5月12日 日本のゲームって本当に世界から嫌われていたのだろうか?

ファミ通.com:海外市場での日本のゲームの復活について、クリエイターはどう捉えているのか? 9人の関係者が考えを語るドキュメンタリーがYouTubeで配信中


 日本のゲーム作家へのインタビューで構成されたドキュメンタリー。もの凄く面白い。見る価値はある。

以下、すべて妄想話です。

 ところで、私は言うほどコアなゲームプレイヤーではない。ご存知だと思うけど。PS3期前後の数年間、ゲームハードを持っていない時期があったし、その後も貧乏でしかも忙しかったというのもあって、ちゃんとゲーム機を買えてないし、話題のゲームもプレイできていない。そういうわけで私のゲーム史には空白期間があり、空白期間に起きたできごとについて、自分の体験史として語ることができない。
 それでも、まあ漠然としたもので、PS3以降、日本のゲームが売れなくなっていって、その間隙にスマートフォンゲームが隆盛して、そのスマートフォンゲームも数が増えすぎてレッドオーシャンからブラックオーシャンへと瞬く間に染まり、その後、コンシューマで和ゲーが復権した……みたいな流れは把握している。
 その和ゲー復権の流れがここ2年ほど急に起きた……という印象があって、正直なところ「なんで??」みたいな印象はある。
 何が切っ掛けで? その以前の和ゲーといったい何が違うの??

 それで、ちょっと思い付いたのだけど、「和ゲーが受け入れられなくなった」という話、ひょっとしたら日本人の勘違いだったんじゃないかな……という気がして。日本人が勝手に「日本のゲームは受け入れられなくなった」と思い込んで、それで日本人らしくないゲームを作ろうとして本当に売れなくなった……みたいな話だったんじゃなかろうか。
 根拠や証拠があるわけじゃないけど。実際の数字を探せば、私の考え自体が勘違いだった……ということになりそうだけど。

 ここ2年ほど、急に海外からの声……海外ユーザーや海外クリエイターの声みたいなものがメディアに乗るようになり、目に付いたものはだいたい全部読んでいるのだけど、多くの海外ユーザーが日本のゲームを素直にリスペクトしている。日本のゲームタイトルを次々に上げて、「あのゲームは素晴らしかった」「あのクリエイターはいい仕事をした」と賞賛する。
 そんな海外ユーザーが取り上げるタイトルの中に、意外なくらいJRPGが多い。JRPGはずっと「海外では受け入れられない」と言われ続けていた。数年前までは海外ユーザーがいかにJRPGを嫌っているか、いかにJRPGを憎んでいるか……その憎みしみっぷりがゲーム雑誌で紹介されているのをたくさん見たような記憶がある。(今にして思うと、あれはずいぶん誇張された憎悪だったんだな……)
 でも最近のインタビューを見ると、好きなゲームとして『ドラクエ』や『ファイナルファンタジー』、『クロノトリガー』『牧場物語』を挙げる人もいる。なんだ、JRPG好きじゃん。

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 JRPG代表格『ドラゴンクエスト』シリーズは海外では人気はない。海外版『ドラゴンクエスト』こと『ドラゴンウォーリア―』が海外でコケた……という話は事実。
 しかしその後、PS2『ドラゴンクエスト8』はヒット。これに続いて、ニンテンドーDSで『ドラクエ4・5・6』がリリースされ(『ドラゴンウォーリア―』ではなく『ドラゴンクエスト』というタイトルで)、こちらもヒット。特に『5』は大絶賛されている。
 日本ではずっと「ドラクエやドラクエ方式のJRPGは海外では売れない。日本人にしかわからない感性だ」と今でも言われ続けているが、実はちゃんと受け入れられていて、商業的成功していた。
 アニメルックのスタイルも「日本でしか受け入れられない!」と言われているが、実はその逆。『ドラクエ』のキャラクターデザインをした鳥山明作品『ドラゴンボール』は世界規模で大ヒットしまくっていて、受け入れる土壌ができあがっている。『ニノ国』のような作品もヒットしている。「海外ユーザーはアニメルックを理解しない」という事実はない。

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 インディーズゲーム……私は多くはプレイしていないが、そのいくつかをプレイしてみたところ、「このデザイン、あのゲームが元ネタじゃないか?」とか「このキャラクターの挙動、あのゲームでも見たぞ」と思うところがたくさん。日本のゲームから影響を受けていないはずがない。
 海外では「メトロイドヴァニア」というジャンルが好まれている。『メトロイド』と『キャッスルヴァニア』を組み合わせた造語だ。その「メトロイドヴァニア」のゲームを見ると、『キャッスルヴァニア』をまんまコピーしてキャラクターと世界観を変えただけじゃない……みたいな作品が大量に作られ、受け入れられていたりする。

 そのインディーズゲームのクリエイターに「好きなゲームは?」と訊ねると、日本のゲームが次から次へと出てくる(日本のメディアからの質問だったから、気を遣ってくれたのかも知れないが)。尊敬するクリエイターも、ほぼ日本人。海外のクリエイターは日本を軽視している、誰も日本を相手にしていない……そんなことはなかった。

【UNDERTALE含む外国人クリエイター6人の証言】海外大ヒットインディーゲーム開発者は“和ゲー”を心底愛している──影響を受けた日本のゲーム、尊敬する人は?

 海外のプレイヤーもクリエイターもみんな日本のゲームをずっと愛していた……。

 もっと具体的な根拠を示すべきだとは思うけど、まあ今はこの辺で。ちゃんと調べている余裕もないし。日本のゲームが受け入れられなくなったのは、日本人側の勘違いと、勘違いによって作りだした状況じゃないだろうか……とだんだん思うようになっていて。国ごとの詳しいデータとか持ってないので、強く言えないけど。
 日本側の変化もあったと思う。国内の不況とライフスタイルの変化……。ゲームに相当するライバルが一杯出現した。その辺りも気分として影響しているかな。
 方向転換してより駄目になって、スマートフォンゲームに浮気して、そっちも駄目だったから元の場所に戻って以前のようにゲームを作りましょうか……ってやったら世界でヒットした……みたいな感じだろうか。
 もともと海外展開をあまりやっておらず、データもあまり作っていないところに『グランドセフトオート』みたいな大きなタイトルが出てきて……みたいな感じだったのかも知れない。もともとゲーム市場は国内でだいたい自己完結していた……という話も聞く。
 原田勝弘さんは2000年代以後、徹底した市場調査を行った……と語っていたが、逆に言えばそれまで市場調査をしていなかった……ともいえるし。
 情報の読み方と発信の仕方。海外ユーザーがどのように感じているか読み取り、海外向けへきちんとローカライズしたこと(『ドラゴンウォーリア―』の失敗って、ローカライズの問題だったようだし)。海外に向けてプロモーションをしたこと。このあたりをきちんとしたことも関係しているかな。「ドラクエがヒットしていたなんて知らなかった」ではなく。

 ところで、この間なんとなく買ったファミ通(No1531)には『海外で愛される日本産ゲーム』という特集が組まれている。
 その一つを抜粋すると、

〈引用〉
Moe. I love moe.
〈引用ここまで〉

 「萌え」……すでに受け入れられる土壌ができあがっていたのか。
 あ、似たような意見多数です。
(「Kawaii」の言葉は見付けられず。「Kawaii」って本当に欧米で使われてるの?)
 ずいぶん前に、『オタク・イン・USA』という本を読んで、そこでは「外国人には萌えが理解できない」と書かれていた。それで結局、外国人ユーザーが下した結論は「萌=児童ポルノ」だった。それ違うよ……と思っていたが。あの頃よりもアニメは浸透していて、「萌」も受け入れられるようになっていたんだな。
 そういえば、『らき☆すた』の泉こなたイラストを描いたとき、真っ先に反応したのは外国人だった。『メディバン』というサイトにイラストを発表すると、やたら外国人がコメントを付けてくるし。
 「萌えアニメは外国人には理解できない。萌えビジネスは日本だけで自己完結する文化だ」と今でも言われてるけど、日本人だけが知らないだけで、実は意外なくらいに世界中に拡散されているのかも知れないよ。「○○は海外では受け入れられない!」と決めつける前に、「本当か?」と調べてみてもいいかも知れない。
 Steamで「日本スタイルのテキストアドベンチャー」が欧米で売れている……という話も出てきているし。もちろん「アニメ絵美少女」が出てくるやつ。さんざん「アニメ絵美少女ものは日本でしか受けない!」と言われ、今でも言っている人は多いけど、実際はだいぶ売れはじめている。ここまでくると、今までは真面目にローカライズをやってこなかったからじゃないか……みたいに思う。(『ファーストガンダム』がまさにそれだったが、翻訳がクソだった)
 「日本のアニメは海外向けには売れないから、キャラクターをディズニー風に描こう」みたいな勘違いをやって大失敗……なんてやっちゃたら間抜けだよね。ゲームでは近いことをやったみたいだけど。

 と、いう思いつきを勢いでざーっと書いてみたけど、実際はどうなんだろうね。

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