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おすすめ詩吟①鬼滅の刃とかゴールデンカムイだとかの人たちが吟じてたやつ=「川中島」

当時はみんな知ってたヒット作

川中島 不識庵機山を打つの図に題す 作:頼山陽(らい さんよう)

鞭声 粛々 夜河を過る
暁に見る 千兵の大牙を擁するを
遺恨なり 十年 一剣を磨き
流星光底 長蛇を逸す

タイトルは「かわなかじま ふしきあん きざんを うつの ずにだいす」と読む。
今風に訳すと「川中島で上杉謙信が武田信玄にぶちかますところを絵にしてみた」とかになる。たぶん。もちろん私は詩吟教室で初めて知った。調べてみると不識庵は謙信の出家後の名前で、機山は信玄の別名だそうな、(´-`)内容は、

馬にあてる鞭の音も静かにひっそりと、上杉軍は千曲川を渡り、夜明けになってみたら、武田軍が大将旗を守って陣取っているのが見えた。実に無念だ!十年も剣技を磨いてたのに俺の宝剣「流星」が煌めく中で宿敵(長蛇は信玄の比喩)を打ち漏らしてしまった!

という感じ。
詩吟業界では定番だけど、一般的にはおそらく年配の方以外にはほとんど知られていないと思われる。しかしこの漢詩、知らんかったわと思って調べてみたら、この詩の掲載されていた書籍「日本外史」は幕末日本で知らぬ者はいないほどの空前の大ベストセラーだったし、昭和に入っても筒井康隆の小説でパロディーにされたり、少女漫画の「エースをねらえ!」にも描写があったりと、紛れもなく一般教養とか常識レベルで知られていた作品だったようだ。幕末に発行部数が30~40万部ってすごくない?
当時の文字もおぼつかないような田舎のおばぁさんまで口ずさんでいたというのだから相当だと思う。

作者の頼山陽さんも調べたらわりかしなんというか、この人の書いた「日本外史」がなければ明治維新はなかったと言ってもそこそこ過言ではない人だったんだけど、ひとまず置いておく。ともかく、幕末において「川中島」@日本外史はそれこそ鬼滅の刃並みのヒットであったと言ってもいいと思う。そして漢文・漢詩、詩吟は武士の嗜みであったので、鬼滅の刃で言うと煉獄さん。ゴールデンカムイだったら鶴見中尉とか鯉戸少尉あたりは100%確実に嗜んでいたナンバーだったはず。もしかしたら風呂に入った時に鼻歌とかで吟じてたかもしれない。そんなふうに当時の流行を妄想するのもなかなか面白いと思った詩吟でした。

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