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5時間目 未来の授業

2月22日(木)
 山梨県中巨摩郡昭和町にある西条小学校の生徒さんへ向け、農業についての特別授業を実施させていただきました。



 この日はあいにくの天気でしたが、小学生の元気な姿に嬉しくなりました。

 地域の活動を行っている中で、今日訪問した西条小学校さんとのご縁で、農業についての特別授業を実施させていただくことになりました。


私と農業について

□長瀧)
こんにちは。
まずは自己紹介をさせていただきます。
山梨へ移り住んできて13年くらいになります。
農業を始めたのは7年前。
山梨とれたて農園という会社で野菜を作っています。
もともと埼玉県の出身で、以前はサラリーマンをしていました。

ある時に農業の仕組みに興味を持ち、その世界に入ることになりました。

みなさんの住んでいる昭和町の特産の野菜、何があるかわかりますか?

■生徒)
なす! とうもろこし! いちご!

□長瀧)
そうですね。
その三つが、昭和町で作られている特産の農産物です。

私が取り組んでいるのが、その中でも野菜メインのとうもろこしとナスです。特に力を入れているのが、昭和町の新しいブランドとうもろこしにしようとしている「ドルチェドリーム」と、特産の千両ナスです。

主に野菜を作るのに重要なことがあって、今日はそれを皆さんに覚えて帰ってほしいと思います。

農産物を作る上で必要な要素

  • 窒素

  • リン酸

  • カリ

そのそれぞれの成分が何に役立つのか。
手元の資料を見てくださいね。


□長瀧)
みなさんのお家で野菜を作っている人いますか?

■生徒)
大根! ピーマン! オクラ!

□長瀧)
みなさんたくさんお家でも作っているんですね♪

昭和町はもともと農業が盛んな町でした。
今はイオンモールがありますが、当時はそこが全て畑でした。

昭和町というところは、山梨県の中でも人口が増えている地域です。
その中でも農業は担い手不足で、若い人が少なくなっている。
その課題も感じつつ、農業を盛り上げたいという思いで今頑張っています。

みなさんの中でも、将来のお仕事の選択肢の一つになってくれたら嬉しいな。


みなさんの夢は

□長瀧)
みなさん将来の夢はありますか?

■生徒)
警察! 薬剤師! 医者。 サッカー選手! 料理人! ラーメン屋さん!

□長瀧)
みなさん素晴らしい!
やりたいことがあるっていうのが、人生一番素晴らしくて、大きくなるにつれて進路を決めるようになります。小さいうちから、自分が何をしたいかという思いを持って動いていけば、きっと夢は叶うと思います。

農業というのは、大変な面もあるけど、ぜひみなさんの将来の選択肢の一つになってくれたら嬉しいな。


まちの野菜のブランド化


□長瀧)
今日本の人口は減少傾向にあって、人口が減るっていうことは、農家で言うと野菜を作る人がいなくなってしまうって言うこと。
みなさんにも、未来に向けて人口がどうやったら増えていくかって言うことも少しずつ考えてもらえると嬉しいな。

昭和町は、今までブランドの野菜というものがなかったんです。
そこで今私たちはとうもろこしのドルチェドリームを、まちのブランド野菜にできるような取り組みをやっています。

質問たいむ1

■生徒)
なんで農業を始めたんですか?

□長瀧)
はい。
たまたま住んでいたアパートの大家さんが農家さんで、野菜を作っていました。その大家さんが私にとれたての野菜をくれて、その美味しさに衝撃を受けて感動をしたことがきっかけです。

■生徒)
なんの野菜が好きですか?

□長瀧)
僕はやっぱりナスですね。
みんなナスを食べる時に好きな食べ方はありますか?

■生徒)
味噌につけて! 味噌汁! 漬物! ピーマンとナスの炒め物。

□長瀧)
いいですね。
作って食べたときの感動があります。
食べた時に、作り手によって、野菜の美味しさが全て違います。
色々な生産者の野菜を食べてみるのも面白いかもしれませんね。


街のこと

□長瀧)
みなさん昭和町に住んでいて、こんなふうになったらもっと住みやすくなるなぁという思いはありますか?

■生徒)
たくさんお店とかがあると、お買い物がしやすくなって便利になる!

□長瀧)
そうですね。
昭和町は山梨県の中でも、人口が圧倒的に増えてきています。
その町をよくするために、みなさんの意見がとても大切です。

昭和町ではホタルが有名です。
ちょっと前では街でもホタルの育成をしていました。今でもしているのかな?
昭和町のホタルは、地域が暖かいことも関係し、早い時期の6月くらいにうまれてきます。

昭和町のホタルについて、欠かすことができないのが「杉浦健造」という人物です。

杉浦健造と、健造の娘婿である三郎の父子医師は、代々同村で開業医として地方病患者の治療に当たってきた郷土医である。
しかし、一向に減らない地方病に感染防止の難しさを感じ、この奇病を根本的に根絶するには中間宿主であるミヤイリガイの撲滅しかないと考え、ミヤイリガイの天敵であるホタルの幼虫を増やすための餌となるカワニナや、捕食動物としてのアヒルなどを飼育する施設を自宅を兼ねた医院敷地内に作り、また共に闘う他の医師たちへ金銭的な援助を行うなど、私財を投じてミヤイリガイ撲滅への活動を始めた。

やがてそれは官民一体による地方病撲滅運動に発展し、1925年(大正14年)に『山梨地方病撲滅期成組合』が結成され[5]、終息宣言を迎える71年後までの長期間にわたり山梨県民一丸となって進められた。

wikipedia

杉浦健造博士と三郎博士

杉浦医院8代目の健造博士(1866~1933年)は、地方病発症地の用水路に共通して宮入貝に似たカワニナが生息するという研究結果を発表し、「宮入貝」と「日本住血吸虫」発見の先駆者として著名です。
動物実験を繰り返し、宮入貝を中間宿主にしたセルカリアが皮膚から侵入する感染ルートを突き止めた9代目三郎博士(1895~1977年)は、米国の研究者も地方病の治療・予防の講習に訪れたという日本住血吸虫症の世界的権威です。

HP/昭和町 風土伝承館 杉浦醫院  http://www.sugiura-iin.com/


地域のこと

□長瀧)
昭和町の良さは、昔ながらの伝統が息づいているところ。町は防災に関しても力を入れています。
私も消防団に所属しています。消防団の活動は、火事がある時などはもちろん、夜間に巡回したり、運動会の時やイベントに出たりしたりします。
そんな風に町の活動に携わっています。

結局のところ農業もそうですが、お仕事や町のことは全て繋がっていて、消防団の〇〇さんって、あそこで農業していたね。とか、そんな風に町の活動がお仕事にも繋がって、お仕事が町の活動にも繋がってとか。
地域に貢献していくことが、昭和町にとっていいことなんだと思います。
みなさんが生まれ育ってきたこの昭和町を誇りに思って、一生懸命未来のためにやってもらえたらと思います。

農業のことだったら、いつでも私に聞いてもらってもいいし、みんなで山梨県昭和町を盛り上げていけたらと思うのでよろしくお願いします。

質問たいむ2

■中込先生)
はい、じゃあ今長瀧さんのお話を聞いて、何か質問はありますか?
何かあった?
はいどうぞ。

■生徒)
長瀧さんが一番お仕事の中で、難しいと思うことはなんですか?

□長瀧)
そうですね、一番難しいのは、肥料の配合と、野菜が実をどれだけつけられるかが難しいところです。
ナスだと、収穫の期間が長くて、6月から11月が収穫期間です。
大体その収穫期間で3トン〜5トンくらいとれます。その収量を確保していくことが難しいところかな。

■望月先生)
失礼します。
実は食料問題って今危機的な問題ですよね。最近テレビコマーシャルでも、食料の危機についてもやっていると思うんですが。
今後農業ってとても重要なことだと思うんですけど、次の世代が農業を志すにあたってハードルが高くないのかなぁと。
実は、僕の田舎の隣のおじいさんが亡くなってしまって、田んぼを売りに出されて。その田んぼを売って欲しいと申し出たら、専業農家で50アール以上の畑や田んぼをやっている人でないと買えないのだと教えてもらいました。仕方なくそこは宅地にして、その宅地を買って。でも宅地にしてもやることがないから、結局ダンプカーでまた土を運んできて、家庭菜園にして今野菜を作っています。


なかなかうまくできないですね。
素人ながらにやっていますが、土づくりで牛糞を混ぜたり化成肥料を混ぜたりしていますが。
そういった規制がかかっていて、農業を志しても、肝心の畑が得られなかったり。定年退職をして6年経ちますが、毎年野菜の育ち方が違ったり。
なかなかハードルが高いなぁと。
今後どんな風に転化していくのかなと。

□長瀧)
はい、素晴らしい質問をいただきました。
日本の食糧事情はとても大変なところにいます。
みなさんが食べているうちの半分はいかないかな。1/3くらいは輸入で頼っていたり。他の国で作られたものに頼っています。要するに自分たちの国で賄いきれていない。賄いきれていない理由の一つが、農家さんが減ってきているって言う事情があります。
シャインマスカットや桃は山梨は日本一の産地です。そういった果物は国内需要が高く、やり手も多い。
でも果物は贈答品ですので毎日食べるものではないですよね。栄養面でも偏りがあったり。日常的に取り入れる野菜から、色々な品目を通して栄養を摂取しなければならないと思うんです。
そういった面で言うと、農地の問題などハードルは高くなっているのは現状です。昭和町では、農地は減ってきてしまっていて、空き地は宅地になってしまうことが多い。農業をするスペース自体昭和町の中でも減ってきてしまっています。

そういった問題をふまえて、今僕たちはここだけは農業だけをやろうよって言う場所を決めて農業委員会で取り組みを行っています。
農業を始める時のハードルの高さは感じていて。農家に従事していないと土地を買うことができなかったり、土地を買ってくれたけど、農業をやってくれないなど、そういう問題はとても感じています。
耕作放棄地という問題もあって、草ボーボーの畑を見たことはあると思いますが、土地があってもやり手がいないと畑が荒れてしまう。そうするとそのまま何も作られず放棄されてしまう。そうすると生産も生み出されずにという悪循環になってしまいます。
そういった問題を解決しようと、昭和町では、耕作放棄地を増やさないように土地を借りて農家で耕していこうという取り組みも行っています。

若い世代が活躍してくれないと、農業の世界も高齢化が進んで担い手がいなくなってしまう。
だから、みなさんのなかから、未来の選択肢の一つに、農業も考えてもらえると嬉しいです。


■中込先生)
長瀧さんのお話を聞いたりして、今農家になりたいなぁと思う人、思ったことがある人はいますか?

□長瀧)
おぉ〜!

■中込先生)
やりたいと思ったことはあるけど、まだ将来やりたいとは思わない?
思うけどやらない?なんでそう思うのかな。

■生徒)
やっている人が少ないから、本当にできるのかなぁって思っちゃう。

■生徒)
汗かいちゃったり、砂で汚れちゃったり。

■中込先生)
土とか、肥料とか使うから、そういったことが大変なんじゃないかなってことですね。

□長瀧)
やっぱり自然が相手だから、汚れたりするのはしょうがないかな(笑)
でも空気が綺麗だったり、自然を相手にすることのよさもあります。

■生徒)
年を取った時に、腰を痛めたり。

□長瀧)
はい、それも高齢者の場合とても大変です。
昔は全て手で行っていました。だから、一番腰を痛くしてしまうことはおおかったです。
今では近代化も進んで、機械を取り入れることができるようになったり、AIを取りいれて、無人でトラクターを走らせたり、体への負担を減らせることも増えてきました。あとはそこに対して、人を使うのか、機械を使うのかの匙加減がとても大切。無理をするとやっぱり身体に応えるから、そこはやっぱり農業の大変な部分かな。


■中込先生)
先生のお話になっちゃうんですが、私も地元が白根町(山梨県南アルプス市)なのでさくらんぼや桃、すももなどをやっていました。農作物は24時間見ていないといけないというイメージがあるんですが、もし農家さんが会社としてやるとなると、そういった時間の管理はどうしているのですか?

南アルプス市 中野の棚田

山梨県の西側、南アルプス山麓に位置する南アルプス市は、
美しい自然に囲まれた地域です。

総面積264.14平方キロメートル、山梨県の面積の約5.9パーセントを占め、
人口は72,715人(平成27年4月1日現在)です。
南アルプスの主峰北岳を頂点とした東西に細長い形で、
冬は寒さが厳しく、夏は気温が高いという盆地特有の内陸性気候です。

富士川で舟運が行われていた頃には、信州へ至る交通の要衝として栄えていました。
御勅使川扇状地やそれに続く低地では果樹栽培が盛んに営まれ、
春から秋にかけてたくさんのフルーツが実る果樹園は、
この地域を代表する景色となっています。

南アルプス市HP https://www.city.minami-alps.yamanashi.jp/iju/

□長瀧)
時間の問題は農業は大変ですね。
野菜は毎日顔を変えます。
農業は毎日の時間割を、収穫と手入れのサイクルに合わせて自分で変えることができます。1日にどのくらいの時間を使えばいいのか。ただ収入の面を考えると、どのくらいの農地でどのくらいの収穫をすればいいのか。それを逆算することで、どのくらいの時間を使えばいいのかがわかります。
農家は頑張れば年収1000万くらいは稼げるようになります。
大変だけど、その分収入になるのが農家です。

■生徒)
野菜は、成功する確率と失敗する確率どっちが高いですか?

□長瀧)
はい、野菜は比較的成功する確率が高いです。
果物は年に一回の収穫ですが、野菜は年に最低3回の作付けができます。
そういった意味では、野菜の方が成功の確率は高くなります。

■生徒)
野菜の器具は自分で買うのですか?

□長瀧)
僕はもともとサラリーマンだったので、自分で全て買いました。
もともとお父さんおじいさんが農家の人だったら、機械などは譲り受けることができるのでやりやすいかなと思います。
トラクターなどは買うと200〜300万円するものなので、はじめて農家をする人よりは始めやすさがあるかなと思います。

■生徒)
野菜は雨の時など、傷ついてしまったらどうするのですか?

□長瀧)
はい、これも出荷の規定というものがあって、主に農協さんに出荷するものだと、これはこのランク、これはこのランクという形でランク分けされます。その中に当てはまる形で出荷するので、傷くらいの程度であれば、出荷できます。

最後に


■中込先生)
はい、みなさん顔をあげてください。
みなさん何かを食べずに生きていくことはできますか?

■生徒)
できません!

■中込先生)
できないですよね。
給食にもたくさんの野菜が入っていますが、そういう野菜や果物、お米などを作ってくれている農家さんは、一番に私たちの命を支えてくれている人だなと先生はいつも思います。
会社で働くより、身体を使ったり、天候に左右されたり大変なことのある中で農家さんはみんなの命を支えるために毎日毎日働いてくれています。
色々な不安があるけど、長瀧さんのように県外から来てくれて、昭和町のために働いてくれて、発信してくれています。

今日長瀧さんから聞いたこと、学んだことを活かして、みなさんも自分たちのふるさとである昭和町を大切にしてもらいたいなと思います。

最後に長瀧さんにお礼を言いたいと思います。

気をつけ。礼。

■一同)
ありがとうございました。


 約1時間の特別授業を行わせていただきました。
何気なく毎日口にする食べ物のことや、子どもたちが生まれ育ったふるさとのこと。知らないことや、誇りに思えること、課題など、それぞれの子たちがそれぞれの感覚で感じて、みんなの未来のために少しでも肥料になる時間になるといいなと思います。




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