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田舎にあるもの。都会にあるもの。

『田舎には都会にないものが沢山ある』

というフレーズ。よく耳にしますよね。
川のせせらぎ、鳥のさえずり、新鮮な空気、鮮やかな新緑、壮大な山々の風景。

本当にこれはその通りで
旅に行くようになって、キャンプをするようになって、車中泊をするようになって、
毎度対峙する「自然」というものに年々私は魅了され、今も尚魅了され続けています。
人間の力ではどうすることもできない圧倒的面白さと恐ろしさ。
そんな自然と共存する人々や動物達との間にゆったりと流れる時間。
それはどうしたって「都会にはないもの」なのだと田舎に行く度に実感させられます。


そんな私ですが、学生時代から結婚するまでの間
友人達と遊びに行くのはもっぱら池袋や新宿などの都心がメインでした。
友人皆が電車で集まるのにアクセスが良かったことや
洋服も化粧品もなんでも揃って飲食店探しにも困らない場所であったことが大きかったです。

逆に結婚してからはメインの移動手段が電車から車バイクに変わりました。
夫が都会も電車も苦手なことや、夫婦共通の趣味がキャンプなどのアウトドアアクティビティだったこともあり
結婚後は自然が多いいわゆる「田舎」に赴くことが増え、
昔のように「都会」に行くことはめっきり少なくなりました。

さて話は変わって。
先日、前から行きたかった場所が新宿にあったため1人で訪れる機会がありました。
なので私としては今回随分ご無沙汰だった「都会」とやらに久しぶりに行く理由ができて、
昔なら絶対に感じることのなかった「都会への懐かしさ」のような気持ちを持って新宿に足を運びました。

お目当ての場所を後にして、雨が降る平日の朝。
せっかく来たのだからと西武新宿駅を皮切りに、歌舞伎町を巡り、いわゆるホスト街二丁目界隈を抜け、駅西口方面から小田急ストアがある方まで散策をしました。

久々に大都会・新宿を歩いてみて一番に感じたこと。
それは『色々な人がいる』ということ。

昼夜問わず煌々ときらめくネオン。
猥雑な看板。ごみ。カラス。殺風景な路地裏。
職種も肩書きも年齢も全てをごちゃ混ぜにした闇鍋のような雑踏を
朝のお散歩が如く歩きました。
そんなたかだか30~40分の散策でもそれはそれはもう様々な人を見かけました。

マスクをしている人。していない人。
会社に向かうサラリーマン。
全身刺青の人。
路地裏で突然パントマイムパフォーマンスを始める若者2人。
ド金髪のおじいちゃん。
普通の女子大生。
うな垂れるホームレス。
仕事終わりのホスト達。
「帰りたくない」と大泣きしてホストに宥められている女の子。
男性から多額のタクシー代を貰ってタクシーに乗り込む派手めの女性。
歌舞伎町内に突然あるバッティングセンターの警備のおじさん。
声が小さい外国人のコンビニ店員。

老若男女人間悲喜交々。
田舎では絶対に見られないほど多種多様な人々がこの街には沢山いました。
そしてそんな人たちが全てこの街に溶け込んでいる。なんの違和感もなく馴染んでいるのです。
たった今、私を含めた全員が『新宿の人間』なのです。

新宿という街の「人間」に対する寛容性の高さはどんなに自然の多い田舎とだって比べるに値すらしないと実感させられました。

緑はない。空気は汚い。時間は常に忙しなく流れている。
でもこの街にはこの街じゃないと得られない経験があります。

20代前半の頃、友人(女)と新宿ゴールデン街で飲み明かし、
バーのマスターや突然隣に座ってきた一期一会の人たちと
他じゃ話せないような深い話に華を咲かせ、
そんなこんなしてたら終電を逃し女2人で歌舞伎町二丁目のラブホテルに泊まったことがありました。

若かったので(笑)夜通しずっとAVを観てコンドームで遊んでゲラゲラ笑ってました。
あのときの「なんだか悪いことしてるみたい」という背徳感や高揚感。
そんな人間の1人や2人くらい居たっていいじゃない。色んな人間がいるんだから。と、
なんだか『新宿』という街全体に許されたような認められたような気持ちになったあの夜はやっぱり大都会・新宿でないと味わえない経験だったなと思います。

どんなに山があっても森があっても、美しい景色が眼前に広がっていても、
あんなにエキサイティングな夜は過ごせなかった。


確かに、田舎には都会にないものが沢山あります。
でも逆に都会にも田舎にはないものが沢山あるのです。
それは「豊かさ」や「便利さ」だけじゃない。
どんな人間も丸ごと包み込む街の懐のデカさはきっと都会でないと味わえない醍醐味なんじゃないだろうかとシトシト雨降る歌舞伎町を歩きながら思いました。


久しぶりに新宿に来て良かったです。

やっぱり私は田舎も自然も好きだけど、都会も好きだなと改めて実感しました。
確かに自分の中のパレットを爽やかな緑や青で埋めるのも良いけれど、
たまにはパッションピンクやショッキングイエローの挿し色を入れたくなるじゃない!
多種多様な人間から得られる刺激って自然から得られる刺激とはまた違ってすごく楽しいです。

どちらの刺激も取り入れることを忘れずに生きていきたい。
10回山に行って美味しい空気を吸ったら1回新宿でしこたま副流煙吸い込むぐらいの人生のメリハリがあった方が面白いんじゃないかな!ってぼんやり思った1日でした。

完!

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