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[読書記録]スロウハイツの神様〈上〉(辻村深月) / ハピネス三茶以来の衝撃

本棚に置いてあって、次読もう、次読もう、とずっと思っていた「スロウハイツの神様」、序盤何度も戻って人間関係を確認したり、状況把握に少し手間取りましたが、やはり辻村深月さん、期待を裏切らない面白さです。

口に出さないくらい好き、とか。簡単に名前が出せないくらい大事、とか。そういったことが人間にはある。狩野はそれを知っている。

「スロウハイツの神様(上)」辻村深月より

すごくよくわかります。人に触れられたくないほど自分の心の中で大切に思えることって、きっと生きていればそれぞれあるのだと思います。
それを大切にしている人達が住むスロウハイツ、ドラマ「すいか」の「ハピネス三茶」以来の集合住宅稲妻でした。「ハピネス三茶」は傷を持っていたり、でもそれをお互いに包みあって、包み合う時間をとても大切にしていて。「スロウハイツ」は環さんが認めた、「誰にも触れられないほど大切にしていることを持っている人」だけが住むハイツ…。

「家の名前は『スロウハイツ』にしよう。この家では、ゆっくりと時間をかけて、できるだけみんなで会話する。そしてその分、夢とか理想だとかは、手早くぱっぱと叶えてね。それで行こう」

「スロウハイツの神様(上)」辻村深月より

だけど、そこに住み続けるには自分との葛藤に勝つ強さがないといけないのだろうと思います。出て行く人は傷ついているし、出ていかれる方も傷つくし。

冒頭の事件のことを振り返るところでは胸が痛みます。

思うに人間とは、余裕のある非日常に晒された時、そこにイベント性を見出すことができてしまう生き物なのだ。単調な日々に現れたイベントに縋りつき、それに関わりたいと切実に願ってしまう。

「スロウハイツの神様(上)」辻村深月より

世間の波に乗って、人を傷つけ続けること。ネットなど顔の見えない媒体で、気が済むまで叩き続ける文化。今の時代、どこにでも、毎日ある光景だと思います。その当事者にしか分からない事実は置いてけぼりで、何もかもを知ったふうに気が済むまで罵り続ける…。そんな世界から、手を差し伸べる存在がいて、その正体が分かったような分からないような…。わー!!

それぞれに抱えているものがどうなって行くのか、下巻がとても楽しみです。


一息に続きを読んでしまいそう!

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