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9月23日 ベトナム人に外国人技能実習生について聞いてみた

 外国人技能実習生は2017年に施行された制度で、海外から人材を招き入れ、日本で技能を学んでもらい、本国に戻った後、その技能で自国の経済発展に力を発揮してもらう……という概要の制度である。
 ところが実態は低賃金、過酷労働を押しつけられ、しかも単純労働なのでこれといった技能が身につけられることもなく、何も得られないまま帰国する人々や、低賃金がいきすぎて生活ができず、間もなくドロップアウトし犯罪に手を染める外国人を多く出す結果となっている。
 もちろん、外国人技能実習生は悪い側面ではなく、最初に提示された理想通りに実現しているケースもある。しかしその裏で「日本にやって来た外国人が犯罪者になる」問題が、社会問題化するくらいに起きているのも事実だ。
 特に、ベトナム人の問題が強く言われるようになっている。2020年のデータでは外国人技能実習生で一番多いのはベトナム人で13万人。次に中国人7万5000人、フィリピン人2万9000人となっている。
 繰り返すが外国人技能実習生はすべてが「悪」ではなく、問題が起きている側面もある……という指摘だけしておこう。

 さて、私は最近、Facebookを通じてベトナム人と交流している。
 ベトナム人はこの外国人技能実習生にまつわる問題についてどう思っているのだろう。ベトナムではどのように伝わっているのだろう……と思っていたが、なかなか聞きづらい問題なので、こちら側から切り出せずにいた。
 するとある時、彼から「日本に渡ったベトナム人が盗みなどの悪さをしているという話は本当ですか」と尋ねてきた。
 これはチャンスだ、と思って、外国人技能実習生について尋ねてみた。

 ――すると、

 彼は知らなかった。まったく知らなかった。
 というのも、ベトナム側ではそういう問題が起きていることも知らなかった。日本に渡ったベトナム人が姿を消しているという話も知らなかった。
 どうやらベトナムでは特に「問題」として知られていなかったようだ。ニュースにもなっていないし、だから情報が共有されていなかった。

 それどころか、ベトナムでは日本といえば「夢のような先進国」のイメージがまだまだ強いらしく、「日本に出稼ぎに行ければものすごい収入が得られる」とみんな思っているそうだ。みんな日本に働きに行きたい……というこれを夢として語られているという。

 そうか、実態が知られてなかったからあれだけの数でベトナム人が来るわけだ。
 ついでに、日本が30年デフレで、賃金もたいして高くないし、収入を得ても本国に仕送りできるほどの貯金はできない……ということも知られていなかった。日本が衰退し続けていることは、外国の人々には知られていない。日本は今も「夢の経済大国」という伝説で語られる国だった。
 おそらく、日本を「夢の経済大国」だと思っている国は、ベトナムに限らずなんだろうな……。

 私は日本で起きている外国人技能実習生の問題について知らせたのだが、ベトナム人の彼は驚き、私に感謝していた。

 でも彼らの日本に対する「夢」を潰してしまったな……。
 いくら事実とはいえ、「夢の経済大国・日本」のイメージを日本人自身で破壊するのはいかがなものだろうか……。


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