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ゲーム感想 ヴァンパイアサバイバー

 とあるYouTube番組で、「よゐこ」の2人があまりにも楽しそうに遊んでいたので、買っちゃいましたよ、『ヴァンパイアサバイバー』。500円だったしね。

 すでに色んな媒体で紹介されている作品だから、もう知られているかと思うけど、本作の基本的な仕組みを説明しよう。攻撃はオートで、操作はほぼ十字キーのみ、30分間生存できればステージクリア……というシンプルな構成だ。ここからさらに付け足すものが何にもない。
 構成要素が少なくて面白くないんじゃないか……と思われそうだけど、やたらと面白い。つい繰り返し遊びたくなってしまう。30分で終わるゲームなのに、気付けば数時間……という妙に中毒性のある作りになっている。そこで「よくできているな」と感心すると同時に、やっぱり構成要素が少ない、低予算の作品だから物足りなさもある。そういう微妙なもどかしさを含めて、よくできた1本だといえる作品だ。

 『ヴァンパイアサバイバー』の感想文の前に、作品についての情報に触れておこう。
 インディーズゲームだから「最初に作品が出たのはいつか?」というのはちょっと難しいが、Steamにて2021年12月17日に早期アクセス版がリリースされた。Steamでは開発途中のバージョンを公開し、テストプレイしてもらう……という文化があるので、世に出たのはこの頃だけど、最初のバージョンというのとはちょっと違う。ただ、この時点ですでに「面白いぞ」ということでネット上に拡散され、評判になりはじめたところで満を持して2022年10月21日に正式版がリリースされた。
 発表されてからの評価はすこぶる高く、Steamを確認すると、現時点で「圧倒的に高評価」が21万2796レビューとなっている(2024年2月2日確認)。
 ダウンロード作品だから売り上げはいくらか……というのはよくわからない。Steamをはじめ、家庭用ゲーム機、モバイル版と次々に発表したが、どの媒体でも大ヒット。Steamでは同時接続プレイヤーは4万人越え。モバイル版は配信1週間100万ダウンロードを達成し、その後勢いがほとんど衰えずロングテール化している。発売から1年以上経った今も勢いが衰える気配がないので、この1作でとんでもない金額を稼いでいるのは間違いない(数億円は確実と言われている)。
 あまりにも高い人気を受けて、アニメシリーズ化の企画も立ち上がっている。制作会社はStory Kitchen。『ジョン・ウィッグ』の脚本家デレク・コルスタットや『ソニック・ザ・ムービー』のプロデューサー、デミトリ・ジョンソンらが所属する会社だ。
 アップデートは今も続いていて、ごく最近『Among Us』とコラボした新しいステージが公開されたし、「アドベンチャーモード」なるものも追加された。
 もはや新しいゲームジャンルの一つとして認識されるようになり、本作に模したフォロワー作品が次々と生み出されている、という状況にもなっている。
 まさに飛ぶ鳥を群体規模でまとめて全部打ち落とすくらいの勢いで評価と売り上げを伸ばしているオバケタイトルである。

すべてのアンロックをコンプリート!

 私も始めてみて、すぐに虜にだった。面白い! 毎日ひたすらえんえんプレイ。追加ダウンロードコンテンツも購入し、あっという間に196あるすべてのアンロックを解放してしまった。そうさせてしまうくらいに夢中になっていた。この時点で「500円では安すぎる!」というくらいの商品価値があるといえる。

 では珍しく「攻略情報」を載せよう。この作品の場合、こういう話をしたほうが「どんなゲームか」が伝わりやすかろう。


お気に入りの武器は決めておくべし!

 このゲーム、武器種がかなり一杯あって、どの武器もレベルを上げればそれなりに強力。しかしゲームを始めてから「どれにしようか……」とか言っていると、どーでもいい武器を選んでしまいがち。どの武器もレベルさえ上げれば強力、とは書いたものの、相性の悪い武器もあって、例えば同じ方向を攻撃する武器ばかり選んでしまうと、その武器が攻撃しれくれない方向が手薄になってしまう。
 私のお気に入りはこちら。(どことなくベヨネッタさんを彷彿とさせる)プニャーラ・プローヴォラというキャラクターが使う「4丁拳銃」。見ての通り4方向に攻撃してくれるので、いろんな方向からやってくる敵に対応できる。パワーアップさせるとほぼ全方向攻撃をやってくれる。ただし武器の威力自体は弱い。弱点はあるが使い勝手が非常にいいので、私はまずこの武器を選択する。

 大事なポイントがこちら。ゲーム中ではレベルアップ時に武器と補助アイテムが選択できるのだが、実は「組み合わせ」というものがある。例えば「ムチ」と「ハートの器」の2つを取得して武器レベルを最大まで上げると、【上級武器】が手に入る。
 こういう組み合わせもあるので、どの武器・アイテムを選ぶかは、慎重にならねばならない。ゲームを始める前から「これとこれを選ぼう」と決めていると良い。

 次に画面の左上を見てみよう。6マス×2段の欄がある。これは上が武器で、下が補助アイテムとなっている。欄が6マスということは、選択できる武器が6種、補助アイテムが6種となっている。
 ただし――実は例外がある。フィールド上には武器・補助アイテムが置かれている場合がある。通常、武器・補助アイテムはレベルアップ時に選択できるのだが、フィールド上に置いてある武器・補助アイテムはそれとは無関係に手に入れることができる。
 重要なのはここから。レベルアップ時に武器・補助アイテムを選択し、空欄を全部埋めた後、フィールド上のアイテムを採ると「7つめの武器」として獲得できてしまう

 こんな感じだ。
 まずレベルアップさせて、アイテム欄全て埋める。その次にフィールド上のアイテムを取りに行く。これをやると、通常のプレイよりも多くの武器を所有できる。


引き寄せのオーブは取っておけ!

 選ぶ武器・補助アイテムはなにを選んでもいいのだけど、絶対にあったほうがいいのが「引き寄せのオーブ」。これを持っていると、地面に散ったアイテムが近付くだけで磁石のように吸い付くようになる。この引き寄せのオーブを持っていると、敵に四方八方囲まれている状態でも経験値の回収ができて、戦いながらのレベルアップもできるようになる。この引き寄せのオーブがあるかどうかで、クリアできるかどうかも変わっていってしまう。だからこれだけはまずはじめに選択しておきたい。


宝箱は積極的に取りに行け!

 武器・アイテム選択はレベルアップ時しかできないのだが、宝箱を取ればそれとは無関係に、いま持っているアイテムをレベルアップさせられる。
 さらに武器レベルが最大まで上げた状態で宝箱を取ると、上級武器を手に入れることができる。補助アイテムのレベルアップは後回しにして、まず武器のレベルアップを最優先にし、宝箱を取って上級武器を獲得。補助アイテムのレベルアップはその後からでもよい。

 プニャーラ・プローヴォラの上級武器は、四方八方に向けたレーザービーム。さらに斧の上級武器も足しているので、全方向へ隙無く攻撃してくれている。ただし、これはやや威力低め。体力の高い敵はこちらの攻撃をかいくぐって迫ってくる。全方向に対応できるけど威力低め……しかしこういうゲームの場合は非常に重宝する。


キャラ強化すべし!

 実は初期状態でゲームをクリアするのはほぼ不可能。ゲーム中でコインを獲得し、それでキャラクターを強化していかなければならない。キャラクターを強化していけば、ゲームをスムーズにこなしていくことができる。
 逆に、なれてきたら強化したものを封印し、縛りプレイ……ということもできる。


リザルトを見るべし!

 注目すべきなのは、リザルト画面の左側。各武器のダメージポイント。これでそれぞれの武器がどれだけダメージ数を稼いだか表示される。ここを見ると、どの武器が強力なのかがすぐにわかる。
 例えば4丁拳銃は全方向に対応してくれるので非常に便利だが、威力は低い。強敵に囲まれると対処できない。ダメージ数を見ると実はさほど稼げてないことがわかる。その一方、聖水は一見すると使い勝手が悪いように感じるが、レベルを上げていくと威力は最強だとわかってくる(使い勝手の悪い武器ほど、威力が高い……という法則がある)。そういう武器の強い・弱いがここを見るとわかってくる。
 威力が低いが全方向対応武器と、威力が強力だがやや使い勝手の悪い武器を組み合わせるとちょうど良くなる。自分なりのベストな組み合わせを考えてみよう!


アルカナを蒐集すべし!

 ゲーム中には「アルカナ」と呼ばれるカードがある。これを少しずつ集める……というのもゲーム中重要なミッションとなっている。これを集めると、ゲームを有利に進める特殊能力を付与できる。
 私のお気に入りは「ジェミニのカード」。対象の武器と同性能の武器を入手、とあるが、4丁拳銃の場合、撃てる弾数が2発ずつになる。ほぼ威力2倍だ。

 もう一つのお気に入りカードは「狂乱の調べカード」。これを選択すると、2分おきにフィールド上に散っているアイテムが一箇所に集められる。先ほどフィールド上には武器・補助アイテムが配置されている、と書いたが、これも一箇所に集めてくれる。こちらから回収しに行く手間が省ける。
 アイテムを取りに行くのが面倒、時間がかかる……というときはこのカード。一発ですべて一箇所に集めてくれるので非常に便利だ。

 ここまでの話で、『ヴァンパイアサバイバー』がどんなゲームか、だいたいのところはわかってきただろう。次に「引っかかりどころ」を書き出していこう。


マップが単調!

 ご覧の通り、平凡なパターンマップが無限に続く。目印みたいなものもない。取りこぼしのアイテムとか、マップに表記されるのだけど、目印も何も無いから自分がどれだけ歩いたかすらわからない。砂漠を歩いているような感じだ。
 いろんなステージが用意されているけれど、基本的にはアセット(絵)が違うだけで、ステージ内容はだいたいみんな一緒。アンロックという目的がなければ、わざわざ全ステージ攻略しようという気にもならない。
 追加ダウンロードコンテンツはマップにこだわっており、ステージごとにテーマがきちんとあって、探索もできるような内容になっている。エリアごとに登場するモンスターが違う……ということもやっている。ステージ作りにこだわりはじめたのは追加ダウンロードコンテンツになってから、といえる。


カーソルをよく見失う!

 まずこの画面を見て、一瞬でどこを選択しているかわかるだろうか? ゲームをやっている間、「あれ? カーソルどこだ?」という瞬間がよくある。プレイ中は直前の動きが影響するので、カーソルがデフォルト位置にないということもよくあり、そこでカーソルを見失う。
 自分が選択しているアイテム以外はグレーを50%足すとか、そういった工夫が必要だった。


何が起きているかわからない!

 大勢の敵に囲まれ、乱戦状態になると、何が起きているかわからなくなる。例えば、アイテムドロップしても気がつかない。なにか取得したらしい……でもエフェクトも何もないから何を取得したかもわからない(音で判別できるものもあるが)。
 作りが雑。例えばアイテムをドロップしたとき、そのアイテムにふさわしいエフェクトと音を載せたほうがいい。そういう作り方をしていないから、大量に敵が出てきたときなど何が起きているかわからなくなってくる。

 例えばこういう状況。大勢の敵に囲まれていて、それでも順調に攻撃を繰り出しているから大丈夫だろう……と思ったらいつの間にか接近されて、いつのまにかダメージを削られて、いつの間にか死んじゃった……という瞬間。
 こういう、懐にふっと飛び込まれたとき、何かしらのエフェクトの発生や、カメラのズームとか、そういうものがあれば気付けるのだけど、そういう配慮すらない。一応、ダメージを喰らったときのサウンドはあるんだけど、混乱状態の時はそれすら気付けない。


後半20分くらいからの展開が単調!

 このゲームの最大の引っかかりどころがここ。30分生存できればゲームクリア! ……なわけだが、後半20分くらいで展開が単調になる。というのも、20分目くらいでだいたいの武器レベル上げが完了し、展開もただ敵の大軍隊がわーっと攻めてくるだけの内容になるから。なんだったら、コントローラーを置いていてもクリアできてしまう。引き寄せのオーブを持っていると放っといてもレベルアップしていくので、わざわざキャラクターを動かさなくてもよくなる。
 後半20分くらいになると、仕掛けとしても「大群衆で襲う!」くらいしかなくなるので、どうしてもゲームが大味になりがち。しかしゲーム自体がシンプル構造なので、20分くらいでゲームの目的を概ね達成できてしまう。逆にいうと、20分くらいまではしっかり面白いゲームになっているので、20分くらいで完了……がちょうどよかったのではないだろうか。


日本語翻訳が変

 細かいところだけど、日本語翻訳もちょこちょこおかしい。翻訳がおかしいというのは海外ゲームでありがちなことなんだけど……。
「狂気の森の反対でレベル80に到達する」「反転した象牙の図書館でレベル80に到達する」「インバース・ガロの塔でレベル80に到達する」
 ……表記が安定しないけど、全部書いている内容は一緒。「狂気の森『反転』でレベル80に到達する」が正しい説明。
 だいたいの場合は「こういうことかな?」とすぐにわかるけれど、中には「これはどういうことだ?」と解読が必要なものもある。
 翻訳が大変なのはわかるけど……。こういうのはなかなか解決しないな……。

 と、引っかかりどころを書き出してみたけれど、だからといって面白くないわけではない。むしろ非常によくできていて、もしも「制作費がない」「制作期間もない」という状況下で「面白いものを作れ」「売れるゲームを作れ」という課題があったとしたら、本作は商品として100点満点中5000点くらいといえるくらいの内容だ。なぜなら500円で値段以上に遊べるし、この1本で数億円も稼いだのだから。
 Wikipediaによると、キャラクターやマップパターンなどのアセット、音楽などにかけた予算が17万円とある。もちろんこれが制作費の全額ではなく、エンジニアを雇って制作にあたったために人件費/日数がかっているわけだが、それを含めたとしても制作費100万円は超えないはず。100万円/1年の予算でここまで面白く、しかも数億円の売り上げを出せた……これだけで大成功の作品なのは間違いない。

 後半の展開が単調……とは書いたものの、前半・中盤までの展開が実は意外としっかり練られている。最初は倒しやすい敵が出てくるが、じわじわと倒しにくい敵が出てきて、次に初期装備ではほぼ倒せない敵が出てくる。そのウェーブが終わると、今度は倒しやすい敵が大量にワッと出てくる。それが終わると、また倒しにくい敵がじわじわと数が増えてくる……。こんな感じに、「どんな敵をどのタイミングで出してくるか」というところはきちんと練られている。
 このゲームの説明で、「敵はランダムで」「ローグライク」と表現されがちだが、実際には「出てくる敵のパターンや数の多さ」はきっちり手付けで丁寧に作られている。このバランスがよくできているから心地よい。
 最初は倒しやすい敵ばかりで、「気持ちいい」感じさせ、次に倒しにくい敵が出て、「難しい」と感じさせ、さらにその後倒しやすい敵が大量に出てきて一気に爽快な気分にさせ、また倒しにくい敵が出てストレス負荷をかける。こんなふうにストレスと緩和の波が後半に向けて少しずつ大きくなる……という作りになっている。この波が非常に心地よく作られている。このタイミングこそが本作の肝だといっていい部分。これがよくできているから「もう1回」と遊びたくなってしまう。
 このゲームは初見時にはほぼクリア不可能なゲームになっていて、少しずつキャラクターを強化してクリアを目指す……という構成になっている。最初の頃はまずクリアまでが難しいのだが、ゲーム全体の難易度に波が作ってあるから、これが「もうちょっと頑張ればクリアできるかも」というモチベーション維持になっている。強敵が出てきて難しい、という局面をくぐり抜ければザコ敵がわーっと出てくるシチュエーションが来るので、強敵フェーズさえ乗り越えればいけるぞ……最初はそうやって攻略法を練るように作られている。やはり「うまくできている」と言える。
 ただ引っかかりは後半、武器レベルが最大になった後はやることがなくなってしまう……ということ。武器レベルが最大になった時点で、ゲーム攻略が完了してしまっている。やはりそこで作り込みが浅いと言わざるを得ない。
 ゲームが非常にシンプル構造なので、「展開ある仕組み」は20分くらいが限度。あとはただ敵モンスターの大量投入くらいしかやることがなくなり、展開が単調になってしまう。ゲーム構造上の弱点を乗り越える、もう一段上の仕掛けがない。もしもここを乗り越えていたら、ゲームとしても100点満点だったかも……といえる(商品としては5000点だけど、作品としては……)。

 細かいところで雑。詰めが甘い。もうちょっとエフェクトやサウンドに気を使って欲しい。現状だとなんのアイテムがドロップしたのか、なんのアイテムを取得したのか……そういったものがよくわからない。音やエフェクトでゲーム中の変化を知らせる仕掛けがない。ほぼ1人で作ったから、こういうところは仕方がない……とはいえるのだけど。
 次は動画で紹介。動画の投稿はできないので、ツイッターに投稿した動画を。

 ゲーム終盤……いったい何が起きているのやら。物量だけでゴリ押しするから、ゲームが大味になるし、大味も行きすぎるとなにが起きているのかよくわからなくなる。

 アルカナ「ゲームキラー」を取った後に起きたこと。もうレベル上げする必要もないから、経験値取得しなくなるかわりに、経験値ジェムが弾丸になるという「ゲームキラー」を取ってみると、こうなった。あまりにも遅延が起きるので、ゲームがクラッシュしてしまうんじゃないかと……。
 原因はわからないけど、最適化不足のところ。

 細かい引っかかりどころはあるが、その引っかかりどころを覆い隠すくらい面白いゲームなのは間違いない。私はすでにすべてのアンロックを解放して、もはや「やることがない」状況まで来たのだけど、いまだに隙間時間ができると「ちょっと遊ぼうか」とこのゲームに手を出してしまう。隙間時間を埋めるのにちょうどいい、やっぱりやってみると中毒的な面白さがある。引っかかりどころはあるはあるけど、やっぱり面白いんだ。これが500円程度で手に入ったわけだから非常にお得。明らかに値段以上。誰に聞かれても「面白いよ」「よくできているよ」とお勧めできる作品。
 ただ、もう少し磨けるな……と遊ぶたびに思ってしまうのだけれど。そういうもどかしさも、このゲームの魅力かも知れない。


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