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小川哲「君のクイズ」後味の悪さの良さ

直木賞作家の小川哲さん。
最近はテレビとかメディアでもよく見る気がします。宇多田ヒカルさんと対談してたのは、少し驚いたな。
「地図と拳」もそうなんですけど、文献などしっかり調べて、きっちり作る作家さんのイメージ。面白くないはずがない。

「君のクイズ」は日本推理作家協会賞をとってますね。人の死なないミステリー。いいですね。

以下、ネタバレしてたらごめんなさい。
話はクイズ番組の決勝。二人が対峙する最後の早押し問題。対戦相手の本庄は、問題も聞かずに、ボタンを押し、回答する。そして正解、優勝。
敗者の主人公、三島は、これが何故できたのかを追いかけ始める。ヤラセなのか、それとも…。

クイズを通して、主人公の人生を振り返っていく展開がおもしろい。こんな書き方があったのかと。
そして、人は誰もが経験し、積み重ねて成長し、いきていることを感じさせる。

そしてラスト、本庄がなぜ回答できたのか…
なるほど、そうだったのか、と思うけど、後味悪いな、と感じてしまう。
主人公の人生を見てきて、クイズとは、クイズプレイヤーとはこういうもの、というのを感じてしまっていたからこそ、この行為が許されざるものと感じてしまう。

だが、ルール違反ではない。
これが、今の社会の本質なのかもしれないとも感じてしまう。その皮肉な感じが、文学的には良いのかと思った。

一回のクイズ大会で優勝して、賞金をもらうのではなく、さらに先を見据えて行動する人。もちろん、努力して、考えて行動してるのでしょう。自分を上手に売り込み、キャリアアップ、ステップアップし、さらなる報酬を手にしようとする人。
他の人を踏み台にしてでも。そんなこと意識もしていないのかもしれないが。
こういう人が、成功者になりうるのかと。

その一方で、真面目に能力を磨いて生きていく、主人公タイプの人。
私はこっち側だと思う。ていうか、ほとんどの人がそうだろうと思う。
本庄のことも理解はできるが、自分には無理だと思うし、その行為は許しがたいし、でも、ルール違反ではないのだとも思うし、はい、そうだったんですね、さようなら、二度と目の前に現れないで下さいね、という感じ。

サッカーで3点差ついて勝ってるのに、終盤攻め込まないで自陣でボール回ししてるヤツみたいな感じか。勝ってる側から見ればいいけど、負けてる側から見ると、納得いかん、みたいな。
ちょっと違うかな?

それでも、日々コツコツ頑張って生きていく人が、正々堂々戦っている人が、報われる世の中になって欲しい。
甘いのかな。

君のクイズ。タイトルが秀逸ですね。
主人公三島と、相手の本庄。
それぞれのクイズに対する想い、取り組み方。
その違い。
君のクイズは、僕のクイズではない。
自分の当たり前が、相手にとって、当たり前とは限らないと言うことなのでしょう。

色々振り返って書いていたら、話が飛躍してしまいました。
ただ、面白い本であることは間違いないので、本屋や図書館で見つけたら手にとって見て頂ければと。
では、また、次の機会に!

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