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お味噌汁の赤提灯/240625

出張で博多へ、仕事を終えて夕方から飲みに出かけようとホテルに荷物を置いて街を歩く。

地元の人に教えてもらった日本酒BARで気持ちよく酔っ払ってきたあとに、お味噌汁と書いた赤提灯を見つけてウキウキと吸い込まれていく。

お店はとても賑わっていたので端っこの方で飲んでいたら、着物を着た女将さんが「あんたそんなところで一人でいたら寂しかろう、ごめんね?」と話に来てくれた。

親身になって話を聞いてくれるので、ついあまえてしまい抱えている悩みをぽろぽろと話してしまう。

好きなことを仕事にできてすごいね、という言葉。20代の頃から言われ続けてわたしは生活のために必要となればいつだって今の仕事を手放してなんでもできると思ってきたけれども、がむしゃらに続けて気づいたらもう選択肢なんてないくらい今の仕事でしかわたしは働いて誰かから対価をいただくようなことはできないんじゃないかって気がついてしまって。

すでに後には引けない。とはいえ、仕事でもそうでなくてもどんなかたちにせよここまで続けられたことは写真の神様に愛されているんだと思うことにする。

自分でもこんなにしんどい気持ちだったのかと出てきた言葉に俯きながら女将さんに慰めてもらう。

帰る際お会計をしていたら、途中から入ってきたお客さんと話しながら女将さんが急に泣き出した。大好きな旦那さんが亡くなったことを思い出して泣かないように堪えてるのにぽろぽろと止まらなくなってしまい、その場にいたお客さんとみんなで抱きしめて背中を撫でる。優しい言葉が飛び交うなか、こんなに哀しみを背負ってる人にぬんてちっぽけな悩みを話してしまったんだろうとものすごく後悔する。

「また来てよう、もう絶対来ないでしょ?」なんて泣きながら言われ「いくよ、一年以内にまた福岡来るね??待っててね??」と咄嗟の約束をついつい取り付けてしまう。

温かくて優しいお味噌汁、下ばかり見て歩いたくせに川の水面に反射する街の灯りがゆらゆらしてるから暗くなかった。

約束したからには、また会いにいくからね。

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