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[読書記録]「覇王の家」上下巻(司馬遼太郎) / 石橋を叩きまくる人

愛知県は旧尾張藩と旧三河藩で成り立っています。
尾張と三河では話し言葉も違うし、わりと人の性質も違うのかも、となんとなく思って生きてきました。父は根っから尾張の人間で、母は生まれも育ちも三河です。叔父や叔母もはっきりきっぱりと「父方は尾張」、「母方は三河」に分かれています。「覇王の家」、そういった面から読み進めてもなんとなく理に適っていて面白かったです。

内容は現在大河ドラマ「どうする家康」の進みに触れることになるのであまり触れてはいけないかな、と思うのですが、ドラマの家康公の感じ、司馬遼太郎さんの解釈とよく似ていてうまく表しているなぁ、と思います。

信長公の下で「世の中にはどうにもできないことがある」と肝に銘じてからの家康公は、臆病というか動揺しやすいもともとの性格から、なんとか「計画的に慎重に」というように腹を括ってバージョンアップしたのかな、と思いました。
世の中を長い目で見て、自分の周りの者の言うことに耳を傾け、よく聞いて理解し、他所の国の上に立つ人の性格から戦況や国の形の流れがどうなるのか、どのように相手を調略するかを相手をよく見て長考して、確実に予測できる人だったのだな、と思いました。それが、全ての結果に繋がっていて、すごいです。
「石橋を隅々まで叩きまくり更にきょろきょろ周りにも気を配りながら、確実に一歩ずつ進む人」という感じです。

また、適材適所に人を送り込むのもうまいので、もし現代に生きていても、大きな会社を動かす人になっているだろうな、と思います。
会社内の会議で、部下に意見に全く口を挟まず全部言わせてから、結論を出すような経営者になったのではないかな、なんて想像したらとても面白いです。

司馬遼太郎さんは、家康公のことを「奇妙」だとか「変わっている」という感じで扱っていて、それも面白かったです。
私はなんとなく豊臣秀吉公がどうも苦手なのですが、司馬遼太郎さんはなんだかとても好きみたいだし、秀吉公のような「人たらし」であって、(一見)器が大きく、時に子供みたいにはしゃぐところが人として魅力的、と思う人もたくさんいますよね。
そういえばアナウンサーの安住紳一郎さんは、大谷吉継さんが好きだと仰っていました。大谷吉継さんのような忠臣に恵まれるのも秀吉公のお人柄なのだとなるとなるほどと思います。(ただ「覇王の家」には石田三成さんや大谷義継さんは全く出てきませんが。)

現愛知県出身の三英傑、織田信長公、豊臣秀吉公、徳川家康公は、全くカラーも違って、三者三様でやっぱりとても魅力的で面白いです。
でもやっぱり私の中のでは、基本他人を信じることができなかった「孤高の狼、信長公」がヒーローだったりします。

またこれから大河ドラマが進んでいくにつれて、「覇王の家」とは違った家康公や三河武士団の、「なるほどそうかも!」という面が見られるのが楽しみです。
(覇王の家では下巻で「小牧長久手」は細かく描写されましたが、初期の「一向一揆」はほぼ出て来ませんでした。あとちなみに「大阪の陣」もさらりとしていてほぼありませんでした。重要局面になると思うのでドラマでは家康公側からどう描かれるのかとてと楽しみです。)


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