「名前」は宇宙のように広く、海のように深いことを知った日。

久しぶりに本屋で手に取った「暮らしの手帖」。ずいぶん昔からある雑誌だと思う。奥付をみれば、今回手にとったのは498号と、なんと間もなく500号目前ではないか。雑誌の編集という仕事は知らないが、毎号、企画を立て、取材をして雑誌の形に仕上げるのは、なんて膨大な仕事量なんだろうなと想像している。

出版社の知り合いがいれば、聞いてみたいところだ。

それはさておき、特集の巻頭を飾るのは、表紙にもあった
「生きることは、楽しいことばかり」と題された読み物で、ポケット詩集でおなじみの、「童話屋」編集者の田中和雄さんの特集。もう86歳になるのだそう。

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ポケット詩集といえば、私は工藤直子さんの「のはらうた」が好きだ。小学校の教科書で知り、それ以降、カマキリをみては「かまきりりゅうじ」だと、親しみを覚えた。これまでのりゅうじくんとの出会いは数知れない。

「生きることは、楽しいことばかり」の特集のなかで、小学生への詩の教室の話がある。最初の教室は「自分の名前を知る」ことから始めるのだそうだ。

名前は詩の始まりであり、「人はみな、詩をひとつ持って生まれてくる」

キラキラネームだとか、命名ランキングとか、赤ちゃんの名づけについては話題に上ることが多い。一時期私の身の回りでは、改名する人も増えていた。(これはどんな流れだったのかわかんないけど、一時期、周りの人たちがfacebookなりの名前を変えてたことがあった)

自分の子どもにどんな名前を付けようか、世のお父さん、お母さんたちは、きっと腐心することだろう。名付け親辞典や、画数など、本やネット情報もたくさんあるもんな。

田中さんの特集を読んで、改めて自分の名前について、しっかりと考えたことがなかったなと、思う。

私の名前の漢字は「絵理」で、漢字を伝えるときは「いとへんに、会う、絵画の絵に、理科の理」って伝えている。ついこの間、大学生から「学校の授業みたい」って言われた。いわれてみれば確かにその通り。田中さんは、

あらかじめ辞典で調べておいた一つひとつの文字の意味を伝え、いいことばかりをどんどん言う。その名前をとにかく褒めちぎる。

のだそう。いいな、こんな授業受けてみたいな。きっと一生の宝物になるだろうな。

子どものころ、学校の授業で名前の意味を調べてくる、とか、名前の由来を家族に聞いてくる、という授業があった子どもたちもいるらしい。だけど私の学校ではそういった授業はなかった。だから名前について特に気にすることもなかったし、改めて名付け親(私の場合は祖父だそう)に話を聞くことはなかったし、今や祖父もあっちの世界に行ってしまっている。子どもたちの家庭環境も様々だから、そういった授業や調べものもデリケートなものなのかもしれない。

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とりあえず、手持ちの電子辞書で我が名を構成する漢字を調べてみた。

「絵」=物の形象を線や色で平面にえがき表したもの。(広辞苑)色模様。また、彩色を施してえがいたえ。(漢字源)
「会」=合わせる。増やす。寄せ合わすこと。
「絵」=色糸を合わせて刺繍の模様をつくること。転じて、彩色を施した絵のこと。(漢字源)
「理」=①物事の筋道。ことわり。②(仏)普遍的な絶対・平等の真理・理法。③中国哲学で宇宙の本体。④自然科学系の学問。(広辞苑)動植物の表面にあるきちんと整った筋目。木の木目など。(漢字源)
「里」=「田+土」からなり、筋目をつけた土地。
「理」=「玉+里」で、宝石の表面にすけて見える筋目。(漢字源)

たった一つの漢字にも、色々な意味が込められているんだな。2文字だったからいいものの、寿限無寿限無さんは、一日調べても終わらないだろう。

さて、ここで田中さんの教えを受け継ぎ、「とにかく褒めちぎ」ってみる。ちょっと恥ずかしいのだけれど、私の名前と思うから恥ずかしいのであって、全国の「絵理さん」のためだと思って、考えてみることにしよう。(ちなみに田中さんがどんなふうに褒めちぎっているのかはよくわからないので、褒めちぎりかたは自己流で)

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全国の絵理さんへ
あなたが人生の中で出会う様々な人、物事は様々な色(魅力)を持っています。あなたはその色(魅力)を、よく理解し、すばらしいチームワークを作ることができるでしょう。きっと、自分自身の色(魅力)もよくわかっていて、(わからない場合は無意識にでも)あなたの強みが発揮できる場所で、あなたは輝くことができています。難しい課題のなかで、あなたは大事なものを見極めながら、宝石を磨き上げるように、輝きを取り戻す仕事をしているかもしれません。もしくはあなた自身の人生の課題に対しても。あなたが人生をかけて作り上げるものは、きっとひと針ひと針の手間をかけた刺繍の作品のような愛のあるものや、壮大なタペストリーになるでしょう。(BGMには中島みゆきの「糸」で)

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こねくり回した感も否めないが、褒めちぎる、という目的とすれば、こんな感じだろうか。クレジットカードのサインに書く自分の漢字も、単なる名前ではなくて、宇宙のように広く海のように深い意味が込められているような気がして、愛着を感じられる。

キラキラネームと揶揄される名前だって、きっと一文字一文字をお父さんお母さんがすごく考えて名前を付けて、その漢字にはお父さんもお母さんも考えきれていないくらい深い意味があるんだ。それがどれも素晴らしい。

ぜひ、やってみてはいかがだろうか。

最後に、暮らしの手帖の表紙の見返しの部分に書いてあった一遍の言葉に納得。

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ちょうど、暮らしの手帖を読んだ後に、ぴったりのnoteの記事があったので、紹介します。すごいタイミング!だと思ったのです。



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