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[読書記録]サラバ!(上)(西加奈子)

面白かった!気になって仕方ないことが三つくらいあるので、はやく下巻が読みたいです。

まさに遠くイランやエジプトを旅し、今も歩少年の人生を歩少年と共に見つめています。中東のお話を読んだことがほぼないことに気がつきました。西加奈子さん節に笑いながら、でも手に取るように伝わってくる熱や匂いに、リアルを感じました。

特筆すべきは、主人公歩くんの姉・貴子ちゃんの感性で、小学低学年からアンネフランクの影響をあまりに受けて、何年間もの間アンネになりきるような素振りを見せたり、エジプトでは熱心にイスラム教徒と共に祈ったり。どうなって行くのかな、と思っていたら、ああ…、という感じでした。でもこれもいいのかも。主人公以外には迷惑は今のところかかっていなそう。何よりも本人がとてもしっくり来ているようだし、特段人から金品を巻き上げたりもしていない。でもこれはこれで下巻でどうなるのかな…。

上巻最後の方に出てきた歩くんの高校の同級生、須玖くんの文化的に造詣が深い、というところの須玖くんと歩くんの会話では、

「逃げ場みたいなもんやったんかも。」
あるとき、どうしてそんなに詳しくなったのか、と訊いた僕に、須玖は答えた。
「家のことは嫌いやなかったけど(中略)。けっこう家の中が殺伐としとったんやけど、そんな中で本読んでたら、なんやろう、この世の中にこんな世界があるんか、て驚いて。家の中で本開いてるだけやのに、一気に別の世界に行けるやん。」

「サラバ!(上)」西加奈子より

この部分が須玖くんを完全に表していて、とても好きになってしまいました。途中歩くんがエジプトにいた時、大好きになったヤコブとのことをくっきりと思い出します(歩くん本人は忘れているようにも見える)。ヤコブとのことは、別れが私にはとても辛くて、胸がぱんぱんになってしまい涙が出ました。こういう描写は、自分の人生の大切な出会いと、それがどのくらい大切だったか、そしてそれを手放した時のぎゅっとした気持ちも昨日のことのようにくっきりと思い出します。
歩くんが須玖くんと出会って、とても良かったです。


どんどん読めるのに勿体無いような気持ちですが、引き続き下巻を読み進めます。

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