米津玄師「WOODEN DOLL」 自分嫌いのあなたのことを 愛する僕も嫌いなの?
米津玄師という歌手がいると知ったのは、2014年ごろ、当時中学生だった息子の一言からだった。
息子は学校の同級生にでも教えてもらったんだろう、「アイネクライネがめっちゃいい。誰かが好きで、付き合うことを『別れを育てて歩く』と歌ってるんだ」と興奮気味に語っていた。
当時は聞き慣れない名前のアーティストだったが、息子の言葉が胸にささり、「聞いてみたい」と素直に思った。TSUTAYAに行き、米津にまつわるCDをすべて借りてきた。
まだ、アルバムは「diorama」と「YANKEE」しかなかった。シングル「サンタマリア」「MAD HEAD LOVE」も借りたと記憶している。
「diorama」「YANKEE」は衝撃的だった。
特に、息子の薦めるアイネクライネの良さは想像以上で、完全に歌詞に魅せられた。
こんな歌を作る人のライブを見たいとの衝動に駆られ、2015年4月に広島で開かれたツアーライブ「花ゆり落ちる」のチケットを確保して参戦した。当時は若い子ばかりで、おじさんは浮き気味だったけど、どうしても米津さんの生歌を聴きたかった。
そのスタンディングのライブは「ドーナツホール」「パンダヒーロー」が1、2曲目で、会場は一気にヒートアップ。まだ、新型コロナもないころだったから、相当な熱気に包まれていた。「恋と病熱」「vivi」「トイパトリオット」「ゴーゴー幽霊船」「花に嵐」って、このラインナップすごくない?
当時は、「パンダヒーロー」って、なんやの?知らんなあ。アルバムに入ってないよなあ、と思っていた。
その後、米津さんはボカロ出身で「ハチ」という名前で、楽曲制作をしていて、その後、自らも歌うようになったとと知る。(ライブから帰ってきた後に「ハチ」アルバムもそろえて、聞くという一般の米津さんファンとは順序が逆になったおじさん行動をしてしまった)
前置きが長くてすみません。
そのライブのアンコールで流れたのが、「WOODEN DOLL」だった。予習も一部していたので、若干、歌詞も把握していたけど、衝撃を受けた。
「ああ、恐ろしいことばっかだ 楽しむことさえもそう もう、後になって思い出に ぶん殴られるのが嫌なんだ」
よく、分かるなあ!誰かとの楽しい時間って、その人を失った途端にトラウマというか、悪夢というか、そんなものに変わってしまうよね。それをこんな風に表現できる人って、何者?すごすぎる・・・と。
「この曲は誰が、誰のために歌っているんだろう?」と思うけど、米津さんが米津さんの中にいるもう1人の「動けない自分」に歌っているのかしら?
もしかして
「私のために、歌ってくれているのか?」と思うほど、刺さるのよ。とてつもなく、優しくて、厳しいフレーズが並ぶこの曲が。
「誰彼彼も見下しては 見下される恐ろしさに苛まれて動けずに」
で、米津さんはまもなく「Bremen」をリリースし、その後「Lemon」で、瞬く間に日本中の誰もが知るアーティストにのし上がっていった。
でも、「YANKEE」を初めて聴いたときほどの衝撃は、その後のアルバムでは、受けないなあ。なんだか、最近のアルバムに近づくほど、だんだん「洗練されて、きれいになっていく」とか「闇が晴れていく」イメージ。
分かる?
2022年5月23日 トラジロウ
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