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ゼルダ無双 ハイラル散歩5【終】 始まりの台地

 ハイラルを巡るシリーズも今回が最終回。最終回は、はじまりの台地だ。
 始まりの台地もやってきた時、「え? ここ?」となった場所。『ブレスオブザワイルド』時代とは、まるっきり風景が違っていた。

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 カメラの高さやキャラクターとの距離感が違うから同じようには撮影できないが、かなり近い位置で撮影。
 こうして比較してみると、風景がぜんぜん違う。『ブレスオブザワイルド』時代では手前は原生林になっていたが、『ゼルダ無双』時代ではまだまだ文明が残っているし、『ゼルダ無双』時代でも森はあるけれどもきちんと管理されている。
 『ゼルダ無双』時代ではハイラル軍駐屯地の立派な建物が見え、周辺を見るとまだ緑豊かな自然が見える。それが『ブレスオブザワイルド』時代になると建物は跡形もなく消え、その周囲は鬱蒼とした森となっているし、丘の緑は逆に後退している。
 比較してみると、人間側が敗北したその後の風景がどうなるかがよくわかる。

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 始まりの台地にやってきてビックリするのは、参道がきちんと整えられていること。始まりの台地って、こうなっていたのか……と驚く。『ブレスオブザワイルド』時代は閑散としていて、時の神殿周囲以外は文明の痕跡すらなく、ひたすらに荒涼し、自然の厳しい場所だったので、そういう人間が気軽に行けないような、修行僧以外入っていけない様な場所だと思い込んでいたが、実際はまったく違う場所だったようだ。

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 参道をずーっと下りていくと扉が出てくる。位置的に「門前宿場町」に繋がっているのだろうと思われる。
 この門だ↓

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 門の大きさ、周囲の様式が一致するので、二つの門は同じものだろう。
 『ブレスオブザワイルド』時代ではこの参道はどうなっていただろう……と地図を確認すると、池になっていた。どうやら100年間雨水が溜まって池になっていたようだ。『ブレスオブザワイルド』時代は、天然の池だと思い込んでいたが、もともとは参道があったということがここで判明した。

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 長い階段を上ったところ。時の神殿が見える。まだ破壊される以前で、壮麗な姿を留めている。
 お参りに行く前に、足下を見よう。

2020121418274600-CDC2AE7C0DF626CD6D2C1766D4A1C9E9紋章の意味

 足下を見ると、トライフォースのレリーフがある。中央の文様はハイラル王家のサイン。各フォースに描かれている模様の意味は、上の通り。
 デイン、ネール、フロルはハイラル創世物語に登場する3女神の名前である。
 では3女神の名前とサインを押さえたので、参道へ登っていこう。

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 参道を上っていくと、各女神を順番にお参りできる仕組みになっている。最初に現れるのはフロルを奉っている神殿。ファサード上部分にフロルのマークが記されている。
 きっとハイラルの人々にも固有のお参りの方法があったと思うのだが、私はそれを知らないし、日本人だから二礼二拍手一礼をしよう。

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 次は日陰になっていてわかりづらいが、知恵の女神ネールが奉られている神殿だ。私は日本人なので二礼二拍手一礼をして拝む。

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 次は力の神殿だが、手前に瓦礫が崩れて入れなくなっているので、大きく回り込む必要がある。

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 やっと本殿である時の神殿へとやってくる。モンスター達を倒してお参りをしよう。ちなみに『ゼルダ無双』ではいくら拝んでも能力アップのなにかを授けてくれることはない。

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 時の神殿が破壊される前の姿。『ブレスオブザワイルド』時代では朽ち果てて、それはそれで風情があったのだが、本来はああいった壮麗で神秘的な姿だった。

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 東側から参道を見たところ。参道周辺も立派に栄えていて、いろんな建物が建っていた。かつては参拝客で賑わっていたんだろうな……と思わせる風景だ。その参拝客で麓の宿場町も栄えて、始まりの台地本来の姿がわかってくる。
 また、ハイラルの人々の宗教観も見えてくる。始まりの台地は間違いなくハイラルの人々の信仰の中心地であったが、その信仰の中心地を人工の石で囲み、区切っている。こうやって石で囲ったのは、ハイラルではああいった石が非常に手に入りやすい建材だったから、ということと、神聖な場所だから外界と遮断し、区切るというやり方を採っている。
 要するに“しつらえ”の造りだが、日本の寺院でももちろん、こういった区切り方をしている。日本の場合は建材として木が手に入りやすい立地だったから寺院の多くは木造で、そして釘を使わない高度な宮大工の手によって造られている。
 周囲と区切るのは、“ここから神聖な場所に入りますよ”という外界との遮断し、神聖さを演出することで意識の変化を促し、その宗教観に則った儀式に気持ちを入りやすくさせる効果がある。

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 鳥取県東伯郡三朝町には有名な「投入堂」と呼ばれる神社がある。日本一危険な場所にある神社とされている。あのお堂は周囲の世界を人工物で区切っていないが、区切る必要もなく、自然の世界がもはや外界と遮断する防壁となっている。投入堂までには険しい道のりが待ち受けていて、その道を進んでいくと否応もなく神聖な気持ちになっていき、あの奇跡のようなお堂を見ると手を合わせたくなってしまう。
 しかし多くの寺院ではそういうわけにはいかず、街中に聖地を作る場合、外界から遮断して、ここから神秘的な空間ですよ……というしつらえを必要になってくる。
 ハイラルの人々は始まりの台地をかなり大胆に、大規模に区切っている。これはその広い土地そのものが神聖なので、俗世界から完全に遮断するために、また軽々に人が入って来られないようにするためだろう。

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 地図を見てみると、裏手の湖が「黄泉の川」と名付けられている。『ブレスオブザワイルド』時代でみんな経験していることだが、時の神殿裏手の崖を登ると、途端に厳しい景色が待ち受けている。人々が参拝で入っていけるのは時の神殿までであって、本当に神聖な場であり、修行の場はこの裏手の山の中だったのではないか……という想像ができる。
 『ゼルダ無双』ではそちらのほうへ行けなかったが、ひょっとするとこの時代ではハイリア山にも神殿が建っていたんじゃないだろうか。修行僧達が神殿を巡り、修行の舞台にしていたかも知れない。
 どの宗教観でも、修行の過程には「死と再生」がモチーフとして使われる。自らの身体を使って死の世界に飛び込み、死と再生を経て、新しい人間へと生まれ変わり、生まれ変わることによってより高次な人間観へとシフトしていく……という概念がある。
 ハイラルの修行僧達も、裏手の厳しい自然の中に飛び込み、おそらくは黄泉の川に飛び込んで死を経験し、その後……。

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 地図を見ると「カエル池」と書かれている場所に気付くだろうか。私も自分で言っていて変な気はしているが、黄泉の川に飛び込み、死の体験をし、そのまま麓まで下りてきて、カエル池で「よみガエリ」の儀式を行う……という順路だったんじゃないだろうか。
 自分でも「なに言ってんだ?」感はあるが話を進めよう。『ブレスオブザワイルド』時代からこの辺りは聖地であろうという推測があったが、でもその中にどうして「カエル池」なんて変な名前の池があるんだろう……? とは思っていた。カエルを思わせるモチーフがあるわけでもないし、カエルの繁殖地というわけでもない。
 でも本来は「カエル池」はそういう儀式を執り行う場であったが、100年後にはそのニュアンスが間違って伝わり、「カエル池」という不思議な名前に変わって残ったのかな、ということは『ゼルダ無双』時代でも、もう絶えていた文化があったかも知れない……と『ゼルダ無双』時代の始まりの台地を歩き巡って思った……という話。

 もう一つ、地図を見ていてこれはもしかしてと思ったが、北の闘技場跡やその西の丘まで、実は繋がっていたんじゃないかな。かつてのハイラル人がこの辺りを削って建材に変えて、始まりの台地を区切られた場所にしたんじゃないだろうか。

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 北側の森の中へと入っていこう。
 一見すると自然林のように見えるが、下草がきちんと刈られて、樹幹距離が非常に広い。本当に自然のままに任せると樹幹距離はもっと短くなり、光が差し込むところはもっと鬱蒼とした藪だらけになり、気軽に人間が入っていけないくらいになる。人が入り込んで、定期的に下草を刈って管理されているのがわかる。

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 入っていくと、朽ちた建物跡を見付けることができる。この地域にも変遷があり、『ゼルダ無双』時代でもこういう残骸だけになったものがあったようだ。

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 巨大な大木は『ブレスオブザワイルド』時代でも朽ちずに残っている。アメリカのセコイア国立公園には樹齢2000年級の巨木が立っており、『ゼルダ無双』時代でもそういった巨木がぎりぎり残っていたのだろう。まだ自然保護の概念のない世界観なので、伐り倒してしまったようだが。
 こうした樹木が残っているところから、この辺りはもっと鬱蒼としていて、樹齢1000年クラスの巨木が他にもあった……ということが推測できる。  現在の始まりの台地の森は低い木しかなく、一度伐り倒され、その後再生した森だということがわかってくる。もしかすると、廃墟が残されているところを見ると、その周辺は当時は何かしらの施設で、それが絶えて現在のような森が生まれた……という流れかも知れない。

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 本来のお参りコース外れて、東側へ。高台から下を見下ろす。参道と、ガノンに蹂躙された城、デスマウンテンが見える。ハイラル城が乗っ取られる以前ならば、きっと素晴らしい風景だったのだろう。

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 巨大なハイリア湖が見えてきた。あそこは竜神の住まう湖だ。『ゼルダ無双』時代では竜神はまだ姿を現していなかったのだろうか。
 立地を考えるともう少し防備を強化するべきじゃないか……という気はしている。ハイラル城から南に位置するこの場所も、侵略者からすると「侵入しやすい場所」の一つだ。もしかすると、湖をわたった南側に砦が築かれているのかも知れないが……『ゼルダ無双』のゲーム中では確認はできず。
 『ブレスオブザワイルド』時代ではボコブリン達の厄介な砦がここにあり、元は人間達が築いていた砦が、徹底的に破壊された後、ボコブリン達の砦に変わった可能性がある。
 ハイリア湖もおそらくは竜神の住む、神聖な場所だと思われる。

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 神殿はもう一つあるようなので、参拝に行こう。

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 東の神殿跡だ。『ゼルダ無双』では中へ入ることはできなかった。
 かなり立派な神殿のようだが、何が奉られているのだろう……? 女神ハイリア、デイン、ネール、フロルそれぞれを奉っている神殿はすでに参道沿いにあった。では、この外れのほうに建てられている神殿には何が奉られているのだろう?
 うーん、気になる。『ブレスオブザワイルド』ではどう描かれていたかな……。

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 私たちには懐かしく思える白樺の林を抜けていくと、見覚えのある小屋に行き着く。残念ながら、この時代は封鎖されていて中へ入ることができない。

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 少し下りたところに、ボコブリンの拠点が造られている。100年後の『ブレスオブザワイルド』時代でも同じ場所にボコブリンの拠点があった。ボコブリン達にとって、あそこがちょうどいい場所なのだろう。

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 さて、今回で最終回の『ハイラル散歩』。『ゼルダ無双』時代の風景を巡り歩き、そこにどんな風景があったのか。『ブレスオブザワイルド』では何もかもが崩壊し、朽ちた風景ばかりになっていたが、本来はもっと栄えていて、人々で賑わっていた。『ゼルダ無双』はある意味、『ブレスオブザワイルド』で喪われた歴史を巡る旅をする機会を得た作品であった。

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 しかし、実は私が『ブレスオブザワイルド』をプレイしたというのが3年前……。こうやって巡り歩いても「あれ? こうだっけ?」というところが一杯あった。『ブレスオブザワイルド』で見た風景をほとんど覚えていなかった。
 ほとんど記憶になかったから『ゼルダ無双』での始まりの台地を見た時、参道を見て「え? こんな痕跡残ってたっけ??」となった。
 そういうわけで、これからもう一度『ブレスオブザワイルド』を再プレイしようか……と考えている。『ゼルダ無双』で撮りためた風景と同じ場所を巡り、どれだけ風景が変わったのか、比較検証しようか……と考えている。
 それに『ブレスオブザワイルド』はコンプリートクリアしておらず、それがずっと引っ掛かりだった。これは『ブレスオブザワイルド』でのハイラルを訪れるいい機会なのではないだろうか。
 そういうわけで、もしかしたら1年後くらいに再び『ハイラル散歩』というブログ記事を上げるかも知れない。ただし、そちらは『ゼルダ無双』篇ではなく、『ブレスオブザワイルド』篇となる。

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