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乾燥や熱にめっぽう強いCAM植物とは?元気な多肉植物を育てるコツをご紹介!

観葉植物を好んで育てている方でも、CAM植物(CAM型光合成)という種類があることを知らない方は多いかもしれません。
有名な植物や人気の多肉植物のなかにも、CAM植物に分類されている植物はたくさんあります。一般的な植物とは少し違ったCAM植物ならではの特徴を知ると、育てやすくなりますし、新たに育ててみようと思うかもしれません。

そんなCAM植物(CAM型光合成)とは何なのか、どのような植物がCAM植物に分類されているのかをご紹介します。


CAM植物(CAM型光合成)とは?

CAM植物とは、水分量が極端に低い乾燥した砂漠などの環境に対応するため、一般的な植物が行っている光合成とは少し違った「CAM型光合成」を行う多肉植物や着生植物のことをいいます。

CAMとは、ベンケイソウ型有機酸代謝(Crassulacean Acid Metabolism)の頭文字をとったものです。

CAM植物は午前中しか光合成をしない

CAM植物は午前中しか光合成をしない特徴があります。
主な特徴としては、以下のとおり。

  • 原生地だと日差しが強すぎて枯れてしまうため、日中は10時くらいまでで光合成を終了させる。

  • 夜のうちに気孔を開いて呼吸をする
    など

CAM植物は乾燥した気候に対応するため、まだそれほど気温が上がっていない午前中は、ほかの植物と同じように気孔を開いて二酸化炭素を取り込み光合成をしています。

しかし午前10時頃には気孔を閉じ、二酸化炭素を取り込むことをやめます。午前の早い時間にしか光合成をしないで気孔を早々に閉じる理由は、「乾燥した環境で気孔を開くことで、自らが持っている貴重な水分が蒸発し、枯れてしまうのを防ぐため」です。
気孔を閉じた後は、夜間に溜め込んだ二酸化炭素を利用してCAM型光合成を行います。

そのため、CAM植物は午前中しか光合成をしない用に進化したのです。

ほかの観葉植物・多肉植物と比べて1/10の水分量で生きていける

CAM植物は昼間に気孔を開かないため、日中の蒸散を防ぐことができ、水の利用効率が高くなります。
ほかの観葉植物や多肉植物に比べて1/10の水分量で生きていくことができるといわれており、乾燥した厳しい環境でも生き抜けるのが特徴です。

C3植物・C4植物という分類がされる

植物は光合成の方法の違いによりC3植物とC4植物とに分類されており、CAM植物はC4植物の一種です。
植物のほとんどはC3植物であり、光合成に必要な葉緑体を1種類しか持っていません。

それに比べてC4植物はC3植物と同じ葉緑体を持っているうえ、さらに二酸化炭素濃度を高める働きをする葉緑体も持っているため、C4植物の一種であるCAM植物は効率的に光合成を行うことができます。

なぜCAM植物は夜にしか呼吸をしないのか?

CAM植物が自生している乾燥ストレスの厳しい環境では、昼間は温度が高く、湿度が低いため、CO2を吸収するために気孔を開くと貴重な水が細胞から失われます。
乾燥を防ぐため、CAM植物は夜間にリンゴ酸等の特殊成分を溜め込み、昼間になるとCO2と同時に還元剤であるNADPHなどの成分を葉緑体に供給しています。
参考:一般社団法人 日本植物生理学会_CAM植物の酸素放出 | みんなのひろば

植物は通常、太陽が出ている昼間に気孔を開いて二酸化炭素を取り込み光合成をしていますが、CAM植物が自生しているのは主に乾燥している地域です。

乾燥している地域で太陽が出ている昼間に気孔を開くと貴重な水分が失われてしまうため、CAM植物は夜間に二酸化炭素を取り込んでリンゴ酸に変換し、溜め込んでおきます。
そして昼間になるとリンゴ酸に由来する二酸化炭素を、糖や澱粉位合成。水分を失うリスクを少なくするため、CAM植物は夜間にしか呼吸をせず、特別な方法で身を守っているのです。

CAM植物の主な種類

CAM植物は種類がたくさんあります。
植物に詳しくない人でも知っているようなサボテンやアロエといった身近な植物も、実はCAM植物の仲間です。

サボテン

メキシコや南アメリカといった乾燥強光地帯が原産のサボテンは、肉厚の茎や葉に栄養を蓄え、CAM型光合成を行うことによって厳しい環境下でもたくましく育ちます。

エアプランツ

エアプランツは空気中の水分を吸収することで生きている植物です。空気中の水分量に左右されて安定して水を吸収できないことへの対策として、CAM型光合成を行っています。

アロエ

主にアフリカに広く分布しており、薬用や食用としても用いられます。
アフリカのような乾燥した地域で生き抜くため、肉厚の葉に栄養や水分を蓄え、CAM型光合成を行っています。

ビカクシダ

ビカクシダ、別名コウモリランは、樹木や岩場に着生するシダの仲間です。
樹木や岩場に着生しているため、土に根を張る植物のように常に水を吸収することができるとは限りません。そのため安定して水を吸収できないことへの対策として、CAM型光合成を行っています。

ハオルチア

ハオルチアは南アフリカの限定されたエリアに生息しています。
岩場や砂漠といった乾燥した環境で強く育つために、肉厚の葉に栄養や水分を蓄え、CAM型光合成を行っています。

CAM植物を育てる際の注意点

CAM植物は夜に気孔を開く特性があるため、暗い夜の環境を作ってあげることが大切です。早く大きくなってほしいからといって昼間は太陽に当て、夜間は植物用LEDライトを当てるというようなことをしてしまうと、光合成の効率が下がって上手く育たなくなるので注意しましょう。
また、少ない水分量で生きていける植物のため、過度な水やりは禁物です。それぞれの植物に合った頻度・量の水を適度にあげましょう。
暑い地域に自生している植物が多いため、気温が5度以下になるような日は、室内に入れてあげてください。

上手にCAM植物を育てる方法

CAM植物が自生する場所と同じ環境を作ってあげることで、CAM植物が育ちやすくなります。
本来は岩場や乾燥した土地で、夕方には日陰になるような場所に自生しているCAM植物を育てるには、保水力の少ない乾燥した土に植え、夕方以降は光を当てないようにするとよいです。

夜は気温が下がることで湿度が上がる自然現象に近づけるため、気孔を開く夜間に霧吹きで葉水をし、周りの湿度を上げてあげるのもよいでしょう。水をやるタイミングも夕方がベストです。

まとめ:熱や乾燥に強いCAM植物は気軽に育てられる

熱や乾燥に強いCAM植物は、こまめな水やりも必要なく、夏の暑さにも耐えられますので、ほかの観葉植物に比べてお世話があまり必要ありません。
強くたくましい植物なので、家を空けがちだったり、日々こまめに観察をする余裕がなかったりするような人でも気軽に育てることができます。

さまざまな種類の中から自分好みのCAM植物を見つけて、日々の生活に癒しのグリーンをプラスしてみてはいかがでしょうか。

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