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[読書記録]いつもの木曜日(青山美智子) / 絵画のような一瞬

「いつもの木曜日」は「木曜日にはココアを」のスピンオフ的な作品です。誰にとっても、たいてい日々は続いていくものです。
「木曜日にはココアを」って、さまざまな人達のふとした日常のあたたかいお話の連鎖、という感じでしたが、またあの人達の優しい日々の一瞬が覗けて、ふんわりあたたかくなりました。

主人公達はかわるがわる、日々の中で人にふれあい、まわりの人の優しさや、自分の大切にしていたもの、ちょっとしたことに気がついて、それを分けてくれます。本当に一瞬のような短い時間の、丁寧に額縁に入れられた絵画のようなお話の結晶です。

本の装丁はミニチュア作家の田中達也さん(ミニチュアがとてもかわいい)、挿絵なども絵本のようになっていて、挿絵をじっくりと見るだけで、私の想像する何かがうきうきと発展するようです。

なくした何かを探していたら、忘れていた何かまで見つけ出したり。
心をやわらかくして強くありたいと願ったり。
義務だと思っていたことが、ただ「やっても良いことだった」と許可されていることだ、と気がついて肩の力が抜けたり。
足元にある宝物に気がついたり。

そういうことが詰まった一冊でした。

世の中は、どうにもならなくて、まわりを見渡すこともできないしんどい時もあるけれど、だから、優しくてあたたかくて、きゅーんとする可愛らしい自分だけの「逃げ込める世界」を自分で自分の中に作ることも、大切にしようかなと思えます。

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