるスポットと全く人気のないスポットに二極化
・人気のスポットは、場所の広さというインターネットにはない制約が入るため、富裕層が優先的に便益を受けられるようになり、公的機関については社会的な統制が入る

・人気のスポットを疑似体験をするためのVRが流行する。
・流通構造や都市の在り方が大きく変化し、シェアリングエコノミーが加速

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?