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(感想とか)舞城王太郎「阿修羅ガール」

この人は、天才なのか。
舞城王太郎。
その名前は知っていたし、本を手に取るところまでは、何回か行っていたように思う。
まず、名前が、良い。何よりインパクトがある。
そして空条承太郎ぽい。と思ってたら、ジョジョのスピンオフ小説を書いてたり。

でも読んではいなかった。
そんなおり、今になってなぜ読んだのか。
それは、小川哲先生の「君のクイズ」で、舞城王太郎作品が登場していたから、なんです。
昔から、作品の中に出てくる作品というものが気になってしまう性質がありまして。
ちょっと(?)マニアックなことをいうと、アニメ「飛べ!イサミ」のガンバマンとか、「機動戦艦ナデシコ」のゲキ・ガンガー3とかが好きで、気になってしまうのです。(わかるかなー、わからないだろうなー)

もともと気になっていた作家、その作品が読んだ本に出てきた。
これはもう、運命でしかない。

そして借りてきたのが「阿修羅ガール」である。
「君のクイズ」では、違う作品が出ていたのですが、あえてこちらを選ぶのも、天邪鬼な性格だなと思うわけです。

読みました。そしてやられました。
この人は、天才なのか、と。

まず、センスが抜群。
例えば作品タイトル。「阿修羅ガール」というのもキャッチーだし、それでいて作品にマッチしている。良い作品は良いタイトルを持っているものですね。
他にも「好き好き大好き超愛してる。」なんて、どんだけだよって感じ。タイトルだけで、もう気になっちゃう。読んでないけど。

そして文体。超口語体とでも言おうか、主人公の心の奥まで垣間見えるような、一人称での語り。こんな書き方があったのか。こんなふうに書いて良いんだ、という驚き。

擬音とかすごい。笑い声というか笑い方も独特で、それだけでその人がどんな感情で笑ってるのかわかるレベル。

うまく言えないが、とにかく、全部すごいと思う。

描かれるのは一人の少女の、壮絶な物語。
性と恋、現実と心象内における残酷さ、そして悟り。
現実離れしているように感じる話なのだけど、決しておかしなことではなく、描かれたような怒りや残酷さなんてものは、誰もが持っているものなのではないのだろうか。表に出す、出さないはあるにせよ、心の中にはきっとあるはずだ。

阿修羅というと戦いの神のイメージ、そしてキン肉マンのアシュラマンのイメージ。
だが、その顔には、悔恨の顔が含まれている。ただ、戦うだけではないのだ。

阿修羅ガールは、自分たちでもあるのかと。
少なくとも心に秘めた、時に表に出てくることもあろう暴力性は、誰もがもっているもの。それと正しく向き合って生きて行くことを考えさせられたかな、と。

全然、書ききれてないな。読んで、感じてもらうしかないんだろうな、ホントは。
とにかく、傑作であることだけは間違いない。

「阿修羅ガール」は三島由紀夫賞を頂いている作品。
三島由紀夫の本、読んだことないな。
舞城王太郎の他の本も読みたいなと思う。
文体といえば、ジョゼ・サラマーゴの「白の闇」も面白かったな。グイグイ読ませるのってすごいな。「誰も死なない日」は、戸中脱落しちゃったけど。
これからも色んな本を読んで、考えて、書いて、考えて…。そんな感じで研鑽できれば良いなと思う今日このごろでした。

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