ポプテピピック_13話朱雀_コンビニコント__13_

4月2日 ポプテピピック 13話&14話の感想

 私はニコニコ動画で『ポプテピピック』特別版13話&14話を見ていたわけだけど、放送する場所によって出演声優が違っていたとか……。

 TOKYOMX、BS11、AT-X、とちぎテレビ、新宿アルタビジョン 「青龍 ver.」
  田村ゆかり、堀江由衣、保志総一朗、石田彰、國府田マリ子、井上喜久子、飛田展男、島田敏
 ニコニコ動画 「朱雀 ver.」
  花澤香菜、戸松遥、山口勝平、緒方賢一、加藤英美里、福原香織、関智一、秋元羊介
 AbemaTV 「白虎 ver.」
  玉川砂記子、田中敦子、小野友樹、小野賢章、竹内順子、佐久間レイ、関俊彦、遊佐浩二
 ニコニコ動画、AbemaTV配信版 「玄武 ver.」
  花守ゆみり、東山奈央、櫻井孝宏、福山潤、小桜エツコ、横山智佐、緑川光、子安武人

 なんか大変なことになってるな。

 注目は、コンビニコントの途中で強引に挟まる『ランボー』パロディ。
 『ランボー』第1作のラストシーンを丁寧にコピーして作られている(ということはネタバレだ)。
 『ランボー』1作目は私も好きな作品で、『ランボー』は2作目以降、まったくの別作品となる。1作目はベトナム戦争後の帰還兵の葛藤を描いた名作だったのだけど、2作目以降は普通のアクション映画。第1作目に感動して、続けて2作目を見て「あれ??」となった思い出がある。
(これ『ランボー』あるある。逆に2作目、3作目のマッチョなイメージを持って1作目を見ると「え!」ってなる人もいる。『ランボー』は1作目だけ別作品だ)。

 それぞれの声優がそれぞれのやり方で『ランボー』1作目の名シーンに挑んでいる。パロディとはいえ、名シーンの再現にみんなかなり熱を入れているのが伝わってくる。
 その中でも突出した存在感を放つのが花澤香菜&戸松遥バージョンの『ランボー』だ。
 何を着ていってもファッションセンスがないとSNSで批評され、イベントでは大喜利をやらされ、ある意味「幾多の修羅場」を潜り抜けたソルジャー(声優)の苦悩を涙ながらに語り始める。

 花澤香菜といえば声優業界のトップランナーとして様々な主演、あるいは主演級のキャラクターを演じてきたわけだけど、プレッシャーを感じていないわけがない。明るいスポットライトに隠れがちな暗部が、キャラクターというオブラートに隠れながらも吐き出される。
 そうは言っても、可憐な美少女を演じてもうまい、大喜利をやらしても高い打率を叩き出す、達者な人だからなぁ……。

 まあ、そういう話は実はどうでもよくて。

 「お笑いの自己模倣はきつい」という話。
 シリアスなストーリーなら、物語の始まりから続いていくものがあるから、自己模倣していてもさほど気にならない。むしろある程度の一貫性を持たせたほうが良い。
 しかしギャグものは同じネタで笑わせていくのは難しい。笑いの鮮度はあっという間に古びていく。しかも時代と結びついてしまうので、作品がその時代に取り残されていく感じもある。
 『ポプテピピック』のように色んなパロディを敷き詰めた作品だと、よりその時代に結びつけられやすい。例えば久米田康治作品はその時代その時代の作品や諷刺を大量に取り上げるので、後で読み返してみると、ギャグとしてよりも「この時代にこんなことがあったんだなぁ、話題になっていたんだなぁ」という印象のほうが先立ってしまう。『ポプテピピック』もそういう作品の側にどうにも陥りやすい。

 『ポプテピピック』は基本的なフォーマットとしては15分のアニメを2本立て、同じ内容を別の声優で再演される。初見時は意外性で注目されたし、型破りな発想はアニメの常識を突破してみせた。
 ギャグものとは、その時代の常識感をいかに狂わせ、提唱し、それら全てを笑いというオブラートに包んでエンターテインメントとして提供できるか。『ポプテピピック』はその試みに見事に成功した作品だった。
 だがそれも今となっては予定調和だ。色んな声優が演じる、ということがこの作品における基本フォーマットとなっている。「型破り」ではなく、それがこの作品固有の「型」となってしまった。すでに過去の作品だ。

 それを、今回のスペシャル版では参加声優の人数を増やしただけ。フォーマットをお金をかけて拡大しただけのものとなっている。一番芸のないスペシャル版だった。
 声優それぞれの熱演によって確かに面白くはなっているが(特に花澤香菜さんの暴走っぷりが見事だった)、さらに一歩飛躍した面白さはなかった。悪く言えばマンネリの始まり、良くいえば定番に着地している。
 マンネリの始まりを、自身で「声優ガチャ頼み」と自嘲的に皮肉ってみせる余裕の見せ方はよかった。

 『ポプテピピック』は確かに面白い作品だったけど、これ以上やると自身が作り出したフォーマットをただ繰り返すだけ。新鮮味のない作品になってしまう。『ポプテピピック』という型どおりに作品を作り続けるのは、『ポプテピピック』という作品に相応しくない。
 そうはいっても13話&14話は面白かったけれども……。『ポプテピピック』のアニメ化は、まだ面白いと感じる今の間に終わりにして欲しい。

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