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【翻訳部アンケート】翻訳のここが大変&おもしろい

こんにちは。プロジェクトマネージャーの小沢です。私自身は翻訳者として活動した経験がなく、具体的な翻訳の苦労やおもしろさを直接知らないため、今回はこの点について、社内の翻訳者数名に聞いてみました。普段、あらたまって聞くことがないので貴重な機会となりました。

今回の質問はシンプルに2つです。

・翻訳のここがおもしろいと思うところを教えてください。
・翻訳のここが大変と思うところを教えてください。

さっそく見てみましょう!本文中の引用枠内、太字部分が回答です。

翻訳のここがおもしろいと思うところを教えてください。

・仕事を通じて、これまで接点がなかった分野のことを学べる(雑学、教養が増える)
日本にまだない技術や概念を知るといった発見がある。

確かに、トップスタジオで受けてきた(いる)仕事は、このnoteの最初の記事「トップスタジオの翻訳部の歴史を振り返る」にも書かれているように、IT書籍の翻訳やソフトウェアのローカライズから、クラウド系、CRM(顧客管理システム)の読み物コンテンツまで、非常に多岐にわたります。受注した仕事の内容が必ずしも自分が詳しいこと、興味があることとは限りません。必要に応じてその分野のことを調べ、勉強することもあるので、自ずと知識が増えていくのでしょうね。もちろん、学ぶ姿勢があるかどうかが重要なポイントです。

海外発信の技術や概念に触れられるというのも確かです。私が印象に残っている案件では、リーダーシップ論や、リモートワーク時のコミュニケーション、チャリティーに関する記事などがあり、日本の企業にはあまり浸透していないけれども、徐々に広まっていくといいな、という内容が書かれていました。

文法や単語の知識、当該分野の知識、文脈理解、山勘などを駆使して文意を読み解き、訳文にまとめることに、パズルを解くような楽しさがある。

「パズルを解くような楽しさ」を感じることができるなんて、ステキ!と思いますが、そこの境地に至るには、その前にさらりと書いてありますが、文法や単語の知識、当該分野の知識、文脈理解するための莫大な努力があってのことなのだろう、と思います。これに似た回答で、自分の訳を校正する過程で、文がどんどん洗練されていく実感がわくのが楽しい。という声もありました。翻訳の仕事を楽しんでいる様子が伝わってきますね。こちらも表現の引き出しがたくさんあることが前提かと思います。

とにかく新しい発見が多いこと。知らない表現や単語、あるいは知っている単語でも全く別の意味や用法があることに気づくこと。

これまで弊社のnoteで公開してきた【翻訳のヒント】シリーズでも、翻訳祭や翻訳者が開催しているセミナーなどでも、辞書でよくよく調べることの大切さが語られていますが、どんなにすごいキャリアのある翻訳者でも、まだまだ新しい発見があるのですね。ここ最近はネットの簡易辞書に頼りがちかと思いますが、やはり辞書の情報量には劣ります。社内の翻訳者が翻訳時に使用している辞書に関するアンケートも実施したので、後日記事をアップします。

次に、2つ目の質問の答えを見ていきましょう。

翻訳のここが大変と思うところを教えてください

産業翻訳に関して言えば、自分が必ずしも詳しくない分野の話を、さもエキスパートであるかのような顔で訳さなければいけないところ。自分にとって全くなじみのない内容にしばしば出くわすこと。

この意見は複数の翻訳者から出ていました。トップスタジオはIT分野の翻訳を専門としていますが、ITは今やどの業種でも活用されているので、金融や医療などの込み入った内容が原文に出てくることが多々あります。「専門外なのでわかりません」というわけにはもちろんいかないので、インターネット上で情報を探したり辞書で調べたりして何とか理解して訳すというのが大変で、ときにはその分野の入門書を買って読むこともあるそうです。

翻訳の面白さについての回答の中にはそのおかげで知識が増える、ということが書かれていましたが、面白さと大変さは表裏一体ということですね。

言葉を機械的に移し替えればよいとは限らないところ。たとえば英語と日本語では言語の仕組みが大きく異なり、原文を十分に理解できたとしてもそれに対応する日本語を組み立てるのが難しいことも多いので、読む人にうまく伝わるようにするにはどうすればよいのか、さまざまな角度から検討する必要がある。

こちらも複数の翻訳者から声があがっていました。みなさんも普段の生活の中で、知らず知らずのうちに翻訳された文章を目にし、翻訳本を読んでいるかと思います。たとえば身近な例でいうと、海外のスマートフォンメーカーのサイトやマニュアル、DM、企業のホームページなどもそうですね。

英語だと接続詞、関係詞、分詞構文などでダラダラと文が続き、ものすごく長い一文になることがありますが、翻訳者はそれを日本語の型にはめなおし、原文の意味を損なわないように区切るなどしているのです。逆に英語だと一語でしか書かれていないものを、文脈や目的によって日本語で丁寧に言い換えたりしていたりと、さまざまなトリックを駆使しています。

すごく単純な例で言えば、プレゼンテーション資料の最後に“Thank you”と書かれている場合は「ご清聴ありがとうございました」とし、研修資料の中に書かれている場合は「おつかれさまでした」とするなどです。はじめてそれに気が付いた時は「なるほどー」と唸りました。

翻訳のお仕事とは

日本語に訳されているものを読んでいるだけだと、上述のような苦労が背景にあるとは、あまり想像できないですよね。「翻訳の仕事」と聞くと、すごくかっこいい響きに聞こえますが、今回翻訳者の声を聴いてみて、実際はクライアントや読み手のことを考えながら、非常に地味で地道、孤独な闘いをしているということ、でもそれと同時に自己の成長につながったり、文章を磨いていく面白さもあるということがわかりました。

どうでしょう。みなさんにとっては想定内の結果だったでしょうか。同業者の方たちにとっては「あるある」の話でしたでしょうね。最後までお読みいただきありがとうございました。

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