銀魂_mv

2018年夏アニメ感想 銀魂

 ついにグランドフィナーレを迎えた『銀魂』。虚との壮絶な戦いを終えて、平和が戻り、街は復興へ向けて動き出そうとしていた……。

 虚との戦いは『将軍暗殺篇』『さらば新撰組篇』『洛陽決戦篇』『銀ノ魂篇』とアニメ話数にして50回近くを使ってようやく描き終えた長大なストーリーだ(今時、これだけ長期にわたってアニメが制作され、放送されるのは珍しい)。この物語を持って、銀時が抱えていた物語――かつての「攘夷戦争」において未解決のままだった戦いにも決着が付いた。
 が、あまりにも長くて、だいぶ忘れているところがあって……。「このキャラなんだっけ?」「この話、いつから動いていたんだっけ?」「そもそも話の始まりはなんだっけ?」……と、あまりにも話が長くなりすぎたせいで、記憶がうすらぼんやり。とりあえずここまで見たから最後まで見届けよう……という「とりあえず」感。クライマックスの感動はだいぶ薄い。

 前回の感想でもたぶん書いたと思うのだけど、話が長くなりすぎた弊害で、間延びしすぎてしまっている。最初のほう何があったか忘れているし、今がどういう状況なのかわらかなくなっているし、「いったいこの人達は何を慌てて走り待っているのだろう?」と物語上に描かれている緊張感がいまいち掴みづらい。
 どうにも一つ一つの戦い、一つ一つのエピソードに引き摺られる感があって、物語全体の緊張感が欠けてしまった感がある。長々と語りすぎる。もうちょっとスマートに、必要ではないところは刈り込んでも良かった。
 物語はほぼバトルシーンばかりなのだが、その画作りもどんどん緊張感が失っている。アニメ初期を再放送で見てみると、むしろこの頃のほうが動画が生き生きしているくらい。せっかくここまで長く続いたドラマのクライマックス、最後くらいはもっと豪華な動画で見たかった。

 虚が倒され、人々は復興に向けて動き出そうとする。
 銀時も神楽も去ってしまい、1人取り残されるメガネ新八。エピローグ的な「その後」が描かれるが……これが結構長い。
 普通の物語であると、登場人物達が社会を獲得し、冒険の日々が終わること、日常への帰還がこういったパートで描かれるのだが、『銀魂』はその逆、また物語を広げてしまった(これを書いている時点で、まだアニメ最終話を観ていない)。ここが空知〈ゴリラ〉英秋の作家としての面白いところで、普通の発想なら終息に向かわせるはずのところを、何か一捻り加えてやろう、何か面白くしてやろう……と『銀魂』はそういう過剰なサービス精神で支えられた作品でもあった。
 ただ、案の定「ちょっと面白くしてやろう」から新たなエピソードが生まれてしまって、連載終了までに物語を畳みきれず……。空知英秋は自分で作ったエピソードに捕らわれ続ける作家である。一つ一つのエピソードをくどいくらいに描いて、“結”を付けないと気が済まない作家だ。結末をつけられず挫折していく作家が多い中、しぶとく漫画を描き続けてくれる。『銀魂』が本当に終わるのは、もう少し先のようだ。
 アニメの続きは……もしかしたらあるのかもね。

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