コロナ禍の看取り

その日は 朝から なんだか落ち着かなかった。

仕事中、ケータイが鳴ったのはお昼過ぎ、
「朝からお熱が下がりません、早めに病院に来れますか?」と看護師さんからの電話。
仕事を早退して、すぐに駆け付けると、まだ会話ができる状態だけれど、明らかに昨日とは違う。

「やばい」。
私は一瞬で理解した。

その後、だんだんと症状が悪化し、
「今日が山場です。病院に泊まれますか? 会わせたい人が居たら連絡してください」、と。

昨日まで、一緒にアイスクリーム食べてたのに、
昨日まで、一緒に塗り絵したのに、
昨日まで、一緒にいたのに。

そこから、2晩 苦しんだ。

無呼吸状態、うめく声。癌の痛みだろうか。
モルヒネは治療ではない。

コロナ禍、個室で2日間。
母と私だけ。

コロナ禍で、看取りができたことは、有難いことだと思っている。
緩和ケアのしっかりした病院を最後に選んで良かった。
入退院の繰り返し、病院も、施設も、何回も変えたけれど、いろいろな巡り合わせで、最終的には今回の病院でよかったんだと思う。

後で検索してみたら、
以前入院していた病院は「コロナ対策で面会禁止」だった。

選択肢。岐路。

あの時、私が選んだ道は間違っていなかった、と思える。
だって、導かれるように、話が進んで、今回の病院に転院できた。

だから、2日間、コロナ禍で看取りができたんだと思う。

・・・・・

悲しみと寂しさと後悔の中で、少しぐらいは「良かったこと」を見つけないと、心が持たない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?