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介護の手前

実家でひとり暮らしの父


実家でひとり暮らしの父、最近以前にも増して物忘れが激しくなってきた。
今年87歳。
身体は丈夫で、通うのは歯科医ぐらい。
車の運転もしている。


車を手放したがらない



家族としてはやはり高齢者の運転は心配で、できたら免許返納をして欲しい。
一度、免許を返納して車を手放すことを考えて欲しいとお願いした。
実家のある場所は山の中で、車が無いと買い物にも行けない場所なので、父が車を手放したがらないのも分かる。
生協の配達で日用品や食品は週に1回届くから、それ以外に娘の私が週に1回実家へ行き、一緒に買い物へ行くという提案をしたけど、今までのように欲しいものがある時にサッと買い物に行く生活を続けたいらしい。
車を手放すのを嫌がる。

車の運転も心配だけど、認知症の不安もある。
本人は、わしはまだしっかりしてるし、1人で大丈夫と豪語する。
娘としてはこの先どうなるのか不安でしょうがない。
実家のある市の包括支援センターへ相談をしてみた。
父が車を手放した場合、何か生活支援的なサービスなんかは受けられないのか?
市としては何もできないとのことだった。
実家の前はバスも通ってないし、タクシーを利用するしかない。
民間のサービスで、スーパーの移動販売をやっている事業者と、ちょっとしたお手伝いを時間制で提供してくれる業者を教えてはもらったけど、父に話しても利用する気はない感じだった。

娘の私の葛藤

私の週1の訪問を週2にする?
これって、時給も出ないんだよな…。
ただでさえ、パートを辞めてしまって経済的余裕が無いのに。
往復2時間の移動と、実家での家事労働(掃除、料理、父の話し相手)は別に苦では無いし、自分がやりたくてやっているのだけど、他の兄弟は?
4人兄弟で女は私だけで、実家から一番近いところに住んでいて、仕事が無いから時間に融通がきく。
父を放っておくと実家がゴミ屋敷になる恐れがあるから、自分で最低でも週に一回は通って掃除するって決めたんだけど、心の隅にモヤモヤがある。

実家の家族の特徴として、(実家の両親がそうしていたので兄弟も皆そうなってしまったというのは納得できるんだけど)面倒な事は後回しにする癖がある。
後回しにして、後に片付けるのかというとそうでもなく、放ったらかしにする。
その結果、実家は物があふれかえっている。
正確に言えば、かつては物だったけど、今はゴミでしかないモノたち。
でも、父にとっては、どれも思い出の詰まった貴重な財産らしいので、むやみに片付けられない。
明らかにゴミなものだけを行く度に片付けるのだけど、モノは一向に減っていかない。

他の男兄弟達はそんなことも気にしてないのだろうな。

多分、父がいつか亡くなったとして、諸々の手続きは私がやることになるんだろう。
それ以前に、父が認知症になったり、介護が必要になった時にはやっぱり私が面倒を見ることになるんだろう。
だったら、事前に何か手を打っておきたくて、成年後見人制度の事なんかも調べてみた。
とても資産があるのならともかく、費用がかかりすぎるしなんか違う。
生前贈与?
兄弟で実家を相続したい人がいるのかとか、父が亡くなった後の財産分与についても話し合ったことが無い。
そもそも、この数年はお正月に数時間顔を合わせるだけで、特に私は台所仕事なんかをすることが多くて、兄弟とはゆっくり話すことも無い。
それに、父のいるところでそんな話もしづらい。

家族信託

先日、久しぶりに本屋をぶらぶらしていて、『日本一シンプルな相続対策』(牧口晴一著 ワニブックス)という一冊が目に入った。

本の帯には「認知症になると相続対策ができなくなる!」と気になる一文。
早速購入、『家族信託』という制度があることを始めて知った。
父の財産の一部を家族の誰かが管理する事を法的に認める。
例えば父が認知症になって資産を凍結されても、家族信託分の父の資産からその時必要な介護費用を工面できる。
この制度なら私の不安を軽くしてくれる!今すぐにでもやっておきたい!
ネットでも家族信託について調べ、兄弟にこういう制度があるから手続きしておきたいことを伝えた。
父にも話すと、すぐに承諾してくれた。

『日本一シンプルな相続対策』内では、公証人役場へ行って契約書を作るところから行政書士さんを通さず自分で手続きできる方法が記載されている。
実家の場合、実家以外の資産があるわけでも無く単純なので、この本のとおりに進めていけば私でもできそうだ。
とりあえず今できることとして早急に手続きを進めておきたい。
父のボケ具合がいつ進行するかもわからない。
認知症と判断されたらこの制度は利用できないのだから。

でも、不安はある。
『家族信託』という制度は平成20年に解禁され、令和3年にやっと新聞記事で紹介されたらしい。
世の中に充分知れ渡っていない。
家族信託普及協会のホームページで 同協会の研修を修了した行政書士さんの名簿が公開されているので調べてみたけど、実家のある地域にも、私の住む地域にも該当する書士さんはいなかった。

専門家に依頼するとお金がかかるから、自分でやるか、お金を払ってサッと手続きするか…、悩みながらもとりあえず実家の管轄の公証人役場へ電話してみた。
電話口の年配と思われる職員さんに、家族信託の事で…と伝えると、「行政書士さんを通さずにってことですか?それはちょっと…。」と、明らかに対応を渋られた。

案の定というか、うん。
公証人役場はお役所ですから。
面倒な事をやりたがらない性質なことはよく解っています。
正しく父がそういう公務員でしたから。

私はそんなところへ出向いてごり押しするバイタリティのようなものは持ち合わせていない。
さっさと方向転換して、サッとお仕事してくれる行政書士さんを探そうと思う。



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