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1月4日 【提案】ゲームの対話システム

 ゲームなんかをやっていて、なんとなく気になるのが対話シーンの選択肢。
 ゲームには2つのパターンがあり、「主人公が喋るゲーム」と「主人公が喋らないゲーム」。
 問題なのは「主人公が喋らないゲーム」のほうで、最近のゲームはフルボイスも多くなっているのに、主人公だけが喋らない。その時点でなんとなくその物語のドラマに参加している気分にならない。対話シーンはどれも“主人公を抜き”で台詞のやり取りをしているような感じになり、行動選択の時だけ決定権が委ねられる……という感じだ。
 するとどうしても主人公が物語に参加している……という気分になれない。

 どうやったら「主人公が喋らないゲーム」であってもプレイヤーが物語中のキャラクターとの対話やドラマに参加しているような気分を作れるのだろうか?

 こうするのはどうだろう?
 相手のキャラクターが台詞をすべて言い終わってから次の台詞を選択するのではなく、いつでも自由なタイミングでこちら側から台詞を選択できるのはどうだろう。

 相手が喋っている間もゲージが流れていて、その中に「ベストタイミング」というものがある。そのタイミング中に台詞を選択し、返す。
 また選べる「ワード」は、時限式で少しずつ解除されていく。
 台詞を返すタイミングが早いと、相手から「最後まで言わせてくれ」と返される。遅いと「ちゃんと話聞いていたか?」と返される。
 どんな選択肢も“シチュエーションによる”ので、緊急の事態だと、相手が言い終わる前に早め早めに答えを返したほうがいい。
(ただし、選択できるワードは時限式に増えるので、早すぎるといい返事ができなくなる)
 しっとりした雰囲気の時は、少しゆっくりめに返答したほうがいい。
 その時の「対話のリズム」を考えながら、選択肢を決定していくと展開がよくなっていく。

 もしもゲームが謎解きもの「ミステリーアドベンチャー」であれば、タイミングよくベストなワードをぶつけていけば相手が証言していくし、犯人を前にトリックを解き明かす時でも少しずつロックが解除されていくワードの中から正解を選ぶ……というふうにすれば緊迫感が出るのではないか。選択肢が合っていても、台詞のタイミングが合っていなければ、立場が逆転される……みたいな感じで。
 探偵でも、いきなり推理のすべてをわかっているわけではなく、「考えながら喋る」局面もあるはずだ。それを再現するのはどうだろう。

 もう一つは相槌。相手の台詞の合間に相槌をうまく入れれば、対話の流れがよくなる。相槌のタイミングがいい感じであれば、対話が途中で終了になることなく、ずーっと続くし、さらにキャラクターとの好感度も上がる。
 しかし相槌のタイミングがおかしいと、「聞いてるの?」「聞く気ある?」と相手を怒らせてしまうし、相槌がヘタすぎると対話シーンが途中で終了になってしまう。
 相槌を打つのが難しいのであれば、無理してする必要はない。

 ゲームをやっていて、ずーーっと昔から思っていることの一つに、ゲームの対話シーンでどうしてこんなにリズム感が悪いんだろうね……ということで……。
 ラジオなんかを聞いていると、人の対話って、だいたいいつも少し「被り気味」なんだ。相手の台詞に対して間髪入れずに言葉を返す。この繰り返しがずっと続く状態が、調子のいい対話のイメージになる。
 しかしゲームの対話シーンって、基本的にページをめくらないと次の台詞が出てこないんだ。このページをめくるタイミングでどうしてもリズム感が狂わされてしまう。
 とあるゲームなんだけど、あるキャラクターの「ボケ」に対して「なんでやねん!」というツッコミ台詞がるのだけど、それもページをめくらないと台詞が出てこない仕様だった。だから、ボケがあって「…………なんでやねん!」とワンテンポ遅れる感じ(しかも、声優さんの全力の「なんでやねん!」だ)。台詞を自動送り設定にしても「……なんでやねん!」とワンテンポ遅れる。これだと面白いものも面白くなくなる。特にお笑いはリズム感は大事であって、ボケに対して「なんでやねん!」は絶対被り気味に台詞を出したほうがいいはず。
(なので私はこういうゲームの時、台詞を言い終わる直前にページをめくるようにしている)
 ゲームの作法として、プレイヤーが主体的にページをめくらないと次の台詞に進まない……とすべきだ、ということになっている。でもこれをやればやるほどに台詞のやり取りにテンポ感が喪われていく。
 ラジオを例に出したけれども、映画にしてもアニメにしても、対話シーンってもっとリズミカルに打ち合うものなんだ。ゲームだと「ページをめくる」という設定があるから全部狂ってしまう。映画やアニメを見ていて台詞のやり取りを聞いていても変な気はしないが、ゲームだとみんな変に聞こえる。リズム感が悪いからだ。「それがゲームの基本作法だ」と言われたらそうなのかもしれないけど、これ、どうにか変えられないものなのか……という気がしている。「作法だから変えちゃいけないものなのか?」……と。

 ゲームには「主人公が喋るゲーム」と「喋らないゲーム」があり、「主人公が喋るゲーム」は能動的にその物語世界観に対してコミットしている雰囲気を作れている。しかし「喋らないゲーム」はぼんやりする。最近のゲームは世界観もシナリオもきっちり作っているので、喋らない主人公は薄らぼんやりした存在になりやすい。脇役キャラクターたちはみんなその物語において、関係性を持ってやりたいことがあって、それを目指して奮闘している。きちんと“感情”を持っている感じがある。でも「喋らない主人公」は何もその世界観において物語を持っていない。主人公だけがドラマチックじゃないんだよね。なのに、なぜかキャラクター達が主人公を信頼し、慕い、重要な選択肢を委ねてくる。
 これがなんとなく違和感になる。なんでこんなにも信頼してくるんだろう……。「それが約束事だからだ」……という説明はどうでもいい。「お約束だから」じゃなくて「物語」で示して欲しいんだ。でも主人公が喋らないゲームでは、それを物語として示す機会がなくなってしまう(主人公が喋るゲームであれば、キャラクターの関係性も物語の中で示してくれる)。

 それで、今回の提案では、「人間は相手が喋っている間、何で返答しようか、考え続けている」という推測に基づく。人間は相手が喋っている間、頭にいくつか選択肢を思い浮かべているはずだ。
 だから相手が言い終わるまでの間に選択肢が少しずつロックが解除されていき、相手が言い終わる前にも答えを返すことができてしまう。現実での対話をデジタル的に示すとこうじゃないか……と。
(『サクラ大戦』の手法で、相手が喋り終わってから時間が止まって選択肢を選ぶ……ではなく、相手が喋っている間にもリアルタイムで選択肢を選べる……という感じ)
 さらに「対話のリズム」は大事。ゲームにありがちな「ページを進まないと次の台詞が出てこない」という設定も廃止。相手がボケたらすかさず「なんでやねん!」と返す。台詞はやっぱり、基本被り気味で話したほうがいい。
 それで何をしたいかというと、「主人公が喋らないゲーム」であっても、ちゃんとキャラクター達と対話し、一緒に物語を紡いでいる……という“気分”を高めるためだ。

 問題なのは、それで本当にキャラクターと「対話」しているような気分になれるかどうか……。実際にやってみると「別にそうでもない」って感じになるのかも……。
 誰かテスト的にやってみてくれないかな……?


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