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【翻訳部アンケート】教えて!CATツール

こんにちは。プロジェクトマネージャーの小沢です。翻訳業界以外の方がCATと聞いて頭に思い描くのは、ですよね。私もその一人でした。いっぽう、翻訳業界の人たちが大文字でCATというワードを見たら、CAT(Computer Assisted Translation)ツール、つまり翻訳支援ツールを連想するのではないかと思います。

CATツールは、noteの中でも何度か登場しましたが、実際どのようなツールを使っていて、それぞれどのような利点や欠点があるのかを、トップスタジオの翻訳者、レビューアーたちにアンケートを取ってみました。

前にCATツールについて詳しく書いた記事はこちら。

今回の質問内容はこちらの4つです。

1.  よく使うCATツールはなんですか?
2.  そのツールのいい点を教えてください。
3.  そのツールの不便な点を教えてください。
4.  3で不便な点と答えた点をカバーするコツなどがあれば教えてください。

※今回はトップスタジオの翻訳者とレビューアーに聞いたので、もしかしたら3.の不便な点をカバーしうる機能があるのかもしれません。ですので、あくまでご参考までにご覧ください。

それでは見てみましょう。

よく使うCATツールはなんですか?

全員が使っていると答えたのがTradosとmemoQ。Phrase(旧Memsource)やクライアント独自のCATツールという答えもありました。

そのツールのいい点を教えてください

まずはCATツールといえばよく名前を聞くTradosから。

・ローカル環境で使える。
・ショートカットキーが充実&カスタマイズ可能。
・Xbenchと連携が簡単。
・エディタが高機能。個人的には、セグメント内で自由に改行できる点が大きい。TMからGetしてきた訳文を編集したかどうか一目瞭然なのもありがたい。
・ウィンドウ配置の自由度が高い。

私自身はTradosで翻訳作業をしたことはないですが、上の利点を見ると使い勝手がよさそうですね。

次はmemoQ。

・比較的安価
・ローカル環境で使える
・Xbenchと連携できる
・ショートカットキーが充実&カスタマイズ可能
・プレビュー機能が比較的優秀
・エディタ内で、マッチ率やステータス別のソートができるのは便利\\
クラウド運用の場合、TMを参照する際に常に最新の内容を参考にでき、安心感がある

「比較的安価」とありますが、Tradosとの値段を比較しようと思って調べてみたら、Tradosのフリーランサー版のパッケージの価格が¥100,000なのに対して、memoQはUSD770とのこと。この記事を書いている日(2022/10/14)の為替\147.40で換算をしてみたら、なんと\113,494でした。為替によって値段が大きく異なりますので、購入を検討される際は慎重に。弊社が扱う案件の場合、memoQのライセンスはクライアントから無償貸与されるケースが多いです。

最後にPhrase(旧Memsource)。

フリーランサー版は安価

という声がありましたが、調べてみたらMemsource(ツールではなく企業名)はPhraseという会社を2021年に買収し、ツール名を「Phrase」に変更していたようです。そして料金体系も変わったようで、一番安いプランで$29/月でした。1年で約50,000円なのでお高いですね。弊社が扱う案件では、memoQと同様に、クライアントからライセンスが無償貸与されるパターンが多かったので、個人の翻訳者が購入を検討する機会は少ないと思います。

では次の質問にうつりましょう。

そのツールの不便な点を教えてください

まずはTradosから。

・フリーランサー版でも高価。
・プレビューがうまく機能しないことが多い。

Tradosは機能面では評価が高いですが、先に書いたように値段も高いですね。Tradosを使用しない案件もあるので、翻訳の仕事をどんどん受けたいからといって、すぐにTradosを買う必要はありません。トップスタジオの場合は、トライアルの結果がよかった方でTradosを持っていない翻訳者さんには、まずは30日間無料で使えるトライアル版で操作に慣れる、ということをお勧めしています。

慣れたうえで、実際に受注する案件がTrados指定の場合は、購入に進めばよいと思います。

memoQはどうでしょう。

・エディタ機能はTradosに劣る。
・ウィンドウ配置の自由度が低い。
・クラウド運用の場合、サーバーのチェックアウトやファイルのエクスポートに時間がかかる場合がある。しかもそれらにかかる時間があまり読めない。

memoQはTradosと比較すると若干不便な点があるのですね。

最後にPhrase(旧Memsource)

・基本的にブラウザー環境で作業することになるため、操作性が低い
・Xbenchとの連携が面倒

QAチェックツールであるXbenchとの連携が面倒というのは、TradosとmemoQとの大きな違いですね。Xbenchはすべてのミスを拾ってくれるわけではありませんが、それでもやっておいてよかった、というミスを発見することもありますので、簡単に連携ができないのは残念なポイントです。

Xbenchを使用することのメリットや、活用方法について書いている記事はこちら。

すべてのツールに共通しているデメリットについてのコメントもありました。

・参照すべきTMがサーバー上に置かれている場合、
(1)サーバー性能や通信環境によっては応答に時間がかかり、ストレスがたまる。
(2) 複数の翻訳者が並行して訳文を登録することになるため、TMの管理が混沌としがち。
・クラウド系のCATツールは総じて操作性が低いため、管理する側にはメリットがあっても、翻訳者にとっては作業効率が落ちることが多い

では、最後の質問にうつりましょう。

3で不便な点と答えた点をカバーするコツなどがあれば教えてください。

・基本的には、翻訳者側の工夫でなんとかできる点はほとんどない。我慢して使うしかない。
・その分(memoQのチェックアウトに時間がかかるというデメリット)の時間も想定し、できるだけ余裕を持って作業時間を確保する。特にチェックアウトについては、作業をすぐに始めない場合でも、作業ファイルが手元に届いた時点ですぐに済ませておく。

まさかの!コツの伝授がない…そのデメリットを理解して慣れていくしかないのですね。memoQの、プロジェクトのチェックアウトに時間を要するというデメリットについての対処法は納得のアドバイスです。トップスタジオの翻訳者さんたちも、すぐに翻訳に取り掛からないときでも、ハンドオフ後すぐにチェックアウトをしてファイルを確認しています。

Tradosのプレビューがうまく機能しない点については、「モニターを2つ並べ、1つにTrados、もう1つに原文ファイルを表示することで乗り切れなくはない」という代替策を挙げてくれた人もいました。ただ、複雑なレイアウトの場合はカバーしきれないとのことでした。

まとめ

今回ご紹介したツールは主要なものたちだと思いますが、翻訳の作業にはこのほかにもたくさんのCATツールが使われています。それぞれ一長一短の特徴があるので、知らないツールの仕事だから引き受けたくない、と毛嫌いをせずに、まずは使ってみることをお勧めします。そしてとにかく慣れていってみてください。


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