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【山陽バスむかしさんぽ】(15)垂水駅

マンションや商業施設に囲まれた駅前のターミナルを、黄色いバスが行きかいます。垂水駅西口に構える垂水駅バスターミナルは山陽バスのメインターミナルです。

垂水駅バスターミナル

1936年5月1日、山陽電気鉄道運輸部自動車課が垂水駅前~商大前間で旅客輸送を始めた時、垂水駅前のバス乗り場は今と異なって山陽・JRの線路の山側の天神川左岸にありました。現在では天神川は暗渠となり、再開発で町並みは変わってしまって面影は全くありません。
乗り場があった辺りは道路となっています。
清水が丘行きのバスがやってきました。

旧垂水駅前のりば付近を行く2系統の山陽バス

こちらのサイトには当時の垂水駅前乗り場の写真が掲載されています。拡幅前の商大筋から路地のように入り込んだ先のバスターミナルで、見るからに狭そうです。詳しい事情はわかりませんが、1956年に開設された霞ヶ丘循環線(現在の1系統霞ヶ丘線)が垂水駅前ではなく神田町を発着していたのもこの乗り場の容量の問題があったのかもしれません。

「神戸フォトミュージアム 山陽電鉄バス 垂水 商大筋」
https://www.kobe-photo.jp/?pid=141726710

運行開始以来、30年以上に渡ってこの手狭なバスターミナルを使っていた垂水駅ですが、1967年に高架となった新・電鉄垂水駅(現・山陽垂水駅)の完成で、高架下の新乗り場へ移ります。乗り場があったのはこの辺りで、今も山陽垂水駅の東改札前に柵で封鎖された出口が残されています。

山陽垂水駅の旧垂水駅バスターミナル跡地
山陽垂水駅の旧垂水駅バスターミナル跡地
山陽垂水駅の旧垂水駅バスターミナル跡地
山陽垂水駅の旧垂水駅バスターミナル跡地

かつての垂水駅バス乗り場を道路側から眺めてみました。現在はタクシーの待機場となっていますが当時の雰囲気はそのままです。降り場は乗り場の向かい側で、今もフェンスに切れ目があります。

山陽垂水駅の旧垂水駅バスターミナル跡地
山陽垂水駅の旧垂水駅バスターミナル跡地
山陽垂水駅の旧垂水駅バスターミナル跡地
山陽垂水駅の旧垂水駅バスターミナル跡地

山陽電車高架下のかつての垂水駅バスターミナルへ到着したバスは高架橋の山側を通って、高架下に設けられた待機バースで折り返していました。高架下には今もバスが出入りしていた空間が残されていて、貯水槽や業務用車両の駐車場、係員の詰め所が置かれています。

山陽垂水駅東側の駐機バース跡

垂水駅東側の駐機バースは高架下だけでは容量不足となったため、1984年に山側にも「垂水駅第2バス方向転換所」(日向回転地)が設けられました。日向回転地は周辺の民家や商店等とともに再開発で駅前駐車場となり、現在は2024年の開設予定の新・垂水図書館の建設工事中です。

垂水駅第2バス方向転換所(日向回転地)跡地
新・垂水図書館の建設中です

今となっては何の痕跡も見当たらない日向回転地ですが、山陽電車の擁壁には回転地を出るバスに向けて書かれていたペイントが薄っすらと残されています。数年前までもう少しはっきり見えたのですが、もうほとんど見えなくなりました。

山陽電車の擁壁
日向回転地のペイントが薄っすら残っています

高架下からバスが発車していく光景は垂水の風物詩で、一般乗合バスだけでなく夜間高速バスも発着する文字通り垂水のメインターミナルでした。しかし、手狭な高架下のターミナルはやがて時代に合わなくなり、2002年2月に現在のバスターミナルへと移されました。

廃線跡調査が一つのジャンルとして成立している鉄道趣味に対して、バス路線は休廃止されればそこはただの道路になってしまいます。そのせいか、「廃バス跡」の調査はバス趣味の世界でもかなりマイナーな分野なのが現状です。しかし、「廃バス跡」の調査からは忘れられ、失われてしまったちょっと昔の町の姿が見えてきます。この「山陽バスむかしさんぽ」シリーズでは、今の神戸や明石を歩きながら、かつて走っていた山陽バスと昔の町の面影を辿っていきたいと思います。

参考文献
山陽電気鉄道株式会社『山陽電気鉄道百年史』(2007年)
山陽電気鉄道株式会社『山陽電気鉄道六十五年史』(1972年)
関西図書出版社『観光と産業の神戸市住宅地図 垂水区東部 昭和40年』(1965年)


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