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8月映画感想 トランスフォーマー ロストエイジ

 漫画制作が一段落したので、一日のんびりと映画を見よう……Netflixで気になっていたこの映画『トランスフォーマー』を視聴する。
 前作を見たのはいつだったか……。前作『トランスフォーマー3』が2011年で、わりと早い時期にDVDで見た記憶だったから、7年ぶりに『トランスフォーマー』映画を見たわけか……。もはや、前作なにがあったのかよくわからない。

 第4作目『トランスフォーマー』はシリーズの仕切り直し作品。キャストもほぼ全て入れ替えられた作品なので、前作を憶えてなくてもだいたい大丈夫な内容になっている。
 テキサス州の田舎で、劇場に突っ込んでいるトラックをたまたま見付けた廃品回収業者のケイドがこれを自宅に持ち帰り、解体しようとすると……。こうしてオプティマスと新キャスト達が出会う展開となっている。
 物語の敵となるのは、宇宙ロボットではなく人間達。前作で大破したオートボットを解体し、分析し、再構築して量産、新たな産業を興そうとするロボット企業KSI。しかし結果的に宿敵メガトロン(ガルバトロン)を復活させてしまうことになる。新シリーズを始めるに辺り、この切り口はなかなかいいと思う。
 映画の内容については……まあ相変わらずのマイケル・ベイ映画。バランスが悪い。前半はあまり蓋然性のない対話で展開がもたつく。新メンバーであるケイド、テッサ、シェーンの紹介に時間を割くわけだが、さほど関係性が掘り下げられることもないし、後半に入るとどーてもよくなる。
 ヒロインは金髪、露出多めのセクシータイプ。これもマイケル・ベイ監督おなじみのところで、女の好みがわかりやすい。モブキャラもだいたい同じタイプの女の子ばかりなので、妙なところで徹底している。
 テキサスの田舎の荒涼とした岩山の風景とオートボットたちとの風景は意外とマッチしていると思う。岩山の上からオートボットたちが飛び降りる光景がなかなかよかった。
 ただ、新しく参加したオートボットたちに可愛げがない。チーム同士で対立、反目し続け、わかりやすいところで和解やチームワークを見せる場面があまりない。デザイン、キャラクター設計ともにキャッチーではない。いったいどのキャラクターに感情移入すれば……? という感じになる。
 新しい敵オートボットはいったん細かなキューブ状に分解し、人型ロボットにメタモルフォーゼする。この変形モーションは見る度に、「おい、待て」となる。『トランスフォーマー』シリーズは細かいところはわからないが、ロボットが変形して人型になる、このギミック感が楽しかったのだが、ついにこの快楽を失ってしまった。あのやり方ならアニメーターが工夫することなく、誰でも作れてしまう。変形モーションという見せ場が1つなくなり、がっかり感がある。
 蓋然性がよくわからないもの、といえばダイナボット達だ。何か後半に入って唐突に封印が解かれて出てきたような感じだったが……どこにいた? ぼんやり見ていたので今までどこにいた設定だったのか、よくわからなかった。
 ダイナボットたちの出自として冒頭に白亜紀の場面が描かれたが……これ必要だった? 登場したらしたであっという間にオプティマスに使役され、デウスエクスマキナのように(ロボットだしね)事態を収束させてしまう。登場の仕方があまりにもご都合主義ではないだろうか。
 モチーフもちょっとよくわからなくて、剣の形をしているのに銃って……意味がわからない。デザインの中途半端さも残念。
 前半中盤……中盤の敵戦艦に入っての、拍子抜けするような雑な警備っぷりにも驚いたが(イメージもありきたりな「宇宙人の戦艦風景」でがっかりした)、後半戦入る前に挿入されたストーリー……ここでそれまで敵だったはずのジョシュアがころっと味方になる。そもそもどうやってジョシュアの携帯電話の番号を知ったんだ? 『ファイヤーエムブレム』で「話す」をすれば敵がころっと仲間になってくれるが、あれくらいお手軽さで寝返ってくる。
 もう1人の悪役だったはずのハロルドも特にドラマもなく、あっけなく死んでしまって残念。
(ちょっと気になったのはテキサス州でのカーチェイスシーン。カットごとに光の感じが変わる。もうちょっと時間は合わせて欲しかった)
 後半戦は、違う作品の脚本を無理矢理繋げたんじゃないか、というくらいにイメージががらっと変わる。舞台は中国へ!
 まあ中国はお金出してくれるし、『トランスフォーマー』は「プロダクトプレイスメント」映画だから仕方ないかな……。
 でも中国を舞台にしたバトルシーンはなかなか痛快。中国的な風景、無節操にディテール多めの猥雑な建築をガンガン破壊するのはかなり楽しい。確かにあの風景は、特に理由もなく破壊したくなる。
 中国のやたら狭っ苦しい風景の中をオートボット達がぶつかり合い、絡み合うのだが、この立ち回りの描き方もいい。動く度になにかしらのオブジェが破壊されるわけだが、シーンとしても凄みがあるし、よくも最終的な画をイメージしながら撮影できたな……と感心。やっぱり『トランスフォーマー』シリーズを続けていて、馴れている感じがある。
 それに中国ならカーチェイスもできる。日本が絶対にアクション映画のロケ候補にならない理由だ。アクションやるなら、中国を舞台にしたほうが絶対に面白くなる。もういっそ、テキサス州のパートいらなかったんじゃないか……というくらい中国でのアクションは楽しい。
 ただたまたまエレベーターに居合わせた男がカンフーの達人って……。「日本人は全員ニンジャか空手の達人で、中国人は全員カンフーの達人だ」という漫画のセリフがあるが、その通りの風景が描かれていて笑うしかなかった。
 それで映画は、特に大きなドラマもなく、バトルシーンの連続でやっとこさ終わる。マイケル・ベイ監督はドラマに関心のない監督だから、この内容になるのは仕方ない。中国パートに入ってからは物語も何もなくなって、ただただアクション。次から次へと迫り来るデジタルスタントシーン。その過程で家族のドラマが……とくに展開することもなく、なんとなく解消されてしまっている。雑だが、むしろ潔くって良かった。こういう雑さもマイケル・ベイらしさってことで。雑すぎて安心してしまう不思議。いつもの脳筋ストーリーで良かった。

8月19日

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