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3月23日 『ルルアのアトリエ』の体験版の話。

 『ルルアのアトリエ アーランドの錬金術師4』の体験版をダウンロードした。
 夜、あまりにも眠れなかったので。不眠症のつらいところは、眠れない時間、何をするか。何もしないものつらいで……。まあとにかく、眠れないので体験版をダウンロードしてみた、というのが切っ掛け。
 で、これを書いている今も、真夜中。眠れなくて暇なので書いている。

 とにかくもキャラクターが可愛い。キャラクターの可愛さはこのシリーズ伝統。この部分は絶対に外さない。おそらくはイラストレーターの選別にものすごい時間を掛けているのだろう(このシリーズに選ばれたことが切っ掛けで出世するイラストレーターもいる)。『アトリエ』シリーズのキャラクターがハズレだったことは一度もない。今回も原型となるキャラクターデザインがいいし、ゲーム中のモデリングもかなりのこだわりをもって描かれている。

 ただ、実際のゲーム画面を見ると、少し違和感がある。始まりとなるアーランドの辺境、アーキュリスは最初に説明される通り、かなりの田舎。少々変わったところはあるが、それを除けば普通に人口の少ない、戸数も少ない村である。そんな場所に、異様にファッショナブルな女の子が登場する。村の様子と女の子ファッションの噛みあわなさ。
 ルルアの衣装はロココ調の流れを汲むのだろうか。ファッション史についてはまったくの無知なので、よくわからない。こんな田舎にまで宮廷ファッションのようなものが当たり前のように拡散しているところを見ると、この物語の世界観は文化面で異様な発達をしているのがわかる。

 ルルアのファッション。胸元が開いたブラウスに、コルセット。髪飾りには宝石のようなものが鏤められている。非常に高そうだ。村娘のファッションには見えない。
 驚くはこの格好のまま、魔物退治などの荒事を引き受けてしまうことだ。ということは、この格好がこの世界観において汚れても破れてもOKな“普段着”の認識なのだろう。見かけとは違って、かなり丈夫なのかも知れない。

 エーファ。こんな華奢な身体だが、メインにしている武器はなんと大砲。通常技は大砲を振り回しての攻撃。特殊技で弾丸をぶっ放す。豪快!
 こういった飛躍をしれっと混ぜ合わせるあたり、日本流だ。中世世界にリアリティを持たない日本だからこそ描けるファンタジーだ。

 そうそう、大事なポイントだからちゃんと書いておこう。
 ルルアもエーファもおバストはかなり大きいほうだ。だが――揺れない。おっぱいは、揺れない。
 コーエーテクモのゲームだが、おっぱいは揺れ、ぬ!
 ルルアのおっぱいは揺れません!

 コーテーテクモというか、ガストなんだけど。
 揺れるコーエーテクモと、揺れないガスト。

 村を出て森へ行くと、水の中にパイプが通っている光景が見られる。全体地図を見ると、パイプは村まで繋がっているようだ。
 このパイプはなんだろう? 水道が完備されているのだろうか。でも村のあちこちに井戸はあるようだし……。パイプが村の水事情とどう絡んでいるのか、体験版の段階では把握できなかった(工場があるから、そっちのほうに回しているのかも知れない)。

 文化面での異様な発達、中世世界にも関わらずかなり贅沢な消費文化が辺境の村まで拡散されているこの様子。もしかすると「錬金術」の力が文化面の発達を強力に促しているのかも知れない。
 村の畑に行くと、錬金術の力で野菜が巨大に育っている光景を見ることができる。錬金術で食に対する不安が解消されていることが、この世界観において消費文化を発達させた……かも知れない。

 現実世界の話をすると、昔は牛一頭の価値が、トラック一台分にもなっていた、という。だから地方での暮らしは案外豊かだった。が、牛一頭の価値は次第次第に落ちていき、今やトラック一台を得るのに、牛を何頭も売らないといけない時代になってしまった。よく聞く話だとは思うけど。牛肉がお安く買えるようになった背景には、相応に苦労している人もいるということを忘れてはならない。
 話を『ルルアのアトリエ』に戻すと、巨大野菜のおかげで農村の暮らしは案外豊かなものになっているのかも知れない。この世界では、まだ食(第1次産業)が重要な地位にあるのだろう。

 しかし、だとしても世界観の描写と女の子のファッションの噛みあわなさ。女の子ファッションから文化面はこれくらい発達しているのだから、村の光景も同じくらい発達しているだろう……というような調整をやってほしかった。
 例えば昔の日本、地方に財閥や豪農がいた時代は、それぞれの判断でそれぞれの地域のための公共事業を勝手にやっていた。道路を作ったり、橋を架けたり、お屋敷を作ったり。昔は国が予算を下ろしてくれるのを待っていたりしなかった。
 水道が完備されているかも知れない、と考えると相応の公共事業が行われていると見るべきかも知れないが、もっと見た目で、豊かさが目に見えるような何かを村の光景の中に描いてほしかったように思える。

 具体的になにを足せばそれっぽく見えるようになるかな……。
 そうだ、遠景だ。遠くに見える風景、山に見えるところも開拓されていて、人が住んでいてそこに産業があるように作っていけば、釣り合いが取れるだろう。その世界観においては“田舎”だが、その実、かなり発展して豊かな暮らしや仕事がある、という裏付けになるかも知れない。

 さてゲームのほうは、錬金素材をあちこちで集め回って、お師匠の家に戻って大釜で何かしらのアイテムを作る。このプロセスが非常にわかりやすく作られている。
 実は『アトリエ』シリーズはごく初期の頃、一度触れたことがある。私が遊んだのは……1作目じゃなかったような気がするから、2作目だろうか。記憶が曖昧だが。その頃、『アトリエ』はちょっとわかりづらかった憶えがある。素材の収集に時間がかかったように思えるし、イベントの発生も何がフラグなのかわからなかったし、戦闘はさらによくわからなかった。
 あの時の『アトリエ』はクリアしたんだったかな……その憶えすらない。確か、次の物語がどこへ行けば発生するのかわからず、「終わったの? まだ続きあるの?」みたいな感じで終わったような気がする。
(ストーリーが完結したかどうかよくわからなかったから、クリアしたかどうか曖昧なんだと思う)
 その当時と比べると、非常に遊びやすい。村の中を気ままに歩き回って素材集め。女の子のかわいいボイスもいい(ただ、同じキャラクターのボイスが被るのは良くない)。
 ただ、こういうゲームの宿命。次第に集めるのが面倒になってくる問題。このゲームの場合、「面倒くさい」をどう回避しているのだろう? 体験版の段階で、すでにアイテム収集は面倒くさくなっていた。

 他に気になったのは、ちょっとプロセスを遠回りするところがあること。
 オーレルの仕事を引き受けた後、いろいろあって釣り竿を作り、やっと素材を手に入れて……。なんでこの順序なのだろう? 釣り竿くらい、もっと早い段階で作れるようになっても良かったような気がするが。

 体験版の段階で難ありに感じたのは、ストーリーイベント中のキャラクターアクションとカメラワーク。
 キャラクターアクションは『コミPo』のようにあらかじめ用意されているアクションを台詞に合わせて当てはめているだけ。このこと自体には問題はない。ストーリーは膨大だから、作業の効率化のためにパターンを組み合わせてみせる表現はむしろ良いやり方だ。
 ただ、同じようなアクションばかりだし、アクションとアクションの間の中割の動きが作られていない。用意されたアクションをただ並べられているだけなので、おかげで紙芝居感が出てしまっている。せめてアクションとアクションが、自然に繋がっているように感じられたら……。これ、作るのは難しかったのだろうか。
 それに、台詞とキャラクターのアクションが噛み合っているように感じられない場面がよくあった。その台詞に、そのアクション? ……というような動きが。台詞とアクションがハマっているように感じられない。
 表情についてだが、一箇所だけ、ミスがあった。ルルアがウインクするのだが、その次カット、ルルアが振り向く動きがあったのだが、ウインクしたまんまだった。チェック時に気付かなかったのだろうか。
 問題ありなのはカメラワーク。カメラの使い方が滅茶苦茶。なぜここでロングサイズ? なぜ俯瞰? なぜカメラを回転させた? ……とにかくもフレームの切り方、カメラの動かし方が滅茶苦茶。どんな意図を持ってそのフレームで切っているのか、まったく読み取れない。
 どうやら演出の素養がまったくない人が、イベントシーンのカメラ担当になってしまったようだ。変なところで人選を誤る。デジタルゲームであっても、演出の基本はアナログ映画と変わらない。基本的な心得を学んでいれば、映画だろうがアニメだろうがゲーム演出だろうが、同じように作れるはずだ。
 一番の問題……不自然極まりなかったのは、歩き、走りの動き。足の動きと地面の動きが合っていない! 歩く動きは、足が繰り出される前にすーっとキャラクターの移動が始まっているし、走る動きは地面の上をやや滑り気味になっている。歩きの足の動き、走りの足の動きと、キャラクターの移動速度が一致していない。足の動きとは無関係に、キャラクターの移動速度が決められている。歩く・走るのを止めると、足を広げている姿勢にすーっと足を移動させるのも不自然だ。
 どうして歩く・走る動きと移動速度を一致させなかったんだろう? そんなに難しい手間ではないだろうに……という気がするのだが。

 キャラクター作りにはこだわりを感じる一方、そのキャラクターを動かすこと、見せ方にはまったくこだわりを感じなかった。予算的都合、人員的都合……とかそういうのではなく、「こだわる気」がまったく感じない。キャラクターのモデリングを完了させた段階で、「俺達の仕事はもう終わった」みたいな状態だったのだろうか。むしろこういったところにこそ、こだわりを発揮させて欲しかった。
 このままだとそのキャラクターがどんな性格で何をするのか……そういったことに関心を持って物語を追いかけようという気にはならない。
 今のままだと「キャラ絵」でしかキャラクターを語ってない。別にアニメファンはキャラ絵のみで嫁にするかどうかを判別しているわけではない。物語こそ大事なのだ。

 と、体験版の段階で感じたことはだいたいこれくらい。製品版を遊べば印象はガラッと変わる可能性はある。体験版はあくまで体験版だし。
 表現・見せ方のほうで引っ掛かるところは結構あったけれども、きっとゲームの核となるところは楽しめるはずだから。そこから入り込んでいけば楽しめるゲームになるでしょう……と思う。

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